



FLHX ストリートグライド。2006年にハーレーのラインナップに登場し、人気の秘密だ。大柄で重厚なモデルが中心のツーリングファミリーの中で、シンプルな装備ながらツーリングも快適にこなすバランスの良さが人気を集めている。登場して間もないこのモデルだが、2007年、2008年モデルと年々進化を遂げてきた。2007年モデルからは1584ccのTC96エンジンが載せられ、ギアは6速ミッション化。2008年モデルからはタンク容量の増加やABS採用などブレーキシステムに変更が加えられ、FLHXのポテンシャルはさらにグレードアップした。存在感のある巨体や溢れるトルク、生き物のように感じられるエンジンの鼓動から「King Of Motorcycle」と評されるハーレー。その魅力の一端をFLHXを紹介することでお伝えしたいと思う。
FLHXでもっとも特徴的なのはフロントから見た風格のあるフェアリング。他モデルと同形状なように見えるが専用設計のモノだ。フェアリングの裏側にはスピードメーター、タコメーター、電圧計、燃料計、油温計、温度計の6種類のメーターが左右対称に並ぶ。ツーリング時に本領を発揮するありがたい装備が、リアフェンダーの左右に取り付けられた大容量のハードサドルバッグ。少々の旅の荷物ならすべてをバッグ内に収納できるほどのモノだ。車載工具、防犯チェーン、レイングッズなどを入れたままでどこへでも出かけることができるため、普段から大いに役立つことだろう。日常的に多用するであろう純正オーディオはハンドル手元でボリュームなどの各種操作が可能で、よそ見をせずオーディオ操作ができるので安心。外部接続のAUX端子に携帯用音楽プレイヤーを接続すれば、車載スピーカーから好みの音楽をかけることができる。たとえ高速走行中であってもフェアリングに守られているため、スピーカーからの音ははっきりと聞こえるのが好印象だ。ひょっとしてFLHXの装備の中で一番嬉しいのは、純正オーディオかもしれない。左右のハードサドルバッグの裏にはツーリングファミリーのみが装備するエアーサスペンションが取り付けられている。路面の凸凹はシートまで伝わってくるものの、柔らかい感触のみが乗り手に伝わる。FLHXが属するツーリングファミリーは全ファミリーの中で最高峰の装備が備えられているので、下手な社外パーツと交換する必要がないほど、上質のモノが備えられているのだ。
次に2008年モデルから新たに採用された機能について簡単に紹介しよう。まず、ツーリング時に最も恩恵を受けるのはタンク容量の増加。内部構造を変更することで、従来モデルと見た目を変えずに22.7Lもの容量を確保している。乗り方にもよるだろうが、500km近くを無給油で走破できるはずだ。そして万一のときに命を救ってくれるABSシステム。2008年モデルではツーリングファミリーとV-RODファミリーのみに採用されている新機能だが、パニックブレーキをかけてもタイヤがロックしないこの機能に救われるユーザーは少なくないはず。その他、電子制御スロットルも2008年モデルから採用され、従来のスロットルケーブルは廃止。スロットルの配線はハンドル内部に収納され、ハンドル周りがすっきりしている。
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ツインカム96 1584ccエンジン 2007年モデルから排気量が1584ccにアップされた6速ミッションのTC96エンジン。電子制御のインジェクションシステムのデータは定期的に変更され、2008年モデルでさらに熟成を深めている。 |
専用設計のフェアリング 迫力あるフロントマスクを演出するフェアリング。スモークタイプの低いウインドシールドは首から下を風から守ってくれる。ウインドシールドがもう少し高いものだったら快適か、と思うもののスタイルは秀逸。 |
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豪華装備のメーター周り スピードメーター、タコメーターはもちろん、電圧計や油圧計など充実したメーター類を装備。写真中心はオーディオ。AM/FM、CD(MP3方式対応)を楽しめ、携帯音楽プレイヤーの接続も可能。 |
長時間でも疲れないシート 肉厚で深みのあるシートのおかげで長時間のライディングでも疲労感はさほど感じない。腰の部分をシートが守る形状になっているため、特に腰回りが快適。ただシート幅があるため足つき性が若干犠牲に。 |
