VIRGIN HARLEY | パインバレーがインジェクションチューニングで追い求めるハーレーの乗り味 特集記事&最新情報

取材協力・写真提供/パインバレー 取材・文/田中 宏亮 構成/VIRGIN HARLEY.com編集部 掲載日/2015年4月8日

ハーレー用カスタムパーツの通販からはじまった横浜・本牧のパインバレー。インジェクションチューニング業務を取り入れて早一年、その間に約500台ものハーレーダビッドソンのチューニングを行なってきた。最新のシャシーダイナモと設備、豊富なノウハウを持つチューナー、そしてパフォーマンス向上のためのアップデート作業など、インジェクション仕様モデルの乗り味を高めるために日々精進しているという。現代のハーレーオーナーが知っておくべきチューニングのあり方について、同店のトップチューナーに話を伺った。

INTERVIEW

愛車と長く付き合っていく秘訣は
オートバイを健康にしてあげること

2013年12月、パインバレーは日本初となるアメリカ製シャシーダイナモ専用のダイノルームを導入。以降、この一年間で約500台ものハーレーのセッティングを請け負い、データの蓄積とともに日々アップデートをはかってきた。パインバレーが居を構える横浜・本牧には、関東近郊のみならず、遠方からもはるばるセッティングの依頼に来るハーレーオーナーがいるという。

 

そんなパインバレーで、インジェクションチューニング業務の主任を務めるのがチューナーの鈴木渉さんだ。高校生の頃からバイクいじりが好きで、ハーレーの正規ディーラーやハーレーのエンジンを積むモデルの販売店でメカニックとして腕を磨き、パインバレーの門を叩いた。そして同社がインジェクションチューニング業務を取り扱うようになった際、メインチューナーに抜擢された。

 

アメリカで修行した経験豊富なトップチューナーであるダイノマン野口商会(大阪・大東市)のテクニカルマネージャー 坂口 真一さんのもとで研修を受け、そこから実戦経験を積みながらスキルアップを図る毎日。しかしながら、決して嫌気などささず、むしろ新しい発見の多さに喜びを見出していた。

 

「確かにコンピュータによるベースマップの書き換えをするだけで、ハーレーの乗り味はそれなりに良くなります。しかし、それが本当の意味でのベストパフォーマンスかと言われれば、そうではありません。人間と同じようにハーレーにも個体差がありますので、より良い状態に仕上げてやるには人間、つまりプロのチューナーによる診断とベストセッティングが必要なのです。数字を書き換えるだけでは出せないライドフィールを引き出すのが、僕らの仕事なんです」


そう語る鈴木さんが、チューナーとして務めてきたこの一年のあいだでターニングポイントと語る出来事があった。それが、米ハーレーダビッドソン正規ディーラー『レッドロック・ハーレーダビッドソン』(ラスベガス)の専属メカニックにして、『チューナーズネイション』の代表を務めるヒロ小磯さんとの出会いだ。チューナーズネイションとは、ヒロ小磯さんを発起人とするプロのチューナーグループのことで、パインバレーやダイノマン野口商会など日本に点在するプロのチューナーがそこに名を連ねている。

 

米ボンネビルソルトフラッツで開催されるスピードトライアルレースに毎年参加し、“世界最速のハーレー”を手がけるスペシャリストとして名を轟かせるヒロ小磯さん。彼が提唱する“最高のインジェクションチューニング理論”でも、やはり知識と経験を積んだチューナーとシャシーダイナモが不可欠だと言う。

 

「シャシーダイナモで測定した数値を元に、車両の特性を分析し、知識と技術でチューニングしていくことこそベストな方法です。シャシーダイナモを使用せずに、コピーだけのチューニングやマップをダウンロードするだけでは精度の高いチューニングは不可能ですし、100パーセントの効果は得られないでしょう。愛車のパフォーマンスを最大限に引き出したいのなら、知識と技術のあるショップ選びは重要になります」

 

そんなヒロ小磯さんの研修を受けた鈴木さんは「まるで霧が晴れるようだった」と、そのときの感想を語る。

 

「それまでモヤっとしていたものが、その研修を受けただけで鮮明になったんです。それからの業務では、常に手応えを感じるようになりました」

 

ベースマップを書き換えると、当然トルクやライドフィールは変化する。チューニング業務をはじめた頃は手探りだった感が否めないが、明確な理論を得て狙いどおりのパフォーマンスを生む術を身につけた。それにより、取り組む内容にも幅が生まれてきた。だからこそ、しっかりとした設備と経験豊富なチューナーによる診断が重要なのだと熱く語る。

 

例えば、走行中にエンジンブレーキをかけたときに起こるアフターファイヤー。コンピュータだけでセッティングするとこうした小さな不具合が残り、消えないまま乗り続けると結果的にエンジンへのダメージとして蓄積されていく。しかしプロのチューナーが診断すればすぐさま原因の所在を突き止め、ただちに改善することができる。それが、結果的に愛車との長い付き合いへとつながっていくのだ。

 

