
ローライダーSがハーレーのラインアップに姿を現したのは2016年のこと。西海岸発祥のクラブスタイル、なかでも市街地を機敏に駆け抜けるフリスコと呼ばれる系譜に連なる一台として登場し、当初はダイナフレームを採用するSシリーズの一員に名を連ねていた。しかし2018年、新型ソフテイルフレームの登場によってダイナファミリーそのものが消滅。ローライダーSも一度は姿を消すこととなるが、根強いファンの声に応える形で2020年モデルにてソフテイルモデルとして復活を遂げている。

その後2022年モデルでは、ハーレー史上最大排気量となるミルウォーキーエイト117エンジンを獲得し大幅なパワーアップを果たした。さらに2025年モデルでは、吸排気系の見直しとハイカム化によって高回転域の出力特性を徹底的にブラッシュアップした「ハイアウトプット」仕様へと進化。ファクトリー・ホットチューンと呼ぶにふさわしい仕上がりで、ハーレーのクルーザーの中でも突出した動力性能を誇る存在となった。

ローライダーSは、ハーレーのクルーザーカテゴリーにおいて「ファクトリーカスタム クルーザー」と位置づけられるモデルである。同じ血統を持つバガーカスタム版「ローライダーST」の兄弟モデルにあたり、ツーリング志向のSTに対し、ローライダーSはあくまでスポーツライディングに軸足を置いたキャラクターを貫いている点が特徴だ。

搭載するのは、ミルウォーキーエイト117ハイアウトプットエンジン。空冷45度Vツインという伝統的な構成でありながら、排気量1,923ccから最高出力114HP(85kW)/5,020rpm、最大トルク173Nm/4,000rpmという、ハーレーの中でも屈指のスペックを発生する。車体構成やライドモード、トラクションコントロール、コーナリングABSといった電子制御デバイス群も基本的に踏襲されている。

フロントブレーキはフローティングディスクをダブルで装備し、シート高715mm、車両重量304kg、19インチフロント/16インチリアという伝統的なホイールサイズは変わらない。

以前このモデルに試乗した際、スタイルこそほとんど変わっていないにもかかわらず、中身は”別物”と言っていいほどのアップデートを遂げていたことに驚かされた記憶が今も鮮明だ。エンジンの吹け上がりが異様なほど軽くなり、パワー・トルクともに一回り増大。ライドモードをスポーツに入れれば、2000回転ほどで振り落とされそうな加速を味わえた。それでいて足まわりがしっかりと追従してくるため、強烈なパワーを持て余すような破綻はなかった。
そして今回、あらためて2026年型に乗り、当時の手応えがどう深化しているかを確かめることとなった。

まず気づいたのはブレーキのタッチだ。2022年モデルに試乗した際は、握り込む操作に対してもう少し反応がダルに感じられる部分があった。今回の2026年型では、その感覚が過度に鋭くなることもなく、握力に対してちょうど良い塩梅で応答してくる。強めに握れば強めに、軽く添えれば軽く効く。この素直さは、制動時はもちろん速度調整やバランスコントロールにおいても大きなメリットとなる。

エンジンのフィーリングは、相変わらず良い。ライドモードをスポーツへと切り替えて全開にすると、後輪に凄まじいトラクションがかかり、その勢いにフロントタイヤの踏ん張りが追いつかず、まるでフロントを掬われるかのような感覚に見舞われる。それほどまでにパワフルなのだ。一度この感覚を味わうと、病みつきになってしまうことだろう。

ライディングポジションも秀逸だ。手元と腰の位置関係が絶妙で、車体と一体になったまま思い通りにラインをトレースできる。ハンドルバーの位置の良さゆえに小回りも苦にならず、もちろん、気持ち良く快適なクルーズも、もたらしてくれる。

サウンドもまた良い。アイドリングは1000回転以下で落ち着いており、ハーレーならではの鼓動感を楽しめる。走り出せば、Vツインらしい鼓動感を保ちながら心地よい音色で気分を高めてくれる。

今回の試乗であらためて感じたのは、その完成度の高さゆえに、もはやカスタマイズを施そうという欲求すら必要としなくなったという事実だ。ブレーキの洗練、エンジンの余裕、ポジションの安定感、サウンドの心地よさ。それぞれが噛み合った結果として、ノーマルのまま乗り続けたいと思わせる一台に仕上がっている。かつてこのモデルに触れた者であれば、2026年型がたどり着いた完成度の高さに、深く納得するはずだ。

搭載するのはミルウォーキーエイト117ハイアウトプットエンジン。空冷45度Vツイン、排気量1,923ccから最高出力114HP(85kW)/5,020rpm、最大トルク173Nm/4,000rpmを発生する。ハーレーの中でも屈指の動力性能を誇るユニットだ。

φ43mm倒立フロントフォークを採用。しっかりとした剛性感を保ちながら、路面追従性にも優れる。19インチという大径ながら、想像以上にすいすいと向きを変えてくれる印象だ。

コンパクトなビキニカウルに丸型LEDヘッドライトを組み合わせたフロントマスク。小さいながらも防風性能は高く、ハイウェイクルーズの快適度を大きく引き上げてくれる存在だ。

アナログとデジタルを融合したシングルメーター。ハンドルライザーにマウントされ、走行中でも視認性が良い。ライドモードなどの各種インフォメーションも分かりやすく表示される。

左グリップにはメニュー切り替えやクルーズコントロール、ホーンスイッチなどが集約される。ハンドルは横に開いたドラッグバータイプで、自然な位置にグリップがくる。

形状、座り心地ともに良好なソロシート。腰をしっかりホールドしつつ適度な反発力もあり、加速時のGをしっかりと受け止めてくれる。スタンダードでは一人乗車仕様だ。

ステップはミッドコントロールでセット。ライダー自身との位置関係も自然で、ステップワークやギアチェンジのしやすさに直結している。見た目と操作性を両立したポジションだ。

2次減速は軽量で耐久性に優れるベルトドライブ方式。リアはモノショックを採用し、快適性とコーナリング時の安定性を両立させている。

テールランプやウインカーを含む灯火類はフルLEDを採用。夜間でも明るく視認性が高いうえ、デザイン的にも精悍な印象をまとめ上げている。

リアはフローティングディスクブレーキを装備し、後輪分布荷重の大きさもあって制動力は良好だ。マフラーは軽量な2-into-1タイプで、Vツインらしい鼓動感を伴う心地よいサウンドを奏でる。