ハーレーに限らず、車でもオートバイでもエンジン始動時に暖気が必要なのは皆さんご存知でしょう。しかし、なぜ暖気は必要なのでしょうか? 答えは以下のとおりです。
なんだかわかったような、わからないような。はい、ではそれぞれについてご説明します。
エンジンを止めしばらく放っておくと、走行時はエンジン全体を潤滑していたエンジンオイルが少しずつ下がってきて、エンジン各部は正常な油膜が貼られていない状態になってしまいます。その状態でいきなり走行してしまうと、各部が潤滑されないまま働かされ、エンジンには優しくありません。そのため、エンジン始動時にはエンジンオイルを全体に一回りさせ、全体に油膜を貼り直してやる必要があるのです。オイルの循環は季節や気温に関係なく、必要な作業ですので暖気は必ず行ってください。
「エンジンオイルの循環」からご説明しましょう。
「エンジンがスムーズに動く状態にする」についてご説明しましょう。ハーレーに限らず、機械はすべて、円滑に作動させるため各パーツには一定のクリアランス(隙間)が設けられています。規定のクリアランスが確保された状態で、エンジンは正常に働くことができるのです。しかし、クリアランスはエンジンの温度によって変化しています。エンジン周りのパーツは、エンジンが暖められるとわずかですが膨張しているのです。つまり、エンジンが冷えている状態と暖まっている状態では各部のクリアランスが違っている…というわけです。
パーツ同士のクリアランスは、エンジンが暖まった状態で最適になるよう設計されています。そのため、エンジンが冷えた状態では正常なクリアランスが出ず、無理にエンジンを動かすとエンジンに変なアタリがついたり、傷がついてしまったりします。「暖気」とはエンジンを暖めることで、各部のクリアランスを正常に近づけ、エンジンがスムーズに動くようになる温度まで暖めてやる作業でもあるのです。
ちなみに、インジェクションモデルに乗っている方も暖気は行ってください。キャブレターモデルだとエンジン冷寒時は正常な混合気作れず、暖機をしないとスムーズに走れません。しかし、インジェクションの車両は混合気をエンジン状態に合わせ自動調整するため、エンジン冷寒時でも問題なく走れてしまいます。そのため暖気が必要ない、と思っている方がいますが間違いです。インジェクションモデルもキャブレターモデルも、エンジンが付いている乗り物はハーレーに関わらず、すべて暖気が必要です。愛車に長く大事に乗ってやるためには、暖気も丁寧に行ってやってください。
さて、次に暖気のやり方についてですが、季節や住環境などで暖気方法は変わってきますので、ご自分に合った方法をお選びください。
完全に暖機ができた状態とは、水冷式エンジンなら水温計が真ん中を指した状態。空冷式(ハーレーでは)では、オイルタンク内のオイルが作動温度、80℃前後ぐらいになって完全暖機状態です。真夏なら、5分~10分で到達しますが、真冬なら走行しても30分以上かかることもあります。ですから、暖機時間を気にするのではなく、エンジン温度を気にしてください。地域にもよりますが、TC88などは放熱性がとても良くなっていて、走る程にエンジンが冷えて調子が悪くなる「オーバークール」状態になることもありますから、ご注意ください。