VIRGIN HARLEY |  第3回 タイヤの特徴タイヤ講座

第3回 タイヤの特徴

  • 掲載日/ 2006年02月19日【タイヤ講座】
  • 執筆/SPEEDSTAR 水口 和明
タイヤ講座の画像

各部の特徴から
タイヤ特性を知る

タイヤの種類と、タイヤそれぞれの特性の見方はおわかりいただけましたでしょうか。さて、次にタイヤをさまざまな特徴から見て、その特性についてご紹介いたしましょう。

タイヤパターンによる
特性の違い

公道用のタイヤの表面には必ず溝があります。これは「トレッドパターン」と呼ばれています。タイヤによって違うトレッドパターンにはそれぞれに意味があり、トレッドパターン(以下、溝)によってタイヤの方向性がわかります。サーキットのように、整備された綺麗なアスファルトを走行する場合、溝が少ないタイヤの方が乾いた路面では強いグリップ力を発揮します。これは二輪や四輪のレースで使用されるタイヤを思い出せば理解できるでしょう。レーシングマシンにはスリックタイヤ(溝の付いてないタイヤ)が装着されています。しかし、公道を走行する場合、必ずしもドライな路面ではないため、溝が設けられているのです。

リアタイヤに関して、動力が加わっていますから、進行方向に向かってのパターンのつけ方になります。 フロントタイヤでは、進行方向に向かって溝をつけると、雨天走行時の排水性に優れます。また、進行方向に向かって逆の溝をつけると、タイヤが偏磨耗(段べり)しにくくなります。つまり、オートバイを正面から見たときの溝の向きで「耐磨耗性能」と「ウエット性能」のどちらに力が入れられているか見当が付くのです。ハーレーの新車装着されている「ダンロップD402」のフロントタイヤは、逆パターンになっていますので、偏磨耗しにくくする考えで作られているのがわかりますね。

タイヤの断面形状(プロファイル)による特性の違い

タイヤの断面形状の違いでも、タイヤの特性が変化します。オートバイでは車体が傾くと、傾いた方向にハンドルが自然に切れ込みます。これを「セルフステア(自動操舵機能)」と呼び、この作用があるからこそオートバイは曲がることが出来ます。車体の傾きやすさと、その時のセルフステア量と速度は車種によりさまざまです。これらの度合いとバランスが車両とマッチするように考えられ、そのオートバイ固有のハンドリングが生まれてくるのです。このプロファイル(断面形状)にも大きく分けて2種類あります。

シングルクラウン

タイヤのトレッド面が真ん中から端までひとつのR(ラジアス、半径)で均一に出来ており「シングルラジアス型」とも呼ばれます。

特徴・・・直立状態からフルバンクまでトレッド面の曲率が同じため、接地面積が変わらずオートバイが傾く速度が一定です。癖が無くもっとも自然なフィーリングになります

ダブルクラウン

タイヤのトレッド面が真ん中と端とで大きさが異なる2つのR(ラジアス)で出来ており「ダブルラジアス型」とも呼ばれます。

特徴・・・直立状態では設置面積が少ないためハンドリングが軽快になり倒しこみが軽い。オートバイが傾くにつれて設置面積が大きくなり、グリップが増します。フルバンクで強力なグリップが必要なレース用で用いられています。

排気量も大きく車重もあるハーレーダヴィトソンでは癖が無くもっとも自然なシングルクラウンのタイヤが採用されていますね。

タイヤの太さによる特性の違い【各車種ごとのタイヤサイズ表】

現在ハーレーダビットソンに使用されているタイヤサイズは…

車種 フロントタイヤ リアタイヤ
スポーツスターファミリー 100/90-19、MH90-21 150/80B16(04以降)
130/90B16(03以前)
ダイナファミリー 100/90-19 160/70B17(06以降)
150/80B16(05以前)
ソフテイルFLシリーズ MT90B16、MT90-16 150/80B16
MU85B16
ソフテイルFXシリーズ MH90-21 200/55R17(06以降)
150/80B16(05以前)
160/70B17(デュースのみ)
ツーリングファミリー MT90B16 MU85B16
V-RODファミリー 120/70ZR19 180/55ZR18
※年式により上記以外のタイヤ仕様がある場合があります。
※上記リストの赤字部分がタイヤの幅(単位:mm)を表しています。
< ※アルファベット表記のモノは H=80mm、T=130mm、U=140mmになります。

タイヤサイズによるメリット・デメリット

では、タイヤの太い細いによっての効果の違いを簡単に紹介しますと…。

タイヤの種類 メリット デメリット
太いタイヤ ・グリップ力が上がる
・安心感・安定感がある
・車体を起こしやすくなる
・寝かしにくくなる
・重たくなる
・抵抗が増え、加速や最高速が落ちる
細いタイヤ ・寝かしやすくなる
・軽くなる
・抵抗が減り加速や最高速が上がる
・グリップ力が下がる
・安心感・安定感が減る
・起こしにくくなる

