インジェクション車のチューニングにコンピューターは欠かせない
マッピングを変更して特性を変えることがセッティングの常識だ
シャーシダイナモを用いてセッティングを施す PERFORMANCE CYCLE SHAFT （シャフト）の栗原和也さんと、長年カスタムハーレーを作り続ける JAPAN DRAG CUSTOMCYCLESの小川泰良さん。最高の乗り味を追求するのは、どの時代のチューナーもビルダーも共通だ。キャブ時代でもインジェクションとなった現代でも、同じ意識で仕事をする。その方法に違いがあるだけなのである。
今回は、一見方向性が違うように見えるお二人の対談というステージで、現代ハーレーのチューニングやセッティングの意味を語っていただいた。両者に共通するハーレーらしさとは、いったいどんなものなのだろうか。
乗って最高のハーレーを作るのが
僕らの使命だと思っている
―― そもそも、お二人の接点というのはどんなところにあるのですか？
栗原 ●小川さんはカスタム屋さんとして名前が通った有名な人。だから、ハーレーに乗る人なら誰でも知っている。僕はだいぶ年下だけど、最初は真似をしていろんな方法でカスタムハーレーを作ったりしました。でも、あまり納得できなかった。もっとセンスの良いハーレーがいっぱいあってね。追い越すのは無理だと思ったんだけど、僕にも得意分野があったんです。それがエンジンチューンということだった。
小川 ●僕は、それこそカスタムショップというより“改造屋”って言われちゃう時代からバイクに関わっているからね。ひどい時代をもがくように生きてきたから、作るものに妥協できなくなったんだ。それで、タイフーンシリーズが生まれたのかもしれない。チョッパー用のエアクリーナーボックスって、ほとんどが吸入効率を下げてしまうものばかりでね。そこが我慢できなかった。だからクールでカッコよく、性能も抜群のクリーナーボックスを作ろうって気になったんだ。
| JAPAN DRAG CUSTOMCYCLES 代表 小川 泰良 氏 老舗のカスタムショップとして常に業界を牽引してきたビルダー。チョッパー製作のイメージが強いが、バイクのグローバルバランスに持論を持つ。 | PERFORMANCE CYCLE SHAFT 代表 栗原 和也 氏 ダイノジェット正規代理店としての販売と、セッティングを得意とするチューナー。販売店向けのセッティング講習会も開催している。 |
栗原 ●そこがすごいんですよ。ルックスもクールだけど、性能は超クール（笑）だからね。エンジンのセッティングというのは、いかにしっかり吸入して効率良く排気するかにかかっている。だから、タイフーンの装着モデルでセッティングすると大きく数字が違うことが分かったんです。なので、僕は小川さんに絶対の信頼を感じていますね。そこが接点ですよ。まぁ、お互い埼玉の人間ということも大きいけど（笑）。
小川 ●今は良い時代で、何でも手に入るでしょ。でも、何だかいろいろと規制が多くてがんじがらめでもあるじゃない。だから少年たちはバイクに乗らなくなった。カッコいい憧れじゃなくなっちゃったんだろうね。バイクやクルマって、道具なんだけど単に道具じゃないわけで、カッコよくなくちゃ意味がない。僕らの世代は、とにかくカッコいいクルマやバイクに憧れて育ってきたから、これからもそうじゃないと本当はマズイいわけだよ。ハーレーがカッコ悪いなんてことになったら、大変だよね。だから新しいシステムを苦手にするんじゃなくて、取り入れながら考えていかないと。
栗原 ●僕のやっているコンピューターチューニングは、ノーマルエンジンの性能を、とことん引き出す作業なんです。エンジン自体を改造する前にセッティングするだけですごいパワーとトルクを得られる。今、正規代理店として扱っているダイノジェットのパワービジョンは、サブコンではなくてフラッシュメモリーと呼ばれるノーマルコンピューターのマップを書き代えるパーツ。ベースセッティングをすれば、バイクに乗りながら手元でもさまざまな特性変化を付けられるという優れものなんですよ。走りのシチュエーションを自在に操れるという、今までは考えられなかったことができるんです。しかも信頼性は抜群で壊れにくいし、もちろんメーカー保証も受けられる。車両の買い替えなどで取り外す場合は、ノーマルのマッピングに戻すことも簡単にできる。最高のセッティングキットです。
―― 超燃費運転にしたり、高回転域でパワーを出したり、低速トルク重視の特性にしたり……ということもできるのですか。
