VIRGIN HARLEY |  FLSTFB ファットボーイ ロー試乗インプレ

FLSTFB ファットボーイ ローの画像
HARLEY-DAVIDSON FLSTFB Fat Boy Lo(2010)

FLSTFB ファットボーイ ロー

ハーレー屈指の人気モデルが
ダークな鎧を纏ってここに登場

2010年、ハーレーダビッドソンのラインナップ中でも群を抜いた人気を誇るFLSTFファットボーイに、グレードアップ版モデルが登場した。その名もFLSTFBファットボーイ・ロー。車体が全体的にブラックアウトしてダークな印象になり、ベース車両とは違った独特の存在感を持ち合わせている。だが、それはあくまで見た目のハナシ。外装の黒さが際立ってはいるが、ローダウンリアサスペンションの採用やシートデザインの変更など、FLSTFBならではの味付けがなされている点も見逃せない。こうした仕様変更や乗り心地を検証すべく、まだ街中でも見かけることが少ないこのモデルの試乗を敢行した。

FLSTFB ファットボーイ ローの特徴

FLSTFB ファットボーイ ローの画像

スクリーンデビューを機に火が付いた
ベースモデルの人気から振り返る

今回ご紹介するファットボーイ・ローのベースモデル、FLSTFファットボーイの歴史から振り返ってみよう。このモデルが登場したのが1990年、今でこそハーレーのモデル分類基準である「ファミリー区分」が始まる前年で、その位置づけはFLSTヘリテイジ・ソフテイルのカスタム・モデル、現行モデルで言えばFXCWCソフテイル・ロッカーCやFLSTSBソフテイル・クロスボーンズのような「ファクトリー・カスタム車」だったのだ。“名は体を現す”とはまさにこれのことで、横幅のある前後フェンダーや斬新なディッシュホイール、ショットガン型エギゾースト、そして本モデルにだけ許された大きなヘッドライトナセルなど、チョッパー・カスタムの対極とも言えるマッチョなボディは、デビュー当時かなり異質だったことだろう。そんな異端児モデルを一躍スターダムに押し上げたのが、その翌年に公開されたハリウッド映画『ターミネーター2』である。主演のアーノルド・シュワルツェネッガーが黒い革ジャンにサングラスという出で立ちでFLSTFを駆る姿は、主人公の体躯とマッチし、その存在を世に知らしめた。以降、さまざまなモデルが登場しては姿を消していくなか、ファットボーイは来年20周年を迎えるなどベストセラーモデルとしての確固たる地位を確立している。

FLSTFB ファットボーイ ローの画像

FLSTFBファットボーイ・ローはファットボーイのグレードアップ版モデルで、開発コンセプトは「より低く、よりブラックに。」。一見すると「XL1200NナイトスターやXL883Nアイアンのように、ブラックアウトしたモデルなんでしょ?」と思われがちだが、ブラックデニム仕上げ、サーメットブラック仕上げコーティング、グロスブラック仕上げなど、3パターンのブラック塗装がバランスよく配されており、さらにヒートシールドやパワートレイン、プライマリーカバーなどをサテンクローム仕上げとすることで全体のカラーリングにアクセントを加えている。特に強い主張を感じるのが、真っ黒なディッシュホイールだ。車体全体の印象を決定付ける重要なポイントゆえ、ここが黒く引き締まった点は見逃せない。そして「さらに低く」を実現するために、ローダウンリアサスペンションと、FLSTFのノーマルシートよりもさらにくぼんだバッドランダージオメトリーを採用している。これによりシート高は1インチ(2.54cm)ダウンし、全モデル中でもっとも低いシート高となる620mm(加重時)を実現した。足つきの良さから女性ライダーに人気があったFLSTNソフテイル・デラックスの622mmよりも低くなっており、ユーザーにとっては愛車選びの選択肢が増えたことになる。

