VIRGIN HARLEY | XL883N アイアン883 試乗インプレ

XL883N アイアン883の画像
HARLEY-DAVIDSON XL883N Iron 883(2010)

XL883N アイアン883

ただのブラックアウトモデルじゃない
ファクトリーの想いが具現化された一台

近年の流行なのかと思うほど、ニューモデルが発表されるたびに必ず1台は含まれているハーレーダビッドソンのブラックアウトモデル。2008年のXL1200N ナイトスター(ブラックアウトモデルは2009年から)や2010年のFLSTFB ファットボーイ・ローと、きらびやかなデザインとは対極のダークな印象が魅力のファクトリーカスタムモデルは、その独特のデザインで車両の魅力を引き立て、それぞれが人気モデルとしての地位を確立している。今回紹介する2009年登場のスポーツスターXL883Nアイアンもその流れを汲むモデルだが、ただブラックアウトしたわけではない。いわゆるファクトリーの明確な方向性が示されたカスタムモデルと言うべき1台だ。試乗を通じて、アイアンの愉しみ方に迫ってみた。

XL883N アイアン883の特徴

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過不足ないバランスが最大の魅力
見た目にも気を使うニクいヤツ

試乗前にスペックを確認したところ、[最低地上高 99mm / 加重時シート高 641mm]とあり、スポーツスター XL883Lと同じ数値だった。かなり車高が抑えられているのだろうと実際に跨ってみると、なるほど身長174cmの僕なら膝が軽く曲がるほど余裕がある足つきだ。視線の高さは気持ち低く感じるが、全高がラインナップ中もっとも低い 1,080mm に設定されているからか、視界そのものはかなり開けた印象だ。走り出してみると、車体そのものがコンパクトでローダウンされた構造になっているからか、安定感はなかなかのもの。吹け上がりも決して悪くはないが、1,200ccモデルに乗り慣れているせいか若干の間があるように思えた。国産系モデルから乗り換える人にとっても気になるポイントかもしれないが、それが883ccモデルの味として許容できれば気にならないはずだ。高速道路での走行を試してみたところ、ビッグツインや1,200ccに比べて物足りない部分がないわけではないが、重心が低いローダウンモデルなのでスピードに乗ってもバランス良く走ることができる。ただ、スタイリングはもちろん車体構造からなる連動性を鑑みると、どちらかと言えばシティユース向きのモデルという位置づけだ。

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街乗りを中心に試乗を行ったところ、アイアンの大きな特徴である重心が低いローダウンスタイルの良し悪しが見えてきた。まずメリットは低速走行時でも安定感があること。交差点が多く渋滞にも見舞われる都内だと、何度もストップ&ゴーを強いられる状況に遭遇するが、車高および加重時シート高の低さから足つきに不安を覚えることがないので、ストレスなく巡航することが可能。加えて排気量883ccエンジン「エヴォリューション」が絞り出すパワーはビッグツインほどではないが、その分レスポンスに優れているので小気味良く加速 / 停車を繰り返すことができる。逆に弱点となるのが、ローダウンスタイルから成るバンク角の少なさだ。大きな交差点で車体を寝かせながら曲がろうとしたところ、かなり早い段階でステップを擦ってしまった。もちろん大きな円を描きながら緩やかに曲がっていけば何ら問題はないのだが、ここは好みが分かれるところかもしれない。あとは段差を乗り越える際の底打ちぐらいで、これ以外で特に気になった点はなかった。むしろマットなデザインで統一されたスタイリングが、高層ビルがひしめき合う都会のイメージにマッチするなど、乗り味に加えて見た目でもシティユース向きのモデルだと思わされた。お洒落なカフェや高級ブランド店の前に置いても似合ってしまうスタイリッシュなボディの持ち主――アイアンはそんなニクいヤツだ。

XL883N アイアン883の試乗インプレッション

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見た目に惑わされてはいけない
コンパクトなボディを生かしたカスタムを

前述したとおり、最低地上高 99mmと加重時シート高 641mmはスポーツスターXL883Lと同じ設定で、全高は全車種でもっとも低い 1,080mm。さらにハンドルバーも短く、全幅はXL883Lより6cmも狭まっているなど、ラインナップ中もっともコンパクトな車体と言っていいだろう。この小回りが効くボディ構造こそがシティユース向きモデルと呼ばれる所以で、その構造はデザイン面にも恩恵を与えている。XL1200Nナイトスターとお揃いのLED一体型ターンシグナルを装着したリアフェンダーとリアタイヤのクリアランスに目をやると、ギリギリの幅で保たれているのがお分かりいただけるかと思う。フェンダーのラインをくっきりと見せるためにソロシートを採用しているのだろう、最新のパーツを採用しながら無駄を省いたシンプルなリア周りはアイアンならでは。ほかの部位を見てみると、ブラックアウトされたマットなパーツ群に目を奪われてしまうが、パーツそのものはシンプルな仕上がりになっていることに気付く。それでいてこれまたナイトスター同様にフォークブーツが履かされているなど、スタイリングの演出という点で抜かりがない。アイアンのブラックパーツで人気が高いのが、黒いキャストホイールだ。足元を引き締める黒いホイールはまるで紳士の革靴のようで、これを見てホイールをブラックアウトする人が増えたと聞く。

