VIRGIN HARLEY |  FXSE CVO プロストリートブレイクアウト試乗インプレ

FXSE CVO プロストリートブレイクアウトの画像
HARLEY-DAVIDSON FXSE(2016)

FXSE CVO プロストリートブレイクアウト

より戦闘的なイメージを高めた
モンスターエンジン搭載モデル

ハーレーのラインナップでも屈指の人気を誇るブレイクアウトがCVO化した。それもただエンジンを110ciにしただけではない、スタイリングを一新して新たなキャラクターへと進化していたのだ。同タイミングで発表されたFXDLS ローライダーS(Sシリーズ)と似たクラブスタイルながら、細部に目をやるとベースモデル以上にパフォーマンスアップをはたした戦闘的タイプに仕上げられていることに気づく。「ブレイクアウトはこう進化すべき」というカンパニーのメッセージがこめられた最新のCVOモデル、その本質を暴いていこう。

FXSE CVO プロストリートブレイクアウトの特徴

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CVOのクオリティを見せつける
ハイエンドなアメリカンマッスル

「CVO ブレイクアウト」と聞いてピンと来た方は、ここ10年ほどのハーレーダビッドソン事情に詳しいことだろう。今や最人気モデル フォーティーエイトに匹敵するまでの人気を誇るようになったFXSB ブレイクアウトは、元々CVOとして誕生した変わった経緯を持つモデルだ。ときは2012年8月、ミルウォーキーのハーレー本社でその姿がお披露目され、翌月には日本への上陸をはたしていた。慣例で言えば、ニューモデルは基本的に既存ファミリーの一員として生まれ、その後CVO化するもの。ところがこのブレイクアウトはCVOモデルとして先んじて登場し、2014年にスタンダード化するという逆パターンだったのだ。

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以前のCVO ブレイクアウトはすでにラインナップから姿を消していたのだが、今回再びの登場となった。それも、「プロストリート」という呼び名が加わり、スタイリングそのものも一新されて、である。

ONE-TEN(ワン・テン)と呼ばれる排気量1,801ccエンジン『スクリーミンイーグル・ツインカム110』の搭載は、CVOモデルなら当然のメニュー。それだと「Sシリーズと変わらないじゃないか」と思われるやもしれないが、このプロストリートはただ載せただけではない。エンジン本体やハンドルバー、エキゾーストパイプ、ダービーカバーを見てみると、クロームでありながら独特の光沢を放つ仕上げになっていることに気づく。これはスモークサテンクロームという独特の仕上げで、CVOはもとよりこのプロストリートブレイクアウトのみに取り入れられた加工なのだ。この鈍く妖しい輝き、実際の目と写真とでは随分印象が変わって見えるから、なんとも不思議だ。

マフラーはそのスモークサテンクローム×ブラックのスタンダードタイプで、ONE-TENのパワーを最大限に引き出すべく、スクリーミンイーグルのヘビーブリーザー・パフォーマンス・エアクリーナーを標準装備としている。さらにフロントフォークはVロッドに採用されている43mm倒立フォークが用いられ、フロントブレーキもダブルディスク仕様にバージョンアップした(スタンダードモデルはシングル仕様)。ONE-TENのパワーを制御するには不可欠な装備だと判断したのだろう、この倒立フォークに合わせてトリプルツリーも専用設計となっている。この内容だけで、すでにスタンダードモデルをはるかに超えるバイクであることに疑いの余地はない。

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スイッチボックスもオートクルーズコントロール機能搭載のツアラー仕様となっており、純正オプション扱いとなるスピードスクリーンにLEDヘッドライト、前後ホイール、チンスポイラー、その他ハイエンドなビレットパーツが各所に配されるなど、Sシリーズのさらに上をいくCVOにふさわしい装備が見て取れる。持っていることがセキュリティとなるキーレスイグニッションの標準装備も嬉しいポイントだ。そしてカスタムカルチャーを感じさせるオリジナルのグラフィックがこのマシンを鮮やかにフィニッシュさせ、アメリカンマッスルと呼ばれる見事なスタイルを完成させている。販売価格は339万円と、スタンダードモデルの238万円~245万円に比べて100万円近い差があるが、この内容を見れば、むしろお得とさえ思えるところだ。

