VIRGIN HARLEY |  排気量とブレーキまつもと流ショベルヘッド入門

排気量とブレーキ

  • 掲載日/ 2007年10月17日【まつもと流ショベルヘッド入門】
  • 執筆/ハーレー屋まつもと 松本 雄二
まつもと流 ショベル入門コラムの画像

まつもと流 ショベル入門コラム 第2回

1200cc→1340ccへ
排気量が上がったワケ

こんにちは、ハーレー屋まつもとの松本です。前回はショベルヘッド(以下、ショベル)の魅力や中古車選びについて紹介しましたが、今回は排気量の違いとブレーキについてお話ししましょう。当初1200ccだったショベルが、1340ccに排気量を大きくしたのは1978年のことでした。排気量が大きくなったのを喜ぶお客さんは多かったですが、なぜ排気量が上がったのか、いろんな噂話がありましたね。ショベルの排気量が大きくなった翌年、Kasawakiから「KZ1300」という当時は珍しいインジェクションを採用した水冷6気筒モデルが発売されました。ハーレーはこのモデルの発売情報を聞きつけ、世界最大排気量の座を守るためにショベルの排気量を1340ccにした、そんな話があったんです。この話、信憑性はあまりありませんけれど…。というのも、ただのボアアップなら開発も簡単でしょうけれど、1200ccから1340ccへの排気量アップはボアもストロークも変更する手のかかる仕様変更。シリンダーもクランクも新設計のモノを採用していますから、おそらくそれなりの開発期間をかけたはずです。KZ1300の発売時期に近かったのは偶然でしょう。でも、よくできた噂話なので、お客さんにはこの与太話をさも本当のように話して遊んでいます(笑)。

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1340ccになる前、日本では「もっと排気量を上げてくれ」という声はあまり聞きませんでした。しかしアメリカでは1200ccモデルをボアアップするユーザーは多かったようです。ただ、1200ccモデルをボアを広げるだけで1340ccにすると、シリンダーの壁が薄く、耐久性が弱くなりトラブルの原因になっていました。それでも排気量アップを求めるお客さんは多い。そんな声が、ディーラーからメーカーに届けられたのでしょう。1978年に1340ccになったわけです。でも、いきなり全モデルが1340ccになったわけではありません。徐々に1340ccに移り変わっていったのです。同じFLHなのに1200ccと1340ccが併売されていたこともありましたし、日本にも両方の排気量が入ってきたと記憶しています。

本当の排気量は?
エンジンを開けないとわからない

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排気量が大きくなったとは言え、当時のお客さんはあまり大騒ぎしていませんでした。排気量が変わったから乗り換える、そんな人はほとんどいなかったような…。これから買う人は1340ccを選んでいたでしょうが、1200ccでも充分に力強かったですから買い換えるほどじゃなかったんでしょう。今は「1200ccは乗りやすく、1340ccは鼓動感が強い」とよく言われています。言いたいことはわからなくはないですが、ちょっと大げさかな、と。ただ、1200ccと1340ccの違いは乗り比べればすぐにわかります。確かに1340ccの方が力強く、出足もスッと出てくれます。1200はそれに比べるとエンジンの回り方は軽く感じるでしょう。でも、排気量は1200ccもあれば充分にトルクフルですよ。1340ccから1200ccに乗り換えると力の差は感じますが、ずっと1200ccに乗ってきた人はそれに慣れていますからね。私は、これからショベルに乗る人には1340ccモデルをススメますが、単に排気量の問題だけではなく、仕様変更が行われている高年式モデルだから、というのも大きな理由です。

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また、排気量が1200ccか1340ccかなんて今の中古車の世界じゃあまり当てになりません。以前1200ccだとお客さんが言う車両が修理に入ってきて、エンジンを開けてみたら1600ccだったことがありました。他にも1200ccだと思っていたら、シリンダーだけが1340ccモデルで、ピストンが上死点まで上がってきていない車両もありましたね。圧縮が低い状態でもハーレーは走ってしまうのでそんなチグハグな仕様だとは気づかなかったようです。オーナーが知らないだけでエンジンの中にどんなパーツが組み込まれているのか…「それは開けてからのお楽しみ」な車両もあるんです(笑)。アメリカから送られてきた中古車は、エンジンを開けてみないと中がどうなっているのかはわかりません。向こうでは個人で“とりあえずは動く”ようにして乗られていた車両がゴロゴロしていますから。オーナーが1200ccや1340ccを判断しているのは年式で判断しているだけで、実は違う…そんな例は珍しくありません。あとは、圧縮が抜けているなどで本来の排気量の力を発揮していないエンジンも多い。ノーマルの調子がいい状態の1200ccや1340ccを知る人は少ないですから、自分のエンジンがどのくらい調子がいいのか、判断が難しくなっているんでしょう。調子がいい状態を維持してやれば、どちらも気持ちのいいエンジンです。カスタムよりもメンテナンスにお金か時間をかけましょう。

ドラムブレーキは案外効くんです
ディスクになって問題は多かった

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高年式の方が問題点が改善されていて安心。前回も今回もそう話していますが、そうじゃない部分もあるという話を。それはブレーキシステムです。それまで前後ドラムブレーキだったショベルに、1972年からフロントへディスクブレーキが採用されはじめました。でも、それまでのドラムブレーキの効きに問題があったわけではありません。アタリがつくまでは多少手がかかるブレーキでしたが、優秀なブレーキでしたよ。ブレーキシューもなかなか減りませんでしたしね。では、なぜディスクブレーキが採用されたのか…1つはただの“流行”でしょう。今では当たり前のディスクブレーキも、当時は最新の技術でした。「ディスクブレーキ採用!」というだけで話題になった時代だったんです。2つ目には工場での新車組み立ての楽さ、納車後の整備性の良さ、でしょう。効率化が求められたAMF時代ですから、ドラムブレーキより組み立てが簡単なディスクブレーキは効率化の面でもメリットがあったのかも…2つ目は私の予想ですけれど。

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導入された当初のディスクブレーキは、ブレーキを引きずるトラブルが多かったですね。ブレーキキャリパーの構造に問題があったんです。油圧で押したピストンが戻らず、ブレーキを引きずるトラブルを多く診ました。高年式になるとキャリパー内部の構造は変更されましたけれど。採用されはじめたばかりのブレーキシステムでしたから、思ったほど制動力がないというのは仕方がないのかもしれません。まぁ、テストライドをアメリカで行っていたらアレでも充分だったのかもしれませんけれども。1979年にアメリカのヨーク工場を訪れたことがありますが、工場のそばのテストコースは公園の中のサイクリングコースみたいなところでした。コーナーも道路はバンクしてなくて「ここでどうやってテストするの?」と笑ってしまった記憶があります。日本の道路事情が、今以上に伝わってなかったのでしょう。ブレーキに関しては「ディスクブレーキにせず、ドラムブレーキのままでもよかったんじゃないの」なんて、今でもそう思っています。

プロフィール
松本 雄二

58歳。1971年よりハーレーに関わり“超マスターオブテクノロジー”と称されるほど、その技術力の評価は高い。複数のディーラーを経て「ハーレー屋まつもと」をオープンさせ、日々ハーレーの修理にいそしむ。なお不正改造車、マフラーのウルサイ車両は触ってくれないので注意!

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