FLSTFB ファットボーイ ローの試乗インプレッション

FLSTFB ファットボーイ ローの画像

ハイウェイ走行からシティユースまで
マッチョボディが軽快な走りで駆け抜ける

ローダウンして足つきが良くなったとはいえ、大きな車体が印象的なファットボーイがベースである、取り回し等、不安を抱いている方も少なくないだろう。そうした声に対して、「なんら心配はいらない」と言いたい。車両重量が330kgと、ソフテイル・ファミリーのなかでは2番目の軽さ(?)を誇る。重くないわけではないが、元々重いモデルばかりがラインナップされているハーレーという範疇で考えれば、かなり良心的な車重と言えるだろう。有り難いのがワイドな広がりを持つナロータイプのハンドルバーで、肩幅より広いポジションなので取り回しに余裕を持たせてくれる。実際に跨ってみると、予想どおり足つき性はバツグン。身長173cmの僕だと、膝が「くの字」に曲がって足がべったり着く。おそらく160cmほどの方でもベタ足になるのではないだろうか。さらにうれしいポイントが、ニューデザインとなったシートだ。ベースのFLSTFから継承したワイドな横幅に加え、さらに体が深く沈み込み、ちょっとしたソファ感覚を味わえる仕上がりとなっている。

FLSTFB ファットボーイ ローの画像

高速道路に入り、渋滞のない快適なハイウェイライドが始まると、なかなかの安定感を提供してくれる。が、ネイキッド型なので当然ながら風防効果はなく、速度を上げれば上げるほど風が強まってこのモデルが持つ楽しい乗り味が半減してしまう。ツインカム96Bの心地よい鼓動を感じながら高速走行を楽しみたいなら、今年より採用された5速ヘリカルギアに入れた状態で時速80km~90km前後での巡航をしてみてほしい。もちろん好みの差もあるわけで、そこを探りながら乗ってみるのが一番いい。前後とも17インチ径というホイールサイズのフロント140mm/リア200mmのタイヤは実にバランスがよく、ローダウンした車体と相俟って走行時の安定感に一役買っている。

FLSTFB ファットボーイ ローの画像

時速100kmオーバーで走らなくてもいい余裕をたっぷり味わわせてくれること請け合いだ。鈍行での走行バランスがいいわけだから、混雑した状態が多いシティユースでも難なくクリアしてくれる。街乗りでの状態を知ろうと、渋滞の多い新宿や渋谷といったエリアでの走行テストを行ったのだが、狭いエリア内での取り回しに関して言えば、愛車スポーツスターXL1200Rよりラクだという印象。むしろ「軽い」とさえ思ったほどだ。ビッグツインゆえ加速は若干鈍いものの、ご愛嬌で済ませられる程度。なにより“ローダウンしていること”が気持ちにゆとりをもたらしてくれることが最大の発見だった。

FLSTFB ファットボーイ ロー の詳細写真

FLSTFB ファットボーイ ローの画像
より低く、よりブラックに。FLSTFをベースにブラック&サテンクロームパーツでドレスアップしたFLSTFB。
FLSTFB ファットボーイ ローの画像
ファットボーイの顔とも言える大きなヘッドライトナセル。トリプルクランクカバーもブラックアウトし、インパクトを強めている。
FLSTFB ファットボーイ ローの画像
肩幅より少し広いハンドルバー。ワイドなハンドリングが楽しめるのも魅力のひとつだ。
FLSTFB ファットボーイ ローの画像
18.9リットルの容量を誇るタンクも黒く染め上げられた。エンブレムがより一層映えている。
FLSTFB ファットボーイ ローの画像
バッドランダーベースジオメトリーのライダーシートを採用し、FLSTFとの差別化を図っている。
FLSTFB ファットボーイ ローの画像
ファットボーイと言えばこれ、太いリアフェンダー。後方から見かけたとき、ここで見分ける人も多いはず。
FLSTFB ファットボーイ ローの画像
伝統のディッシュホイールもブラックに。走行時に見ると、足元のカラーリングが引き締まったのが分かる。
FLSTFB ファットボーイ ローの画像
ただ黒くしただけではない、プライマリーカバーなどにサテンクロームを配し、カラーバランスを整えている。
FLSTFB ファットボーイ ローの画像
ハイウェイ走行時に有り難いフットペグ。特に時速80~90キロで走行すると、その心地よさは際立つ。
FLSTFB ファットボーイ ローの画像
サテンクロームで仕上げられたヒートシールド。黒い車体と相俟って、存在を主張している。
FLSTFB ファットボーイ ローの画像
ソフテイル・ファミリー最大の魅力であるリジッド型フレームのトライアングル。ここを見逃すことはできない。
FLSTFB ファットボーイ ローの画像
走行時のスタイリングはご覧のとおり。周囲がカラフルになればなるほど、くっきりと車体が浮き上がる。
FLSTFB ファットボーイ ローの画像
ローダウンリアサスペンションの採用により、全ラインナップでもっとも低い加重時シート高620ミリを実現(ライダーの身長は173センチ)。
FLSTFB ファットボーイ ローの画像
FLSTFの兄弟モデルである1993FLSTNノスタルジアにも採用された伝統のエンブレム。

