VIRGIN HARLEY |  第10回 マフラーカスタム編スポーツスター研究室

第10回 マフラーカスタム編

  • 掲載日/ 2008年11月19日【スポーツスター研究室】
  • 構成・文/VIRGIN HARLEY.com 編集部 ターミー
スポーツスターカスタムの画像

エンジンの個性を左右する
排気系カスタムのイロハ

今回のテーマはマフラー。以前紹介したエアクリーナーと並び、スポーツスターのエンジン性能を向上、変化させてくれるパーツだ。たとえ排気量がノーマルのエンジンであっても、エンジンの持つポテンシャルを引き出したり、鼓動感などを変化させたりしようとするとマフラー交換は必須となってくる。エギゾーストパイプ(以下、エキパイ)の取り回しや長さ、サイレンサー形状などによって低速トルクが太くなったり、低速トルクは細いが高回転で伸びがでたり、その性能やテイストの変化はさまざま。ハーレーのマフラー交換というと、よく話題に上るのが「ハーレーらしいサウンド」や「三拍子」だが、それ以外にもマフラーを変更することで得られるものは多い。せっかくスポーツライドが楽しめるスポーツスターに乗っているのだから、見た目や音以外にもこだわってみるともっと楽しくなるはず。マフラーは騒音規制や排気ガス規制などが関係してくるデリケートなパーツで、カスタムには注意が必要だが、その役割や各マフラーの仕様などについて知っていて損はない。では、スポーツスターのマフラーについて紹介しよう。

マフラーの役割とは

マフラーの役割とは?
その形には意味がある

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03年式以前ではエンジンを隠すように連結管が走る

まずはマフラーの役割の話から。そもそも、マフラーの役割は高温高圧の排気ガスがエンジンから排出される際に発生する騒音を消音するためのものだった。しかし、マフラーが進化するにつれ、それ以外の役割も担うようになってきている。マフラーの部位によってパイプ径が違うことや、サイレンサーの複雑な内部構造形状、排気ガスが流れるタイミングなどによって内部の圧力に差が発生しており、この力を利用して積極的に排気ガスを排出する効果も発揮しているのだ。マフラーが排気ガスを排出する力は吸気側にも影響し、充填効率を高めることに貢献したり、吸気側へガスの吹き返しを抑制したりするが、話が複雑になるのでここでは割愛する。

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2in1タイプの代表格、スーパートラップ。性能はお墨付きだ

マフラーの形状も性能を大きく左右する。スポーツスターの純正マフラーは、連結管やバイパスパイプなどと呼ばれるパイプで2本のマフラーが連結されているが、これは意味があってのこと。2つのマフラー内部で発生する圧力変化の波(のようなもの)は2本のマフラーが独立している場合、排気効率に悪影響を及ぼすことがある。排気タイミングがそれぞれ違う2つのマフラーを連結させることで波同士をぶつけ、打消し合う役割を担っている。2つのマフラー内部の排気ガスが連結管を通じて行き来をし、排気効率を上げる効果もあり、連結管は性能アップに大きく役立っているのだ。2004年以降のスポーツスターでは連結管は目立たずマフラーステーも兼ねており、これを外す人は少ない。しかし、2003年以前のモデルでシリンダーを隠すようにバイパスされている連結管を外す人は多かった。しかし、連結管を外してしまうとマフラー性能は低下することがほとんどで、例えば低速トルクの低下などが起こるリスクがあることは知っておきたい。

また、スポーツスターに採用されているマフラー形状では2002、2003年式のXL883R純正マフラーやスーパートラップなどのように2in1タイプもある。このタイプのマフラーには連結管はない。エキパイ末端の集合部や、大きな容量を持ったサイレンサー内部の膨張室が連結管と同じような役割を果たす設計となっているのだ。その他、カスタムバイクなどではサイレンサー部分がまったくない短いマフラーを見かけることがあるが、サイレンサーは消音以外にも排気効率の向上を担っているので、この手のマフラーにはオールマイティな性能は期待し辛い。高回転時の性能だけを重視したドラッグレーサーのように、目的がはっきりとしている場合はサイレンサーのない、抜けのいいマフラーがベストではあるが…。消音と排気効率の向上、マフラーに期待されている役割はこの2つがあることを知り、マフラーを選んで欲しい。スタイルに走るもよし、性能を追いかけるもよし。でも、自分が何を求めているのかをしっかりと考えてからマフラー選びを行うことが重要だ。