試乗する前にFLHXをじっくりと眺めてみた。345kgもの(乾燥)重量があるのだから小さいわけはないが、間近に見ると改めてその大きさとオーラを感じる。威圧感は感じないが、静かに身に迫ってくる迫力とでも言おうか、他のバイクではなかなか感じられない風格だ。さすがはハーレーというところか。跨ってハンドルに手を伸ばし、車輌を引き起こしてみるとズシリと手元にFLHXの重さが伝わってきた。エンジンに火を入れる前に座ったまま、FLHXの装備を確認してみるとしよう。ハンドルの前に広がるフェアリングには、左右対称に6つのメーターがまるで戦闘機のコクピットのように並ぶ。左右のサイドミラーは他モデルと違い、フェアリングとの一体型。普段見慣れないミラーだが、不思議と違和感を感じない。フェアリングに取り付けられたスモークの入ったショートスクリーンはスタイリッシュで、この小さなスクリーンがFLHXの雰囲気をクールに引き締める。シートに座り、辺りを見渡せばフロントのフェアリングとエンジンガード、リアのハードサドルバッグに体が守られ、まるで鎧を着込んだように感じられた。巨大なFLHXが万一のトラブル時もライダーを守ってくれそうな安心感がある。なるほど、これは他のモデルにはない魅力だ。
セルを回せばエンジンはグズることもなく1発で始動。2007年モデルからハーレー全モデルに採用された電子制御のインジェクションシステムのおかげで、どの季節であっても始動に苦労することはない。始動直後は少々せわしなく回っていたエンジンも、しばらくすると落ち着き、Vツイン特有の低音のサウンドを奏で始めた。さてFLHXのエンジンを味わうことにしよう。どれほど荒々しいフィーリングが襲い掛かってくるのか…慎重にスロットルを回し走り始めると、思った以上に素直。300kgを越える重い巨体がスルスルと進みはじめる。1584ccも排気量があるため、もっとパワフルに走りはじめるかと思いきや、非常に扱いやすい。ゆっくりと車の流れに乗ると停車時に感じていた重さは消えてしまった。ヒラヒラと走れるほどの軽さはないものの、思いのほか軽快な反応を示す。しばらく道を流しながら浮かんだイメージは船。クルーザーの舳先に立つ感覚は、もしかしたらこのバイクを操る感覚に似ているのかもしれない。そんなことを考えていると、まるで自分が船長になったような気になってきた。
2008年モデルで搭載されたABSは今回の試乗ではリア側しか作動させることができなかった。近年のハーレーはブレーキの制動力がしっかりとしており、ABSを作動させる前にしっかりと停まってくれるのだ。ただ、万が一のときにはパニックブレーキをかけてもタイヤがロックしない、ABSの恩恵は大きいだろう。タイヤがロックしてしまえば、これだけの巨体を押さえ込むのはきっと困難なはずだ。2008年モデルから採用された電子制御スロットル、これについては操作感に変化は感じられない。体感的なモノはなくなったものの、スロットルケーブルが無くなったことでケーブルが錆びてスロットルが重くなることはないはず。距離を重ねてもスロットルの感覚が新車当時のまま続くのは嬉しい機能だ。ABS、電子制御スロットルなど、2008年のFLHXはさらに熟成を深めている。至れり尽くせりな機能が盛りだくさんのこのモデルにオーナーは何も不満を感じることはないだろう。これからハーレーに乗る方にとっては当たり前のことになるのだろうけれど、これは旧モデルオーナーからすると非常に羨ましい装備なのだ。
ツーリングファミリーはダイナファミリーと同じく、エンジンをフレームにラバーマウントしているが、ラバーマウントがダイナは2点、ツーリングは3点と違いがある。そのため、長距離での快適さはツーリングファミリーの方に軍配が上がる。長距離を走る人にはツーリングファミリーをオススメしたい。ツーリングファミリーの中でのFLHXの特徴はウルトラなどのモデルに比べ、スタイルがすっきりとしていること。風防はウルトラなどに負けないモノをもっていながら、全体的にシンプルなデザインなのが若い方から人気。もちろん、シンプルと言っても機能に何も不足はない。巨体に見合わない走りを見せながらも、オーディオから収納力のあるハードサドルバッグまでを備え、バランスの良さは抜群だ。30種類もあるハーレーのラインナップの中で、もっともバランスが優れたモデルと言っても過言ではない。