こんな方にオススメ

スタイリングこそファットボーイの命
もしひと目惚れしたならそれは運命

「ローダウンしているので女性ライダーにオススメ」と教科書的なコメントを書いてもいいのだが、それではこのモデルの真の魅力を伝えたことにはならない。今回の試乗インプレッションを終え、駐車場に停めたFLSTFBファットボーイ・ローを少し離れた場所から眺めていて、改めてこのバイクの魅力はH-Dのビジュアルコンセプトである「ダーク&クローム」を体現したスタイリングなのだと思わされたのだ。そう、このモデルはファーストインパクトの段階から訪問者を魅惑しようとしているのである。となれば、数あるラインナップのなかから「あ」とFLSTFBに目を留めた、いや“留めてしまった”アナタは、このモデルのオーナーになる運命なのだ。しかも乗り込めば乗り込むほど、ライディングの楽しみがどんどん湧き出てくる不思議なバイクである。試乗会では絶対に味わえないFLSTFBの面白さを知ることができるのは、運命に引き寄せられてオーナーとなったアナタだけだ。

プロフェッショナル・コメント

カラーバランスは秀逸のひとこと
既成概念にとらわれないカスタムを

一言で言えば、「カスタムしづらい完成度の高さ」が魅力のモデルです。ブラックといってもいろんなパターンを使い分け、さらにサテンクロームでアクセントを加えるなど、メーカーの本気度合いを感じますね。このFLSTFBをはじめとするソフテイル・ファミリー最大のポイントは「カスタム」なのですが、ひとつパーツを変えるだけでノーマルが持つ絶妙のバランスが崩れてしまいかねません。例えばサテンクロームのノーマルマフラーですが、ここに黒いマフラーを付けると、車体全体のイメージが重くなってしまいます。ブラックアウトされたディッシュホイールの存在感も大きく、どんなスタイルをイメージするかでがらっと姿を変えるでしょう。このモデルをカスタマイズする際は、「ファットボーイと言えばディッシュホイール」といった既成概念を取り払って、自由な発想でイメージを楽しんでみてください。

もう一点、“乗りやすさ”を挙げたいです。以前はファットボーイに興味を持たれる女性のお客様に「シートを換えてローダウンすれば足つき性は良くなりますよ」と薦めていたのですが、このファットボーイ・ローはノーマルの段階からその点をクリアしています。なかでもシートの形状は素晴らしいの一言。分厚いわりに細さもあって、クッション性もかなり高いです。ホールド感があるので、安心して高速走行が楽しめるでしょう。ご興味がある方は、ぜひお近くのディーラーで乗ってみてください。(ハーレーダビッドソン・シティ川越店 松本氏)

バージンハーレー読者のカスタムハーレー

FLSTFB ファットボーイ ローの画像

2010年式 FLSTFBファットボーイ・ロー / 大矢 明美さん(埼玉県)

決め手は足つき性とシブさ!
今後はサウンドにこだわりたい

元々スポーツスターXL1200Lに乗っていたのですが、以前からビッグツインには憧れていました。しかし身長159センチということで、安心して足が着くモデルがなかなかなく、試乗会などに足を運んでFLSTNソフテイル・デラックスなどを検討していたんです。そんなときにこのFLSTFBファットボーイ・ローが登場し、全モデル中でもっともシート高が低いと聞いて、すぐにディーラーで跨いでみたんです。そうしたら足がぺったり着いたんです! 即決でしたね(笑)。足つきの良さはもちろんですが、ブラックアウトしたシブいカラーリングも決め手のひとつです。なによりシートがいいですね! すごく柔らかいので、スポーツスターのときよりも長距離走行がラクになりました。今後は外装やマフラーなどのカスタムを考えているのですが、メッキのマフラーとかにしてしまうと浮いちゃいそうなので、いろいろ思案中です。

FLSTFB ファットボーイ ローの画像
【1】車両を購入したH-Dシティ川越店の松本店長に薦められてカスタムしたキジマ製のハンドルバー。ポジションが手前に来て突っ張り感がなくなった 【2】初のビッグツインということで、安心のH-D純正エンジンガードをチョイス【3】「必需品です」とオーナーが力強く語るETC 【4】ステップボードに隠れがちになるサイドスタンドを出しやすくするためのキジマ製サイドスタンドエクステンション

関連する記事

ピックアップ情報