訪れるハーレーオーナーが喜んでくれることが嬉しくてたまらないという鈴木さん、そんな彼に、「ハーレーのインジェクションチューニング最大の目的とは?」という質問を投げたところ、こんな答えが返ってきた。

 

「オートバイを健康にしてあげることです。せっかくハーレーダビッドソンに乗っているのですから、オートバイそのものを最高の状態にすることが大切だと思いますし、そうすればもっとハーレーに乗ることが楽しくなります。一年前の戸惑い? もうすっかり払拭されました(笑)」

 

競走馬にとっての調教師やプロスポーツ選手にとっての専属トレーナーのように、ハーレーをより良い状態に仕上げていくにはチューナーという存在が不可欠。彼らの豊富な知識と経験から生み出されるセッティングを取り入れれば、きっと今までにないハーレーらしいライドフィールを手に入れられることだろう。

鈴木 渉 氏 Wataru SUZUKI
1974年生まれ/新潟県出身。神奈川のハーレー正規ディーラーやハーレーのエンジンを備える車両販売店でメカニックとしてのキャリアを積んだ後、2011年パインバレーに加入。現在はインジェクションチューニング業務のメインチューナーとして忙しい毎日を送る。愛車はスズキ GSX-R750。

一年間で約500台のハーレーをチューニングしてきた鈴木さん。あらゆるデータがパインバレーのコンピュータ内に蓄積されているが、それ以上の知識と経験が彼のなかにも詰め込まれてきた。

『チューナーズネイション』代表のヒロ小磯さんによる研修を受け、チューニングに対する明確な指針を手に入れられた。

ボンネビルソルトフラッツでのスピードトライアルに挑戦するヒロ小磯さん。最高のパフォーマンスで最高の結果を得て、それをハーレーオーナーにフィードバックする。Facebookの『チューナーズネイション』にて情報交換を行ない、内容を共有することでそれぞれの知識と経験のアップデートを図っている。

経験値が高まるにつれて、以前にも増して細かなところに気づくようになったと語る鈴木さん。「なにより、お客様には最高のハーレーに乗っていただきたいですから」。

「チューナーとして貴重な経験を積んだ一年を経たからこそ、僕らの仕事の重要性を噛み締めています。コンピュータでは出せない味わいを引き出せる自負があるんです」鈴木さんの声には自信がみなぎる。

INJECTION TUNING

数値でも証明された
明確な違いに目を見張る

今回、2014年式 FXSB ブレイクアウトをベースに、フルノーマルの状態(青ライン)、 マフラーとエアクリーナーをカスタム/コンピュータでのベースマップ書き換え(赤ライン)、同カスタム/チューナーによるシャシーダイナモチューニング(緑ライン)という3パターンでの計測を行なった。結果は下の図のとおりで、トルク/パワーともにチューナーの手が入ったものが高い数値を示した。とりわけ目を見張るのが低速域のトルクの変化。ノーマルは2000回転位にいわゆる”トルクの谷”と呼ばれる大きな落ち込みがある(青ライン)。ベースマップへ書き換える事により若干の改善はされるが、やはりまだ細かな凸凹が残ってしまっている(赤ライン)。チューナーによるシャーシダイナモチューニングを行う事により全域で滑らかな曲線となり、これによりギクシャク感の無いスムーズな乗り心地が得られる(緑ライン)。この小さくない差が、その後のハーレーライフを決定づけると言っても過言ではない。

SHOP INFORMATION

横浜の中心街からスグ!
アクセスの良い好立地

  • シャシーダイナモ『Dynojet Model 250i』を完備。約500台というハーレーをセッティングしたデータがコンピュータに蓄積されており、それらが訪れるハーレーにフィードバックされている。

  • 米ダイノジェット社製 シャシーダイナモ専用ルームを日本ではじめて導入。防音性に優れているので、ハーレーが持つ最大の力を発揮させつつ、ベストパフォーマンスを引き出すことができる。

  • カスタムマフラーや人気ブランドのエアクリーナーをはじめ、さまざまなハーレー用カスタムパーツも取り扱う。すべてセットでオーダーすれば、愛車を最高の状態に仕上げてくれるに違いない。

  • パインバレーでは、ただいまアメリカで高い人気を誇る『BELL』ヘルメットも多数撮り扱っている。目的はチューニングなれど、パインバレーに行けばアメリカを極めることができるかも?

パインバレー

首都高速湾岸線・本牧ふ頭インターからバイクで約5分、横浜赤レンガ倉庫やランドマークタワーからもバイクで約15分と、立地の良さも魅力のひとつであるパインバレーの拠点・本牧。戦後、米軍の住宅エリアとして栄えた歴史を持つことから、ムーンアイズをはじめ、アメリカの薫り漂う地域としても有名。ハーレー乗りにはたまらない雰囲気が漂っている。

住所/神奈川県横浜市中区本牧原12-1 ベイタウン本牧5番街 1階
電話/0120-918-469
FAX/045-305-4006
営業/11:00~19:00
定休/無休
URL/http://yokohama-pinevalley.com/

パインバレーがハーレーを面白くする