ハーレーコラム | バージンハーレー

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長年ハーレーを見てきた経験から
新旧ハーレー事情をご紹介します

皆さん、こんにちは「ハーレー屋まつもと」の松本と申します。Virigin-Harleyのメタボリック編集者から「ショベルヘッドの楽しみ方のコラムを」との依頼を受け、筆を取ることになりました。私は1971年からハーレーを触りはじめ、35年以上この世界に携わってきました。ふと振り返ると、当たり前のようにショベルヘッド(以下、ショベル)の納車整備をしていたのは、大昔の出来事になってしまいました。ショベル、エボ、ツインカムとハーレーの進化の歴史とともに私も年齢を重ねてきましたが、嬉しいことに未だに私の手元にはショベルの整備依頼がやってきます。

 

私がメカニックとして触り、一番楽しいと思えるエンジンはショベルです。ショベルはメカニックの技量によって調子に差が出やすく、乗り手の癖がつきやすいモデルですからね。そんな愛すべきショベルをテーマに、過去から現在のショベル事情、ハーレー事情に触れていきたいと思います。

よろしくお付き合いください。

ショベルと言えど仕様はさまざま
高年式モデルを選ぶのが無難です

イメージ ショベルヘッドと言っても製造年式によって、違いはイロイロあります。アーリーショベル、電気系統がオルタネーターに変更されたモデル、排気量が1200ccから1340ccにボアアップされたモデルなど、年式によって仕様はかなり違っています。いろいろこだわりがあって、皆さん好きなショベルを選んでいるみたいですね。ただ、これからショベルを手に入れる人は、年式が新しいモデルを選んだ方が無難でしょう。1969年までに生産された“アーリーショベル”と呼ばれているモデルは、パンヘッドと共通の仕様の部分も残されており、オイルの潤滑の部分に難点があります。電圧も6Vですから電装系にトラブルが起こるとやっかいです。

 

一方で1970年からのモデルはオイル潤滑、発電システムなど、これまで問題とされていた部分が大きく改善され、信頼性が格段に上がっています。ショベルというと細かな仕様変更を気にせず、一括りにされてしまいがちですが、年々進化を遂げているのです。1978年に排気量が1340ccになってからも、すべて同じ仕様ではありません。後期にはドイツ製の高品質なピストンが採用されるなど、1984年の最終年式に至るまでユーザーの声を吸い上げながら改善は続けられてきました。よほど特別なこだわりがない限り、ショベルを選ぶ際には高年式モデルを選んだ方がいいでしょう。

AMF時代は品質が悪かった?
そんなことはありません

イメージさて、高年式というと必ず問題になるのが「AMF」の話ではないでしょうか。よく「AMF時代(1969年~1981年)のモデルは、品質がよくなかった」と言われます。ハーレー社で労使紛争があり工場の士気が低かった、出荷台数が多く品質チェックの余裕がなかった…などは確かに当時から感じられました。しかし、車両自体の品質は下がっていたとは思えません。車両の品質ではなく、当時の販売店側のレベルに問題があったことが「AMF時代は…」と言い換えられているようですね。当時は今以上に、納車前のチェックを行うことを販売店に求められていました。工場でチェックするのは灯火類やブレーキなどのチェックくらい。オイルが漏れていようと、最終出荷を行う販売店が保障を使って整備すればいい、そんなやり方だったんです。

 

しかし、当時のディーラーと並行輸入ショップの間には技術・経験の差がかなりあり、ただ組んで渡すだけのショップと、問題のある箇所を整備してから渡すディーラーとの差は非常に大きかったのです。当時、私が勤めていたディーラーではお客さんに渡すまでに、大型の送風機の前でエンジンを回し、エンジンの簡単な慣らしを行ってから納車していました。今、販売されているショベルの中古車の中には「ディーラー車」と説明があることがありますが、それは「納車整備とその後のメンテを当時のディーラーが行ったので、安心」ということを意味しています。老舗ディーラーで長くメンテされていた車両であれば、ショベルメンテのツボを押さえた上で整備されているので、発売から何十年もたったモデルでもダメージは少ないと言えるでしょう。今ではショベルを長く扱っているディーラーはほとんどありませんから「ディーラーで整備されているから安心」とは言えませんが…。ショベルが現役だった当時は正規の訓練を受け、本国から情報が入ってくるディーラーの信頼感はかなりのモノでした。私たちもそこにプライドを持って作業を行っていたのです。

