100年以上前に発明された内燃機関、いわゆるエンジンには未来があるのか。現代は急速に新たなる動力の模索が行われていて、もうエンジンは過去のものになりつつある。キャブかインジェクションか、などと言っているのも今のうちかも知れないのだ。ならば、現在のエンジンも過去のエンジンも、最新のテクノロジーで楽しむべきというのがシャフト代表、栗原和也氏の発想である。
1990年代に栗原工房という名のカスタムショップを立ち上げ、2005年からSHAFTに改名。その後、シャーシーダイナモの導入で本格的なインジェクションチューニングを実施し、今や月間40台ものハーレーをリセッティングしている。チューニングアイテムは様々なソフトを試しているが、最近は、コンピューターそのものを交換してしまう、いわゆるフルコンタイプよりも、ノーマルコンピューター内のマッピング変更を行うソフトが主流になってきたという。今回は、社長の栗原さんにチューニングの未来を語っていただいた。
──シャフトは、インジェクションチューニングの先駆け的存在だと思いますが、現在の状況をどのように感じていますか?
栗原:だんだんとインジェクションチューニングを実施するショップも増えてきたけど、ユーザーってどうなのかな。その効果は浸透してきているのだろうか。みんなが楽しんでいるかどうかが一番大切だよね。
──楽しみ方の選択ということですか?
栗原:そうそう、だって何に乗るかはユーザー次第じゃない。最新型のハーレーなのか、中古車なのか。ビンテージが大好きって人もたくさんいるでしょ。僕は自分を含めてみんなの楽しみをずっと持続させたいんだよ。チューニングという分野でね。だって、そのうち内燃機関なんて消えてしまうかも知れないじゃない。クルマのハイブリッドなんて、進化の過渡期の産物さ。そう思わない?
──具体的にはどんなことを考えているのでしょう。
栗原:カスタムの魅力って、唯我独尊なわけですよ。でも公道走行が前提ならお咎めのないものを作らないとならない。だから僕はパワーやトルク、エンジンの性格までも数字で把握できるダイノマシーンという道具を使ってインジェクションのチューニングをする。同じ機械を使用しても、オペレーターによって結果は違ってきます。
──画一的なセッティングではないということですね。
栗原:そうですね。それぞれのハーレーがまったく同じセッティングデータで良いはずがないでしょ。エンジンだけでなく、マフラーもエアークリーナーも、走らせる環境やオーナーの走り方まで全部違うんだから。つまり、古い内燃機関最後の悪あがきみたいなもんですよ。
──それで、昔のアイアンスポーツにインジェクションという方法まで試みるわけですね。
栗原:だって、古いモデルは、何から何まで古いままじゃ、そのうち走らせることすらできなくなって、博物館行きになってしまいます。でもハイテク武装すれば延命できるかもしれないでしょ。そこが楽しいじゃないですか。古くても、ただじゃ死なないぞってね。
──インジェクションチューニングだけでなく、様々なアイテムも提案していますね。
栗原:スーパーチャージャーや、ボアアップ。カムシャフトの交換。デジタルだけでなくアナログでも個性的なエンジンを製作するのはもちろん楽しいことですよ。その両方から攻めていけば、同じエンジンでも様々なセッティングに変更することだってできるようになる。そのうちスマホで楽々セッティングなんて時代がきますよ。まぁ内燃機関じゃない時代なのかもしれないけどね。でも今だって、ユーザーも勉強すればかなり自分の手元でできるアイテムは販売されています。だから、僕らのようなチューナーとユーザーが互いに楽しいことを考えていれば、まだまだエンジンの可能性だって、捨てたものじゃないのかもしれないですよ。
──ユーザー参加ということは、手軽にチューニングということが前提ですよね。
栗原:だから僕はFUEL MOTOのディストリビューターになった。自分のエンジンを分解して改造するのではなくて、出来上がっているシリンダーやヘッドを購入してポン付けできる。ピストンやカムシャフトなども、優秀なパーツが手軽に組み込めます。アナログベースをスープアップさせて、インジェクションもチューニングするとやっぱり個性的なエンジンができますからね。これはおいしいレストランに行って、メニューを見ながら組み合わせを決めるような感じですよ。楽しいでしょ。
SHAFTが考えるチューニングとは、画一的なものではない。様々なメニューを用意して、ユーザーのハーレーライフをサポートしているのである。それは、底知れぬ遊び心に満ち溢れていて、エンジンへの深い愛情を感じるものでもあるのだ。
ターボチャージャーよりもタイムラグが少なく効率よくパワーを増大できるのがプロチャージャーの魅力だ。インジェクションのチューニングとセットで調整すると、キャブ時代では実現しにくかった細かいセッティングが可能となり、スムーズで爆発的なパワーを抽出できるようになった。
ベース車両はロードグライドのCVOである。ノーマルでもパワフルだが、それだけにさらなる可能性を秘めているとも判断できるから、オーナーは果敢にチャレンジしたのだ。
これは栗原社長の愛車。各部が実験的な要素で製作されているスペシャルマシンで、なんと後輪計測値が145PSだという。ピンゲル製の電動クイックシフターも装着して、軽快なフットワークを手に入れているのだ。
カラーリングは、ダークな基調にパープルをあしらったシックなもの。ロードグライドには珍しいスポークホイール(フロント21・リヤ18インチ)を採用して、独自の味わいを感じさせてくれる1台である。シンプルなシルエットは、ハイパワーなイメージを隠しているが、最高のパフォーマンスマシンなのだ。
1970年代に活躍したダートトラックレーサーKR750をベースに、製作されたワークスロードレーサー。それがKRTTだが、このレプリカは、ベースがショベルスポーツスターのXLH1000である。それだけならさほど驚くこともないのだが、なんと吸気システムはキャブではなく、インジェクション。スポーツスターのノーマルベースでマッピングを書き換えたスペシャルなのだ。
外装は栗原さんが元々持っていた物をリペイントした。なんとこのスタイルで公道走行可能。登録できる内容になっている。旧車にもインジェクションというスタイルを、具現化したマシンなのである。
シャーシーダイナモは常にフル稼働。毎月40台ものハーレーをチューニングしているこのショップには、栗原さんの趣味を反映する様々な乗り物が置かれている。それはハーレーだけではなく、国産バイク、アメ車の古いピックアップ。四駆。スクールバスまで所有しているのだ。旧式のシステムと言いながら、栗原さんはエンジンが大好きなのだ。
SHAFT
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