28年間生産され続けたショベルスポーツスターは、1986年にオールアルミ製エンジンのエボリューションへと世代交代し、飛躍的にその性能と信頼性が向上。2004年にはエンジン、シャシーとも大幅に見直され、エンジンはラバーマウント化。そして2007年にはスポーツスター全モデルがインジェクション化され、時代の変化に対応してきました。それではカンパニーきっての名車といえるスポーツスター、エボリューションの系譜を見ていきましょう。
1984年、ショベルヘッドを受け継ぎ、XRの技術を導入したオールアルミ製エンジンであるビッグツインのエボリューションがデビュー。その登場から遅れること2年、1986年に登場したのがエンジンとミッションが一体式のエボリューションを搭載したスポーツスターでした。
ビッグツインのエボリューション同様に進化したスポーツスターのエボリューションエンジンは排気量のアップやさまざなまアップデイトを重ね、2004年には同じエボリューションながらも完全新設計の第二世代ともいえるエボリューションエンジンへとその系譜は受け継がれ、スポーツスターの人気はさらに加速。とくにここ日本ではタウンユースに適したスポーツスターは絶大な人気を誇っています。
ショベルヘッドのスポーツスターの次世代モデルとして1986年に登場したエボリーションエンジンのスポーツスター。オールアルミニウム製4カムエンジンとして劇的に進化したニューエンジンでした。排気量は883ccと1100ccの2ラインナップで、フレームはショベルスポーツスターから受け継がれたXLXフレームを採用。
87年のXLH883はエンジンに改良が加えられ、デビュー当時の62馬力から同一の圧縮比ながらも65馬力をマーク。88年には排気量1100からボア×ストローク=88.8×96.8mmの1200ccとなり、フロントフォークはショベルヘッド後期から受け継がれてきた35mmから39mmにサイズアップが計られました。
91年には883、1200ともにトランスミッションは4速から5速となり、クランクケースの幅が拡大され新設計のクランクとカムシャフトが組み込まれることに。またこの年から1200モデルと883デラックスのみチェーンドライブからベルトドライブに変更されました。
そのあと93年には全モデルベルトドライブを採用。98年に登場したXLH1200Sには低中速域のパワーアップを狙いエンジンをツインプラグ化。またカムシャフトも変更され、エンジンのオイルラインも見直されました。
そして2004年、スポーツスター初のラバーマウントが採用された新設計のラバーマウントエンジンが登場しました。エボリューションの名を受け継ぐこのニューエンジンはヘッドアッセンブリー、シリンダー、ピストンなどの主要部品が新しくなり、シリンダーのフィンも大型化され、安定性と耐久性が向上。2007年にはスポーツスター全モデルがインジェクション化され、現在に至っています。
883ccと1200ccという排気量を持つスポーツスターのエボリューションエンジン。空冷4カムOHV・Vツインという基本設計を変えることなく、ショベルスポーツスターから数えると60年近く生産され続けていることになりますが、そのパフォーマンスは必要にして十分なものといえるでしょう。同クラスの排気量の国産モデルなどと比較するとエボリューションを搭載したスポーツスターは非力でありますが、操作する喜びに溢れた希有なモデルです。
また2007年以降、すべてのモデルがインジェクション化され、時代に沿った進化を続けています。インジェクションモデルのデビュー当時は、スタートダッシュや低速のもたつきが話題になりましたが、近年ではセッティングが煮詰められ非常に完成度の高いエンジンに仕上げられています。
1986年の登場から2016年で30年が経つエボリューション。2004年に刷新されたエボリューションですが、この30年という月日を考えればそろそろニューエンジンに世代交代してもおかしくはないでしょう。
数年前から水冷化が噂になっていたエボリューション。しかしストリート750に搭載される水冷750ccのレボリューションXが2015年にデビューしたことを考えれば、スポーツスターの次期エンジンが水冷化される可能性は低いかと思われます。いつ、そしてどんなエンジンに生まれ変わるのか期待して待つことにしましょう。