純正マフラーの互換性と
仕様の違いについて

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純正マフラーは年式により、太さ長さが微妙に違う

次に純正のスポーツスターのマフラー仕様について。2003年式までのリジッドマウントエンジンについては1997年式までと1998年以降でマフラーの太さ、長さが変更されている。1998年~2003年式までのマフラーの方がそれ以前のものより太く、長いのだ。当然、サイレンサーの容量も大きく、1997年以前のものに比べれば少し抜けが良くなるため、一時期オークションなどでこのマフラーが注目されたことがあった。ここで注意したいのはモデルや販売国によってマフラーの品番が違うこと。エキパイはどのモデルもどの仕様でも共通だが、マフラーは複数の品番が用意されているので注意して欲しい。ちなみに2003年式までのスポーツスターで人気だった純正マフラーは「フロント65171-98A リア 65177-98A」の日本仕様マフラーだ(883、883ハガー、883C、1200C用)。人によっては違いが感じられないこともあるようなので、社外マフラーほどの期待はしない方がいい。

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マフラー内部の構造。仕様によって膨張室の数が違う

次に2004年式以降の純正マフラーについて。2004年~2008年式までの純正マフラーは年式による違いがなく、どの年式も排気ガスをクリーンにする触媒は採用されていない。触媒がスポーツスターに採用されたのは2009年モデルから。ビッグツインでは早くから触媒入りマフラーが採用されていたが、排気量が小さいスポーツスターでは、キャブレターやインジェクションのセッティングでガスを薄くすることによって排ガス規制に対応してきたのだ。マフラーの騒音規制が厳しくなってきたからか、最近は本国仕様の純正マフラーへの交換も盛んだ。日本仕様は規制などに対応するため徐々に排気口径が絞られ、内部構造も本国仕様とは違っている。より抜けのいい本国仕様に交換すればほどほどの音で、スロットル感覚もややスムーズになるが、純正マフラーとは言えど本国仕様のマフラーでは車検に通らない。1200シリーズに883用のマフラーを取り付けるのも同じ。また、初期の一部年式883用のマフラーには排気口径が大きいものがあり、これに変更するオーナーもいたが、この場合もすんなりと車検に通るわけではないので注意が必要だ。

代表的なメーカー紹介

騒音規制と排気ガス規制
年式による規制値に注意

最後に社外マフラーの紹介だが、その前に騒音規制と排気ガス規制についてふれておこう。ハーレーなど輸入車の騒音規制については、2001年3月末までに登録された車両は「近接排気騒音」が99db、2001年4月1日以降に登録された車両は94dbが規制値だ。なお、2001年4月1日以降に登録された車両からは排気ガス規制の対象になっている。ちなみに排気ガス規制は2009年9月1日よりさらに厳しくなっており、2009年モデルから日本仕様のマフラー品番が変更されたのはこの規制に対応する目的もあったと思われる(本国仕様の2009年式純正マフラー品番は04~08と共通品番のまま)。2001年3月末までのスポーツスターに関しては99dbの規制値をクリアすれば(今のところは)社外マフラーで車検を通すことは可能だが、 2001年4月1日以降に登録された車両については上記規制値に注意を払い、ショップに確認しておく必要がある。では、スポーツスター用マフラーをリリースしている代表的なメーカーの下記で紹介しよう。

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    TRAMP

    軽量で耐久性抜群のチタンを使ったマフラーラインナップで有名なトランプ。性能はもちろんのこと、スタイルの良さも人気の秘密。バッフルを変更することで音量調整が可能。

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    モーターステージ

    スポーツスターマフラーの定番「ブラスマフラー」は常にリプレイスマフラーの上位にある。真鍮製のサイレンサーから奏でられる音は素晴らしい。排気口径を選ぶことで音量を抑えることが可能。

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    イーストアーバン

    スポーツスターカスタムの重鎮の1つイーストアーバンのマフラーはクラシックなスポーツスターのテイストが漂う。コンパクトな車両にはイーストアーバンのショーティマフラーが良く似合う。

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    デイトナ

    大手メーカーの製品だけあって、ジェントルで質感のいいサウンドを奏でてくれる。車検対応で安心してマフラーカスタムが楽しめるのが嬉しい。シンプルなデザインはどんなカスタムにも合う。

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    BURN-HD SPORTS!

    スポーツスターのプロフェッショナルショップのオリジナルチタンマフラー。エンジンポテンシャルを引き出すのに最適なマフラーで、最新のXR1200用のラインナップも用意されている。

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    BLACK CHROME BIKE WORKS

    スポーツスターのカスタム、チューニングに長けたショップ。シンプルながら個性溢れるストレートコレクターやMXレーサー風のマフラーなどを販売。ワンオフ製作も得意としている。

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    イージーライダース

    リッチプロダクツ製マフラーの取り扱いも行っているが、かつてのXLCRのマフラーをモチーフにした左右2本出しマフラーなどもラインナップしており、個性的なカスタムには外せない。

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    VANCE & HINES

    本国では定番のマフラーメーカー。メッキの質感の高さやヒートガードを標準装備しているなど、作り込みの丁寧さが人気の秘密。ドラッグパイプ以外にもスポーツ走行に適したプロパイプなどがある。

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    Khrome Werks

    現行スポーツスターのオーナーから支持が高いメーカー。スラッシュカットタイプや純正と同様のテーパードタイプがある。インジェクションチューンを行った車両にココを薦めるショップは多い。

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