そんなアメリカンマッスルのライドフィールを探るべく、いよいよ試乗へと繰り出そう。

FXSE CVO プロストリートブレイクアウトの試乗インプレッション

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本気のプロストリートを操るのは至難の業?
乗り手を選ぶわがままな直線番長

ドラッグバーにフォワードコントロールステップ、240mmリアタイヤ(18インチ)という組み合わせは、スタンダードなブレイクアウトと変わりはない。そこで気になるのは、やはり43mm倒立フォークとの相性だろう。新型スポーツスター XL1200CX ロードスターにも採用されるなど、ヨーロッパの潮流に合わせたかのような倒立フォーク採用がハーレーダビッドソンの既存モデルにどんな効果をもたらすのか。

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スタンダードモデルのスペックと見比べて気になるのは、レイク / トレールの数値だ。レイク角はともに35度ながら、トレールはスタンダードの146mmに対して、プロストリートは196mmとかなり大きくなっている。倒立フォークを採用したがゆえの設計変更だが、ここがスタンダードなブレイクアウトとの乗り味を決定的に変えるポイントと言えよう。

結論から言えば、ハンドリングは相当に重かった。それは走り始めたときから感じ取れるほどで、倒立フォークそのもののパフォーマンスは悪くはないものの、スタンダードモデル以上の太さとなったトリプルツリーとフォーク自体の重さも相まって、”軽快”という言葉とは真反対の重々しいハンドリングとなっている。おまけに240mmリアタイヤがバンクを難しくするので、結果的にはイメージしているよりも大きく膨らむ感じで曲がっていく。それを如実に感じる状況が、街中の交差点だ。低速でコンパクトに曲がることが求められるのに、フロントフォークそのものが重く、ステップ位置が前なので荷重を掛けられないから、バランスを取るだけで四苦八苦してしまう。また、排気量1,801ccのハイパワーエンジンはこちらが思っている以上の力を吐き出してくるので、細やかなスピード調整能力もなかなかに難しい。

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ポジションも影響しているのだろう、ハンドルポジションはやや遠くなっている。身長174cmの筆者がシートに深く座り込んでハンドルに手をやると、両腕がピンと伸びきってしまう。つまり腕にテンションがかかりきった状態になっているわけで、ハンドルを切った際には反対側の腕がハンドルに引っ張られてしまうし、ハンドルそのものが重いのでコーナリングの際は改めて力を込める動作が求められる。もちろん、このままツーリングに出かければ、腕そのものへの疲労も大きいだろう。実際、ストップ&ゴーが多くクネクネとした都心部を小一時間ほど走り回ったのだが、それだけで両腕がすっかり疲れてしまった。日本人よりも体格が大きく腕力に秀でたアメリカ人であれば難なく操れるのかもしれないが、日本人にとってはなかなか高い要求をしてくるモデルと言えよう。

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「じゃあ乗るなってことか?」というお怒りの声が聞こえてきそうだが、決してそうではない。近年はハーレーもグローバル化が進んできたとはいえ、そもそも”アメリカ人のために作られたアメリカ人のためのモーターサイクル”が大前提で、私たち向けに作られているわけではないことを理解せねばならない。そのうえで「どうすれば乗りやすくなるか」を考えるわけだが、ひとつはハンドルバーをプルバック型にしてやることだろう。腕にゆとりを持たせられるようハンドルバーをライダー寄りにしてやれば、ノーマルのときほど力を込めずともハンドルを切ってやることができるはずだ。

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逆にハイウェイでの直進安定性はグンを抜いて高かった。もちろん6速ミッションのエンジンなわけだが、4速で軽く時速100kmを超えてしまう。エンジンのセッティングそのものはやはり日本の排ガス規制に合わせたものになっているので、ONE-TENのパワーすべてを出し切ってはいない。逆に言えば、インジェクションチューニングでその潜在能力をすべて解き放ってやれば、一体どんなライディングが楽しめるのか、想像するだけで楽しくなってしまう妙な魅力を秘めているバイクだ。

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