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そんな魅力満載のアイアンだが、その完成度の高さから「カスタムには不向き」との声も。FLSTFBファットボーイ・ローやFXCWCソフテイル・ロッカーCなどを含む“ファクトリーカスタムモデル”の宿命とも言える部分で、「スタイリッシュにまとまっているからこそ中途半端に触れない、ともすればそのデザイン性を崩してしまう怖さを秘めている」というわけだ。しかしながら、改めてこのモデル最大の特徴はどこかと考えてみると、デザイン性よりもローダウン&コンパクトにまとめられたボディ、そして乗り味ではないだろうか、と思った。

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ホイールやアウターチューブ、ヘッドライトバイザーなどブラックアウトされたパーツの数々に、単体だと10万円以上するLED一体型ターンシグナルがノーマルの状態で取り入れられているのは、後から着手するよりもかなりお得。このスタイルを土台に、ハンドルやシート、タンクデザインなどベーシックな部分を逸脱しない範囲でシンプルにまとめていけば面白い一台になるはず。飽きのないマットなボディから「もう十分」と思われがちだが、見た目に惑わされなければまだまだカスタムの幅があるモデルだ。

XL883N アイアン883 の詳細写真

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暮れなずむ工業地帯に佇む スポーツスター XL883N アイアン。
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バイザーやブラケット類も真っ黒。ヘッドライトはスポーツスター全モデル共通。
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XL1200N ナイトスターとお揃いか。クラシカルな印象の純正フォークブーツを装着。
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ブラックアウトした純正キャストホイール。ここにもっとも魅力を感じる人も多い。
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全体のフォルムに揃えてハンドルバーからレバーまで黒。ハンドル幅は他の 883 シリーズと同様にコンパクト。
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マットブラックのボディに近未来的なフォントで刻まれた HARLEY-DAVIDSON のエンブレム。
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タンクからリアフェンダーへと流れるアールを形成するソロシート。滑らかなラインが好印象。
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ブラックアウトモデルの代名詞となりつつあるLED一体型ターンシグナル。後ろから見た姿は秀逸だ。
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黒をベースにカラーリングが施されているエンジン。
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全体が黒で統一されているからこそ存在感が際立つクロームのエキゾースト。重要なカスタムポイントでもある。
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リアショックまでブラックアウトされるなど、イメージに対するこだわりはさすが。
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身長165cmの女性ライダーによる足つきチェック。しっかり地面に着いているので停車時の不安もない。

こんな方にオススメ

上級者向けとも言えるスポーツスター
酸いも甘いも見分けられる達人にオススメ

確かにアイアンは、ディーラーのクロームコンサルタントやカスタムショップのビルダーでさえ手を出すのを躊躇ってしまうほど完成度が高い。さらに最新モデルであるという点も手伝って、「ノーマルのままでも十分カッコいい」と謳われている部分が少なからずある。しかしハーレーダビッドソンのモデルである以上、必ずカスタムをしてみたくなる衝動に駆られるのは火を見るより明らかで、思いつくままに手を加えていった結果、ノーマルが持っていたスタイリングの良さを損なってしまう……という怖さを秘めた、意地悪なモデルだと言える。そう、アイアンは初心者向けのように見せかけた上級者モデルという、羊の皮を被ったオオカミなのだ。そんな抜け目のない獣と対峙できるのは、経験豊富な狩人――カスタムの酸いも甘いも知り尽くしたハーレー乗りである。お金と時間を費やして得た失敗を糧に、「カスタムとは何ぞや」という究極のテーマに対する答えを持ち合わせた人にこそ、このアイアンと向き合っていただきたい。そして周囲の人がどよめくほどのスタイルを生み出した暁には、きっと貴方にスポーツスター・マイスターの称号が贈られるだろう。