ショベル選びには
フレームにも気をつけてください

イメージ滅多にない話ですが、注意した方がいいでしょうから、あえてここで紹介する話を。稀にですが、フレーム番号が打ち直された車両が中古車で出回っているのを見たことがあります。以前「完全オリジナルだ」というショベルを見せてもらったところ、フレーム番号の打刻が打ち直されたモノだった、ということがありました。「フレームの打刻の書体が純正とは違う」、「ある年式のフレームに年式が違う車体番号が刻まれている」、そんな中古車も見たことがあります。当時を知らない若いショップも増えてきているので、番号が打ち直されていることに気づかないこともあるでしょう。アメリカで打ち直されたのか、日本で打ち直されたのか、正確なところはわかりません。

 

また、古いショベルになると本国ではフレーム番号が打たれておらず、日本に入ってきてから陸運局で「職権打刻」と呼ばれる打刻が打たれているモデルがあります。そういう年式のモデルなのに、なぜかエンジン番号が打たれているフレームも見たことがあります。なぜなのでしょう(笑)。こういうフレームの車両を手に入れると車検に通らないこともありますから、気をつけてください。また、フレームは正規モノですが、大幅に修正されているモノもありました。アメリカでフレームを切り貼りしてリジッドフォークにされていたフレームを、パイプを溶接して純正ルックに戻したフレームを見たことがあります。生産からかなり時間がたち、オリジナルを保っているモデルが少なくなっているため、車両の状態がどうこうではなく「これを販売してはマズイだろう」という中古車も稀に見かけます。ショベルの中古車は新車以上の価格になっているのも珍しくありませんから、変な車両を買ってしまわないようご注意ください。

当時のパーツ流通の裏話
パーツ入庫が遅いのはなぜ?

イメージショベルが現役だった時代に「ハーレーのパーツを注文しても、なかなか入ってこない」と、そんな話がありました。これには面白い裏話があります。今は純正パーツを注文して、1週間以内に届くことは珍しくありません。日本国内に純正パーツの在庫が豊富にありますから、オーダーが入って即出荷できるパーツが多いんです。当時はハーレーダビッドソンジャパンはなく、バルコムトレーディング(以下、バルコム)という会社がハーレーを取り扱っていました。実はバルコムも純正パーツはかなりストックしており、いちいち本国にパーツをオーダーしなくても、すぐに出荷できるパーツもかなりあったのです。では、なぜパーツをオーダーしてから手元に届くまで時間がかかったのか、それは注文の流れに問題があったんです。今で言う“子ディーラー”で注文を行った場合、パーツ注文は“親ディーラー”に入り、そこからバルコムへ注文が入り“親ディーラー宛に出荷、当時のパーツの流通はそういう流れになっていました。

 

ここで問題だったのは、子ディーラーも親ディーラーも「送料がもったいないから、まとまった数のオーダーを抱えてからオーダーを出す」という手法です。子ディーラー、親ディーラーそれぞれである程度オーダーが貯まるのを待ってオーダーを出すのですから、パーツが届くのは当然遅くなります。一度オーダー予定のパーツの発注を忘れてしまうと、次回の発注までかなりタイムラグが空いてしまうのも当然です(笑)。こういうやり方だったのでパーツが届くのが遅かったのですが、お客さんにはそんな事情は説明できません。だから「ハーレーは部品供給が遅い」という話しが巷に広まったんです。ハーレーの販売がバルコムからハーレーダビッドソンジャパンに変わったとき、アフターサービスを強化するために、このパーツ供給の流れは改善されました。そのため、現在では昔のようにパーツが届くのにストレスを感じることはまずありません。昔ハーレーに乗っていた人からすると信じられない変化でしょうね(笑)。

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PROFILE

コラム執筆者写真

松本 雄二

58歳。1971年よりハーレーに関わり“超マスターオブテクノロジー”と称されるほど、その技術力の評価は高い。複数のディーラーを経て「ハーレー屋まつもと」をオープンさせ、日々ハーレーの修理にいそしむ。なお不正改造車、マフラーのウルサイ車両は触ってくれないので注意!