FLHXを選ぶお客さんは他のモデルと悩まない方が多いです。FLTRを選ぶお客さんもそうですが、最初から「これ!」と決めて来店されますね。購入される方の年齢層が他のツアラーモデルより低いのも特徴的です。ウルトラはツアーパックやローフェアリングなど豪華な装備がさらについていますが「あんまり豪華すぎるのはちょっと…」というお客さんには“これしかない!”モデルなのでしょう。最近はツーリングファミリーにもこういったスタイリッシュなモデルが増えてきて、ツアラーに注目する人が増えてきています。見た目の印象で「重い、コーナーではきっと乗りにくい」と勘違いしている人がいるかもしれませんが、実はツアラーはコーナーが続く道でもそこそこのスピードで走ることができます。FLHXがどこまで走るバイクなのか、是非試乗してみてください。
納車の際によくオーダーをいただくパーツは…実用的なパーツが多いですね。人気のパーツはサドルバッグガード。万が一の転倒の際にハードサドルバッグに傷が入らず、乗り始めの頃はコレがあれば安心です。あとはスタンドのエクステンションくらい。もともとスッキリしていてカッコいい車輌ですから、触るところはあまりないんですよ。
2008年モデルから採用された電子制御スロットルは、操作してみて違いを感じるものではありません。ただ、従来モデルだとスロットルワイヤーが錆びて交換するとなるとそれなりの金額がかかっていましたが、このスロットルはよほどのことがない限り、交換する必要はありません。これは嬉しい点でしょう。あと、あまり知られていませんが、2008年モデルからローターがフローティングローターに変更されています。このローターに変更されたことで、ブレーキかけたときにブレーキが鳴きづらくなりました。この他、エンジンマウント位置が一部変更されるなど、細かなところに仕様変更が加えられています。2007年モデルもTC96エンジンが採用するなど、大きな変化がありましたが、2008年モデルはさらに良くなっていますよ。

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バックギアはかなり便利です 2008年式FLHX 和歌山県/平松さん 以前はエボのファットボーイに乗っていたのですが、結婚を機にしばらくハーレーを離れていて、昨年末にFLHXでハーレーに戻ってきました。エボに比べるとミッションの入り方がよくなり、乗りやすくなった気がします。取り回しは特に重いとは思わなかったのですが、自宅の駐車スペースの関係でバックギアをつけました。これはかなり便利で、出先でも頻繁に使っています。シートをK&Hにしたのは足つきもありますが、ブレーキの踏みにくさを解消するためです。座るポジションが少し前になるので、このシートにしてからかなり乗りやすくなりました。今の仕様で充分満足で、スタイルを触りたいと思いませんね。 |
[1]標準装備のオーディオがお気に入り。晴れた日に海岸線で音楽を聴きながら流すと最高だとか。[2]ツーリング時には重宝するハードサドルバッグ。左右の容量で荷物がスッポリ収まる。[3]K&H製ソロシート。足つきがよくなり、ブレーキペダルも踏みやすくなった。[4]自宅でも出先でも重宝しているマンバ製リバースギア。 |

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チョイ乗りだってOKなツアラー 2008年式FLHX 東京都/戸田さん 昨年12月に購入して、まだ1000kmほどしか走っていません。前はスポーツスターに乗っていたんですが、歳をとったせいか長距離を走ると疲れるようになっていました。それで「いつかは…」と思っていたFLHXに乗り換えることにしたんです。ロードキングと少しだけ迷いましたが、自分の中でのハーレーの頂点はFLHXだったんです。ウルトラほど重くはなく、チョイ乗りするのもFLHXでなら苦じゃないですから。買ってから驚いたのはブレーキ。純正がブレンボ製に変わったせいか、予想以上にコントローラブルですね。何度かパニックブレーキを経験しましたが、ABSのおかげで安心して走れます。 |
[1]HD純正のLEDテールライト。見た目もよく、後方からの視認性も◎。[2]クリアキン製ショートアンテナ。カバーをかけるときもアンテナを曲げる必要がなく、便利。[3]ヘッドライト裏にスペースがあり、HIDヘッドライトに交換。[4]マフラーは北米用の純正マフラーに交換。ノーマルながらやや迫力のあるサウンドに。 |
FLHX
ストリートグライド
■サイズ=全長2400mm×全幅970mm×全高1320mm
■ホイールベース=1610mm
■最低地上高=119mm ■加重時シート高=668mm
■タンク容量=22.7L
■エンジン=TWIN CAM 96 1584cc
■価格=264万4000円(モノトーン)、272万0000円(105周年記念カラー)
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