プロフェッショナル・コメント

高級パーツがおごられた特別なモデル
ライトカスタムで引き立てるのがベスト

デビュー当初は「XL1200N ナイトスターの弟分?」といった位置づけになるかと見ていたのですが、実際に販売がスタートすると、他のモデルと見比べて悩むといった人は皆無で、アイアンを指名買いする方がほとんど。しかも比較的若い方が興味を示されていますね。“ブラックアウト”という点で言えばナイトスター以上に黒いパーツが配されているので、人気の高さは群を抜いています。以前 FXSTBナイトトレインという元祖ブラックアウトモデルがありましたが、こちらも年配よりも20代や30代から支持されていました。そうした背景を考えると、若い層がアイアンに惹かれるのは必然なのかもしれませんね。そんなアイアン、同タイプの XL883L と比較したときに貴重なパーツを数多く身に付けていることに気付かされます。LED一体型ターンシグナルはもちろんですが、数々のブラックアウトパーツも実はかなり高額なのです。これらがノーマルの状態から装着されてこの価格というのは、カスタムをする上でかなりのアドバンテージと言えます。フリスコスタイルでも似合うし、ロボットハンドルもフィットするので、こうした土台を生かしたライトカスタムをしてやるだけで十分カッコよくなります。私なら思い切ってLED一体型ターンシグナルを外してしまって、小さいテールライトとウインカーを付けて全体的にコンパクトなカスタムをしてみたいところですが、そこまでやるにはちょっと勇気がいるかな?(笑)カスタム車両として見ても魅力的なモデルですので、H-D純正カタログをめくりながらカスタムスタイルを夢想する楽しさを味わってみて欲しいですね。(ハーレーダビッドソン練馬 大竹 三智男氏)

バージンハーレー読者のカスタムハーレー【01】

XL883N アイアン883の画像

2010年式 スポーツスター XL883N アイアン / FLAT 1さん(東京都)

決め手は真っ黒なキャストホイール
よりダークにまとめていっています

ヤマハ マジェスティ125を足代わりに5~6年乗っていたんですが、隣人がハーレーに乗っていて、連れられてディーラーに足を運び、そこでアイアンに出会いました。全身がダークに統一されていて、しかもLED一体型テールライトを装備しているところがポイントでしたね。XL1200N ナイトスターと最後まで悩みましたが、真っ黒なキャストホイールが最後の決め手でした(笑)。今はもっぱら街乗りがメインで、都内までの通勤にも利用しています。カスタムのコンセプトは“低く黒く”としています。マフラーやエアクリーナー、ほかハンドルライザーから何までブラックで統一しちゃっていますね。またスクリーミンイーグルのスーパーチューナーを入れてチューニングをしてからは、加速も良くなって走るのが楽しいですよ。現時点では外装カスタムはほぼやれているので、あとは排気量アップを考えたりしています。

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【1】ガッツクロームで発見したZバーとブラックの8インチライザーで組み合わせた。【2】ブラックパウダーコート仕様のS&S製エアクリーナーをチョイス。【3】スタイリングの良さからXL1200N ナイトスター用ソロシートを装着している。 【4】バンス&ハインズ製ショートショット。フォルムが気に入っているのだが、いかんせん音が……。

バージンハーレー読者のカスタムハーレー【02】

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2009年式 スポーツスター XL883N アイアン / ちゅーでんさん(東京都)

目指すはフリスコスタイル風のカスタム
ツーリングで走行距離伸ばしていきます!

FXDL ダイナ・ローライダーに乗っている会社の同僚のススメで……いや、半ば強制的にハーレー乗りになっちゃいました(笑)。元々大型バイクに乗ろうと思って大型自動二輪MT免許を取得していまして、ハーレーに乗らせてもらった途端やられちゃいましたね。「ハーレー」と聞くとクロームパーツを多用したキラキラしたイメージがあったので、マットブラックでまとまったアイアンには先入観を壊されました。また雑誌のVIRGIN HARLEYに掲載されていたカッコいいカスタム・ナイトスターに惹かれたのも、アイアンを選んだ理由です。TRAMP CYCLEのカスタム車両で、セミダブルシートはそこで見て、「これだ!」と取り寄せました。今後は8インチライザーとバーハンドルを取り付けてフリスコスタイルっぽくしてみたいと思っています。ツーリングはいろんなところに行っていますよ。関東近郊はすべて回りましたし、一番遠いところで言えば仙台ですね。お陰で1年目にして走行距離が1万キロを超えています(笑)。

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【1】TRAMP CYCLE製のサイドマウントメーターブラケットでメーター位置を変更。「カッコいいんですが、見づらいです(笑)」。 【2】お気に入りのカラーであるブルーを取り入れたくて、ホイールに青いピンラインを施した。【3】TRAMP CYCLE製セミダブルシートとシッシーバー、さらにオーリンズ製リアショック S36E を装着。パッセンジャーのための優しい心遣い。【4】純正リアフェンダーのアンダーカバーを外し、キジマ製ナンバープレートステーを加工してショートフェンダー風にまとめたリア周り。リアタイヤの迫力が出ている。

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