栗原 ●そういうことです。キャブの時代ならいくつものジェットを持って試さなくちゃならないことを、気軽に手元で操作できる。エンジンは、トータルバランスでパワーもトルクも得られるので、吸気と排気のパーツ選びは重要ですけどね。
小川 ●「セッティングしてから調子が悪い」って、ショップに駆けこむ人に限って、インジェクションのセッティングが問題なのではなくて、インシュレーターから二次エアー吸っていたりして、アナログで単純なミスに気付いてないパターンが多いよね。
栗原 ●突然エンジンが止まって、壊れたと思ったらガス欠だったなんて、笑っちゃう話も結構ありますよ。
小川 ●悪いけど、それじゃカッコ悪いよ。やっぱりハーレーはカッコよくないとね。大人が乗っているハーレーに、少年たちが憧れるようにならないと。責任は重大なんだよ。
栗原 ●だから僕は、「おおっ！」って驚かれるほどパワフルなハーレーを作りたいんですよ。「スゴいじゃん、あのハーレーって」というぐらいの。
小川 ●もう、ずいぶんたくさん作ったでしょ（笑）。
栗原 ●一ヶ月で40台はやってるな。１年で２万回はシャーシダイナモ回していますから。きちんとしたデータに基づいてセッティングすると、パワーもトルクも上がるけど、燃費はほとんど悪くならない。燃焼バランスが良くなりますからね。でも、難しいのはここからで、ライダーやショップが欲しい“味”というものがあるんです。そうすると、少し燃費が悪化しても濃い目に振って表現したり。そんなことが簡単にいろいろできるんだから、キャブ時代に比べるとかなり面白くなりましたね。
小川 ●もうじき、おもいきりオールドスクールなチョッパーでも、インジェクションでクールに走るって時代になりますよ。
ドラッグレースで優勝できるポテンシャルを
パワービジョンでのチューニングで引き出すことができた
最初は、渋滞でオーバーヒートするエンジンのアイドリングを下げるために導入したパワービジョンでしたが、オーバーヒート防止はもちろん、全体にパワーアップして、なおかつ乗りやすくなりました。のんびり走るために選んだ FLHTCU なのに、この夏のドラッグレースに出てみると、なんとクラス優勝してしまうんです。ハーレーに乗る楽しさは倍増して、次はスロットルボディも大径化すると、信じられないほどパワーアップ。重たいウルトラが発進でウィリーしそうなほどのパワーを発揮するようになりました。もちろんエンジン自体はノーマルのまま。103 キュービックインチのエンジンには、それほどのポテンシャルが隠されているということになるんです。 （オーナー／圓岡 実 さん）
カッコよくハーレーに乗るために、そのモデルの性能を最大限に引き出してやることも選択肢のひとつなのだと教えられた。
最良の燃焼状態を手に入れれば
燃費もパワーもカッコよさも手に入る
二人の対談を取材していて、ハーレー乗りのやんちゃな一面を見せつけられた気がした。バイクの楽しさは、旧車や現行、キャブやインジェクションに関わらず、ポテンシャルを引き出してそれをどう操るのかということにある。昔のライダーは旧車に乗っていたのではなく、当時の最新型をやんちゃに乗りこなしていたから、カッコよかったのだ。
「ディーラーではできないことを、俺たちがやる。もちろん合法的で、安全で楽しい乗り物を目指して」
そう話してくれた二人。ハーレー乗りは、クールでカッコよくなくてはいけないのだ。
| ダイノジェット正規取扱店として業界で知られる E.F.I チューニング専門店 SHAFT。カスタムショップはもちろん、正規ディーラー店からの引き合いも多い同店への駆け込み需要は、やはり現行インジェクションモデルのチューニングが主。「ハーレー本来の鼓動を手に入れたい」、「より良い走りにしたい」、「燃費を向上させたい」といった要望を解消、いや期待以上の成果を提供してきた。今の愛車についてギモンをお持ちの方は、問い合わせてみてはどうだろうか。 | SHAFT モデル別セッティングメニュー |
| 住所／埼玉県深谷市上柴町東3-16-14柴崎8番倉庫 Tel／048-501-7893 Fax／048-501-7894 営業／10：00～19：00 定休／水曜 （イベント出店時） |
フレンズショップとは、ダイノジェットの正規取扱店である SHAFT と業務提携を結んでいるショップのことで、SHAFT 本社でなくともこのフレンズショップに行けば、同等のサービスを受けることができる。 |