排気量の大きなオートバイでは、フロントタイヤの太さに対してリアタイヤのほうが太くなっています。これは、フロントタイヤとリアタイヤの車輪の役割が違っているからです。オートバイはフロントタイヤで操舵し、後輪で駆動します。フロントタイヤはハンドルが切れた方向に向かっていくだけですが、リアタイヤは駆動によりオートバイを前に押し進める働きをしています。馬力や車重が大きくなれば、それを受け止められるだけの接地面積が必要になってきます。そこで、馬力を受け止める後輪は太く、プロファイル(断面形状)のRを大きくして接地する面積を大きくしているのです。フロントタイヤを大きくしてしまうと、ハンドルや取り回しが極端に重たくなってしまいます。そのため、操舵をするだけのフロントタイヤはある程度細くし、設置面積を小さくしているのです。大きな馬力に耐えられるようにリアタイヤは大きな設置面積を、すばやいハンドリングを生むようにフロントには小さな設置面積が必要になってくるのです。

タイヤの外径による
特性の違い

外径の大きなフロントタイヤは(18inc,19inc,21inc)直進安定性にすぐれ、路面からの影響も少ないのですがハンドルの入力に対してマイルドな反応になります。

ハーレーダビットソン、アメリカン、ツアラーモデルでは、フロントに大きな外径、リアはフロントより小さい外径の物が装着されています。ひとつには直進安定性が考えられているための選択なのでしょう。また、リアが小さい外径のためにおきるアンダーステア傾向のハンドリングが、フロントに外径の大きなタイヤを装着することにより穏やかになるためだと思われます。リアにトラクションがかかる事で安定感も生まれ、シート高も下がって、アメリカンバイク独特なスタイルになります。常に条件の悪い路面を走行するオフロードバイクでも、ハンドルに対しての挙動も穏やかで安定感に優れ・コントロールしやすいとの理由で、大きな外径のフロントタイヤを採用しています。

また外径の小さなタイヤ(16inc,17inc,)はスポーツバイクに多く採用されます。直進安定性は、インチの大きなタイヤに比べてスポイルされますが、旋回性がバツグンに良くなり、切り返しも軽く、素早いハンドリングが生まれます。スポーツバイクではフロントとリアのインチが同じ物を装着されるケースが多いです(インチは同じですが、タイヤの太さの違いにより同じ17インチでも前後で高さが違って前下がりになります)。

*40年代からハーレーダビットソンのタイヤサイズが18インチから16インチに変更となりました。インチは小さくなったのですがサイドウォールを高さのある分厚いタイヤを採用したため、18インチと外径は変わりませんでした、当時はまだリアにサスペンションが無いリジットフレームだったため、高さのあるタイヤを装着させ衝撃を吸収させる役割を持たせたといわれています。

タイヤのサイズ変更時の注意点をいくつか

ここまででタイヤをいろいろな切り口から見てきました。ここまでお付き合いいただいた方でタイヤのサイズ変更を行おう、という方がいらっしゃるかもしれません。最後にタイヤサイズ交換の場合、気をつけなければならないことを3点ご紹介いたします。

ホイールのリム幅

タイヤを装着する場合、そのタイヤのサイズに対して許容リム幅が定められています。この許容範囲を大きく外してしまいますとタイヤのラウンドプロファイルが理想的な形状にならず、直立時からバンク時まで、必要な接地面積が見込めなくなります。

タイヤの ロードインデックス(荷重指数)

ロードインデックス(荷重指数)にも気をつけなくてはなりません。負荷荷重はタイヤが許容できる荷重を示しているのですが、この数値が大きいとタイヤの剛性が高いことになります。たとえば車体の軽い中排気量の車両に大型用の車両のタイヤを装着しても、タイヤを適度にたわますことが出来ず、車体が跳ねてしまいます。また、その逆に荷重不足なタイヤを装着してしまうと、タイヤが変形しすぎて車体が安定しなくなり、タイヤが熱を持ちすぎ最悪バーストの危険もあります。

車体とのクリアランス

オーバーサイズを装着するにあたり、車体にその幅を受け入れられる隙間が無くては装着は出来ません。また 車体が停車しているときには干渉が見受けられなくても、走行しタイヤが遠心力により変形した場合(遠心力が加わることにおいてタイヤは縦方向に伸びてしまう)フェンダー等への干渉、走行中路面からのギャップを拾ったときのサスペンションの沈み込みによる各部への干渉、などを十分に想定した上で装着しなければなりません。

プロフィール
水口 和明

35歳。東京都世田谷区にて二輪車タイヤの専門店「SPEEDSTAR」を運営。国産車からBMW、ハーレーのような輸入車まで、二輪のタイヤについては幅広い知識、豊富な在庫を持つ。

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