スポーツスターの走行性能をビッグツインに取り込んだスタイルでハーレーの中でも高い人気を誇るダイナ。その総合力の高さについて学んでみよう。
現在ハーレーのファミリー別人気を見てみると、ダイナファミリーはかなり上位に位置していることが伺えます。その人気の秘訣をひとつずつ紐解いていきましょう。
ハーレーダビッドソンの歴史において、ダイナのスタイルが初めて世に登場したのは1971年、FX スーパーグライドからですね。それまでのハーレーは、現在のツーリングファミリー系をはじめとするビッグツインと、スポーツスターという2つのカテゴリから成っていました。このスーパーグライドを生み出したのが、創業者ウィリアム・A・ダビッドソンの孫であるウィリアム・G・ダビッドソン、通称”ウィリーG”です。デザイン重役担当という役職に就いた彼は、大排気量が魅力のビッグツインにスポーツスターの高い走行性能を組み合わせるという、当時としては斬新なアイデアでスーパーグライドを開発しました。現在のファクトリーカスタムに属するモデルとして見られていたようです。
このダイナ系モデルが生まれるにあたって一番大きなポイントとなったのが、CADというコンピュータによる設計システムの導入です。これにより、従来の概念を飛び越えたモダンなフレーム「ダイナフレーム」の開発に成功し、現代に通じる近代的なスタイルの構築と、アナログ感覚からの脱却を成し遂げたのでしょう。もちろん、いきなりこのスタイルが一般的に受け入れられたかと言えばそうでもなく、当時としては斬新過ぎたとも言えるハーレー版カフェレーサーのXLCR(1977年)など、ウィリーG自身も試行錯誤を重ねました。
そして1977年、現在のダイナのあり方を決定付けるモデルが登場します。それがFXS ローライダーです。そう、FXDL ダイナ ローライダーのオリジナルモデルですね。爆発的な人気を博したローライダーは、ハーレーの歴史上でも指折りの名車に数えられるまでになり、このモデルこそがダイナの礎となっていったのです。
さて、ここまでダイナ誕生の歴史をお話しましたが、他のファミリーと比べたときにダイナにはどんな良さがあるのでしょうか。最大の特徴をひとことで言わせてもらえば、「あらゆる面における総合力の高さ」です。ギア比や重さなど、全体的なバランスが一番いいカテゴリだと言えます。そこにビッグツインならではの乗り味の良さが加わり、ハーレーに乗る楽しさを体感させてくれます。中でも走行性能に秀でたモデルとして、FXDF ファットボブ を推します。一見すると、奇抜とも言えるデュアルヘッドライトに目がいってしまいますが、ほかのダイナモデルと違い、16インチホイールにダブルディスクブレーキを搭載するなど、バランスのいい走行性能を持っています。ダイナの中でもっとも安定感に秀でていると言えますね。
カスタムベースとして見ると、実はダイナは「カスタムしにくい」モデルだと思います。なぜかと言うと、ベーシックな部分がきっちり固まった完成度の高いバイクなので、中途半端なカスタムをしてもダイナ本来のスタイルまで変えることができないのです。逆に言えば、「ダイナは、どれだけ手をかけてもダイナ」ということになります。ダイナ本来のスタイルが気に入っている方には、うってつけのモデルと言えるでしょう。
続いて今一度、ダイナの走行性能についてお話しします。なぜこの話題を繰り返すのかというと、日本の道路事情に理由があるからなのです。ストレートな道が続くアメリカと違い、入り組んだ道が多い日本ではこまめにミッションチェンジする必要がありますよね。
そんなとき、ビッグツインながらバランスよく取り回せるダイナが威力を発揮するのです。もちろんツーリングなのかシティユースなのか、オーナーさんがどのようなハーレーライフを望むかによってオススメするモデルは異なるのですが、ダイナはハーレーのラインナップにおいて、あらゆるシチュエーションに対応できる万能型モデルを有したファミリーなのです。
1971年のFXスーパーグライドの誕生から数えて四半世紀を超えるダイナファミリーですが、ついに2017年式全モデルのエンジンがツインカム96(排気量1,584cc)からツインカム103(排気量1,690cc)へとスープアップされ、よりパワフルなビッグスポーツモデルに生まれ変わりました。人気の顔ぶれが揃い、より熟成度を高めてきた感すら漂うダイナのモデル群は、カスタムというエッセンスを加えることでよりソリッドなキャラクターへと進化する魅力が秘められています。
スポーツスターと並んで、「オートバイらしいオートバイ」としてのベースを持つダイナファミリー。特に40代から上の世代の方々が思い浮かべるオートバイとしてのイメージを踏襲していると言えます。しかしダイナは、見た目の良さに留まらない魅力を持っているので、購入を検討している方はぜひお近くのディーラーでいろんなモデルを乗り比べてみてください。
1963年生まれ。H-Dプラザ伊丹からハーレーダビッドソン高知へ移ったフロントマンで、長年に渡るディーラー勤務で培った豊富な経験と歯に着ぬ着せぬ独特のキャラクターから、慕って訪れるオーナーも多いと言われる人物。新旧ハーレーについて詳しい知識を持っていることから、カスタムセンスにも長けている。