第6回 クラッチカスタム編
6回目のテーマはクラッチ周りのカスタム。見た目にほとんど影響がないパーツだが、ここに手を加えることで、クラッチが軽くなったり、レバーが握りやすくなったり、とスポーツスターの快適性が大いに向上する。

今回紹介するFXDCは、2005年モデルからダイナファミリーのラインナップに追加されたモデル。足回りなどはFXDをベースにしながら、上質なクロームパーツをおごるなどスタイル面も重視してデザインされた車両だ。ダイナファミリーでは車高の低いスタイルからFXDLの人気が圧倒的だが、個人的には「ダイナの中ではFXDかFXDCがもっともバランスがいいのでは?」という思いがあった。残念ながら数多いビックツインのラインナップの中では注目度が低くなりがちなFXDCだが、ダイナファミリーの中で、いやビックツインの中でも1、2を争うほどの魅力について、この記事でお伝えできればと思う。

2005年に登場し、まだ4年目のFXDCだが、年式による変更点は驚くほど多い。少々細かくはあるが、中古車購入時の参考として記載しておくと、最初の大きな仕様変更は2年目の2006年モデルで行われた。ヘッドライトバイザーが無くなり、ミッションが5速から6速へ、フレームやスイングアームの剛性アップ、前後のアクスルシャフトも大径のものを採用。また、39mmから49mmへと太くなったフロントフォークはレイク角も見直され、リアタイヤも17インチ160mmへと変更された。それ以上に我々を驚かせたのが、他ファミリーに先駆けて、FXDCを含むダイナファミリーの全モデルがインジェクション化されたこと。2006年にこれほどの仕様変更が行われ、しばらくは落ち着くかと思いきや、2007年モデルでは排気量が1,449ccから1,584ccへ増大、FXDCのみの変化としては、それまでのキャストホイールからスポークホイールへと変更が行われた。

ダイナモデルにはほとんど採用されていない、タンクオンメーターとタンクコンソール上のイグニッションスイッチが採用されたのも2007年モデルから。そして2008年モデルではタンク容量が従来の18.2Lから19.3Lへと増やされている。登場から4年目のまだ若いモデルではあるが、矢継ぎ早にモデルチェンジが繰り返され、年々その完成度に磨きがかかっているのだ。
他のモデルとの違いについて紹介すると、ダイナファミリーの中でもっとも長いサスペンションが採用されているのがFXDとFXDC。ダイナファミリーだけではなく、ビックツインの全モデルを見渡してもスポーツ性の高さは群を抜いたものがある。また、同じクロームエンジンということで比較されがちなFXDLとの違いだが、前後サスペンションの違いだけではなく、FXDCはシリンダーなどがFXDと共通のシルバー、FXDLがブラックとエンジン部分の見た目の印象に違いがある。他にもハンドルやタンクコンソール、ホイール、ヘッドライト、バッテリーカバーなどFXDLとの違いは多い。価格的にはFXDLより10万円以上お得なのも見逃せない点だ。なお、今回の撮影用に借りたのは105周年記念の特別仕様車でカラーリングやシートは標準モデルとは違っているため、その点に注意いただきたい。

以前、FXDLに試乗した際にも「思ったより走るなぁ」と思ったが、FXDCは予想通りFXDLの上を行く走りを見せてくれた。車重や車格の関係もあって、国産のネイキッドやスポーツのような走り方は当然できないが、ビックツインの中ではかなり走る部類に入るだろう。重い車重に慣れてしまえば、そこそこのペースでコーナーをクリアすることも可能だ。FXDCと魅力が似ているFXDにはツインカム88時代にも乗ったことはあるが、以前に比べると格段に乗りやすくなっている。この走りやすさと安定感は、2006年にフレームとスイングアームが強化された影響が大きいのだろう。1,584ccのエンジンから発生する溢れんばかりのトルクにも負けない、剛性が強化された骨格のおかげで初めての試乗でも思い切った走りを試すことができた。

フットポジションなどはダイナファミリー共通のミッドポジションだが、秀逸なのはやや幅広に感じるハンドルだ。ハンドル交換が珍しくないのがハーレーの世界であるため、このノーマルハンドルも交換されてしまうことが多いかもしれないが、捨てずに大事に保管しておくことをオススメする。肩幅より少し広く、肩の高さより低い絶妙なポジションは長時間の走行でも疲れを感じづらく、コーナー進入時にも不安は感じられない。スポーツ性の高さではFXDがFXDCの比較対象になると思うが、容量の大きいタンクと快適さを備えたハンドルのおかげで、スポーツ性だけではなくツーリング時の快適性の両方をバランスよく備えていると感じる。それに、クロームパーツが各所におごられ、見た目の満足感もあるのだから、FXDCは今以上に評価されるべきモデルだろう。
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49歳、兵庫県在住。2008年式VRSCDX所有。学習塾経営のかたわら、副業でIT系のライターをはじめ、現在はライターが本業になっている。デジタルな世界に身を置き働くものの、レザークラフトなど、アナログな趣味も持つバランスの取れた趣味人。
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京都府出身、31歳。大学時代にハーレーに夢中になり、卒業と同時にハーレー業界へ。カスタムショップでの修行の後に大阪市平野区にで「モーターサイクルズフォース」を立ち上げる。現在は愛車FXRでドラッグレースを走ることに夢中。
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