「大陸横断バイク」というコンセプトのもと、ハーレーダビッドソンが長い月日をかけてバージョンアップをしてきた象徴的ファミリー。アメリカ人によるアメリカ人のためのメガクルーザーは、やがて”世界の人々のためのハーレー”としてさらなる進化を遂げている。
バイクに詳しくない人が見ても「あ、ハーレーだ!」と納得させてしまう圧倒的な存在感の持ち主、それがツーリングファミリーのモデルです。コンセプトは「アメリカという広大な国土を走破できる大陸横断バイクの開発」で、日本の約25倍というスケール感を思うと、この巨躯にも納得してしまうところ。
ナックルヘッド、パンヘッドといった当時の最新エンジンでも長距離航続ができるようなモデルが開発されてきましたが、ひとつの分岐点となったのが1958年のこと。それまで代々受け継がれてきたリジッドフレームから油圧ツインショック式フレームのFLH デュオグライドが誕生したのです。これは1952年に登場したスポーツスターの始祖モデルKのツインショック式を取り入れ、より快適なライディングを実現しようという狙いからで、このデュオグライドこそがツーリングファミリーの原点。ちなみにリジッドフレームのスタイルは現在、ソフテイルファミリーとして継承されています。
その後、1965年に登場したセルモーター搭載のエレクトラグライドはそのエンジンをショベルヘッドへと移行し、年を追うごとに長距離航続に必要な積載能力を高めるなど、現代のウルトラにつながる進化を遂げていきました。1980年には現在のFLTRU ロードグライドウルトラの原点であるデュアルヘッドライトデザインのツアラーFLT ツーリンググライドが登場。その後、エンジンをエボリューション、ツインカムと進化させてきましたが、そのツインカムエンジンも2000年初頭には排気量1,449ccの「ツインカム88」だったものが、今では排気量1,689cc/ツインカム103がスタンダードに。
さらにハーレー創業110周年となる2013年から始まった「プロジェクト ラッシュモア」により、そのハイパワーエンジンを効率的に活用するため、水冷機能を搭載した「ツインクールド ツインカムエンジン」がウルトラを始めとする一部のモデルにも採用。高剛性フレームや前後連動型の最新式ブレーキングシステムが取り入れられるなど、“アメリカ人のための”から“世界中の人々のための”メガクルーザーへとバージョンアップを果たしました。
そしてツインカムのデビューから数えて18年経つ2017年モデルで、ついにハーレーのエンジンが新型化。カンパニーの本拠地であり創業の地でもある地名が冠されたニューエンジン「ミルウォーキーエイト107(1,745cc)」がツーリングモデルすべてに搭載され、これまで大陸横断バイクの開発に勤しんできたハーレーダビッドソンが、また新たな旅の答えを示す形となりました。さらに全く新しいフロント&リアサスペンションのコンポーネントが、全てのツーリングファミリーに搭載され、快適性、操作性、パフォーマンスを高めています。
ハーレーダビッドソンのスタイルを模した国産モデルを「アメリカン」と呼びますが、ツーリングファミリーの各モデルはそんなカテゴライズをも超越した、アメリカそのものを感じさせるメガクルーザーばかり。ノスタルジックな雰囲気を楽しませるロードキング、独特のフェアリングとともに快適な旅を約束するロードグライド、伝統のヤッコカウルに最高峰の装備を与えたウルトラ、そのウルトラからあえて装備を取り外してバガースタイルを目指すストリートグライドと、いずれもオーナーの嗜好を汲み取った個性豊かなラインナップになっています。
ウルトラリミテッドやロードグライドウルトラは、空冷機能を備えた「ツインクールド ミルウォーキーエイト 107(1,745cc)」を搭載していることから、ロードキングやストリートグライド以上に快適なハイウェイクルージングを存分に楽しませてくれ、さらにパッセンジャーへの安心感と圧倒的な積載能力など、最強の旅バイクという称号がふさわしい性能を持ち合わせています。
一方でいずれも400キロオーバーの超重量級バイクでもあるので、その取り回しにはなかなか骨が折れるものです。その点でいうと、ロードキングはウルトラほどの積載能力はないものの、約370キロという重量&ロースタイルであることから、比較的取り回しやすい仕様になっています。「旅を楽しむ」という共通点を理解しつつ、自身のライフスタイルに合ったモデル選びが大切になってきますね。
特異なモデルであるストリートグライドは、よく「ウルトラの装備を外して計量にした廉価版モデル」と見られがちですが、それはカンパニーが意図したところではありません。これはアメリカで人気のカスタムスタイル「バガー」向けに、最適なベースモデルとしてカンパニーが再設計したストリートバイクなのです。
日本人にとってストリートバイクと言えば、代表的なところではヤマハSR400、ハーレーならストリート750やスポーツスターといったところで、「こんなビッグバイクで街中を走るのか!?」と驚きを隠せませんが、実際にアメリカではそんなカスタムカルチャーが根付いています。ストリートグライドは、あえてそんなアメリカンなバイクライフを楽しんでみたいという人にはうってつけと言えるでしょう。
2015年には「より乗りやすいウルトラを」という観点から、ローダウンモデルとなるFLHTCUL TC エレクトラグライド ウルトラクラシック ローにFLHTKL TC ウルトラリミテッド ローという2モデルが登場し、身長の低い人や女性ライダーにとって優しいウルトラがラインナップされました。2017年に登場した新型ビッグツインエンジン「ミルウォーキーエイト 107」を搭載したモデルはFLHR、FLTRXS、FLHXSの3機種。「ツインクールド ミルウォーキーエイト 107」を搭載しているのはFLTRU、FLHTK、FLHTKLの3機種となっています。