VIRGIN HARLEY | XL1200CX ロードスター 試乗インプレ

XL1200CX ロードスターの画像
HARLEY-DAVIDSON XL1200CX(2016)

XL1200CX ロードスター

伝統のDNAを随所に感じさせる
ハーレー版ネオカフェレーサー

誰もが予想だにしなかったタイミング、そして予想だにしなかったタイプのモデルが投じられた。かつてラインナップに並んだロードスポーツモデル XL1200Rを思い起こさせるニュースポーツスター「XL1200CX ロードスター」は、ローダウンモデルが揃うスポーツスターファミリーにおいて唯一前後サスペンションが伸ばされたスポーツバイクであり、さらに個性的なディテールが随所に垣間見える。もはやブランニューとも言うべきロードスター、その能力とライドフィールはいかほどのものなのか。2016年4月末、フランス・マルセイユで各国メディアを招いてのロードスター試乗会が開催され、一足先に乗ってくることができた。そこで感じた同モデルの魅力を余すところなくお伝えしよう。

XL1200CX ロードスターの特徴

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XR1200を超えるエンジン性能
歴史の1ページも垣間見える一台

現行ラバーマウント スポーツスターの排気量1,201cc エボリューションエンジンとフレームをベースに、専用設計とされる43mm倒立フロントフォーク、コンチ型のローライズハンドルバー、デジタル速度計内臓の専用メーター、ガンファイターシート、専用エキゾースト、プレミアムライド・エマルジョンサスペンション、フロント19/リア18インチという新設計ホイール、ダンロップ製ラジアルタイヤGT502などを採用したこのXL1200CX ロードスターは、これまでにない真新しいストリートスポーツモデルである。

開発コンセプトは「カフェレーサー」。ダークカスタムというテーマを与えられたXLシリーズとして見るならば、ストリート750の源流と言われる元祖ハーレーカフェレーサー XLCR(1977 – 1979)に近しいイメージのマシンと言える。今回フランスでの試乗会イベントで、実際にハーレー本社のテクニカルディレクターに話を聞くことができたのだが、「ロードスターの開発は何年前から?」という質問には「皆さんの想像にお任せします」とはぐらかされてしまった。推測の域を出ないが、少なくとも本国ラインナップからXL883Rがラインナップ落ちした2014年以前から開発プロジェクトが生まれていたことは間違いあるまい。

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同ディレクター曰く、ライバルモデルは独BMW MotorradのR nineT、そして伊ドゥカティ スクランブラーだという。おそらくここには、ヤマハ XSR900や英トライアンフの新型スラクストンなども含まれることだろう。ロードスターは、いわゆる現代のバイクブームの中心にあるカテゴリー「ネオクラシック」へアプローチするための急先鋒と言える。スポーツスターらしさという点では従来の39mmテレスコピックフォークをシングルカートリッジ式プレミアムサスペンション搭載型にするという案が浮かびそうなものだが、そこにより高いパフォーマンスを引き出すことを目的とした43mm倒立フォークを採用したところに、ハーレーの狙いが垣間見える。

興味深いのは、そのホイールサイズだ。従来のスポーツスターならば、フロント19/リア16インチとなるところを、フロント19/リア18インチと、より大きなサイズに変えてきた。新設計ホイールのために製造ラインを作るというのは、当然従来モデルよりも開発費用がかかってしまう。そこまでしてリア18化を押し通した理由は何だったのか。

ロードスターのデザインを手がけたハーレー本社のインダストリアルデザイナー ベン・マクギネリー氏に聞くと、「カフェレーサーというコンセプトに基づいてデザインをした結果、リアが18インチ化した方がよりスタイリッシュだった」ということだった。「カフェレーサーというならば、トライアンフのビンテージバイクがそうであるように前後18インチという選択肢もあったのでは?」という疑問もぶつけてみたが、日頃からスポーツスターを愛車とするマクギネリー氏には、フロント19/リア18というホイールサイズがもっとも美しく見えたのだという。

スポーツスターのホイールサイズ遍歴については、調べてみると面白いことが発見できる。かつて「ロードスター」を名乗った「1979 XLS」というモデルが存在したのだが、なんとこのマシンは、1960 XLCHから続いてきたフロント19/リア18からフロント19/リア16に切り替わった、スポーツスターにとってターニングポイントとなったバイクなのだ。つまり、「ロードスター」の名称が復活するとともに、再びスポーツスターのリアホイールが18インチ化したわけだ。この一面を意図した開発とネーミングかどうかは定かではないが、ここに何か奇妙な縁を感じずにはいられない。

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奇しくも歴史の分岐点ともなった新型ロードスターは、XL1200X フォーティーエイトやXL1200V セブンティーツーと同じ排気量1,201cc エボリューションエンジンを搭載しているが、その性能を最大限に引き出す特別なセッティングとされている。最大トルクは101Nm / 4,250rpmと、従来モデル(87Nm / 3,500rpm)の比ではない。さらに言えば、歴代最高の能力を持つと言われる高性能スポーツスターXR1200(2009 – 2011)の値(91Nm / 3,500rpm)をも上回っているのだ。数値だけ見れば、文句なしのナンバーワン スポーツスターと言っていい。

また、このロードスターは全世界共通の排ガス規制基準となる「EURO4」対応モデルとなっており、マフラーはもちろんのこと、マフラー音の制御を目的に標準装備となっていた日本仕様のスプロケットも本国モデルと同じU.S.スプロケットとなることに。これでフューエルインジェクションのセッティングも本国と同じ仕様となれば、これまでパワー制御を余儀なくされてきた日本でも、そのエンジンパフォーマンスを余すところなく堪能できるのだ。

スポーツスターでよりハイエンドなスポーツライドを楽しむための設計とされるXL1200CX ロードスター。実際のパフォーマンスについて、試乗で体感した感想をお伝えしよう。

XL1200CX ロードスターの試乗インプレッション

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ステップワークの重要性を教えてくれる
ライディングプレジャーをかき立てるマシン

フロントに43mm倒立フロントフォーク、そしてリアにプレミアムサスペンションと、これまでにないほどフットワークに重点を置いたスポーツスターとして登場したXL1200CX ロードスター。しかしことスポーツスターに関しては、2004年のフルモデルチェンジ以降、同じエンジンとフレーム、スイングアームを使い続けているということもあり、これを機に大幅にフルモデルチェンジを行なっても良かったのでは?と思うフシもあった。ツインカムはもちろん、ストリート750でさえ6速ミッションなのに、スポーツスターが未だ5速ミッションのままという点からも、後付け感が否めないマシンだった。

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またがってみた印象は、身長174cmの私ではベタ足ながら、XL883N アイアンなどと比べると着座位置が高く思える。それもそのはず、リアホイールが18インチ化しているのだ、径が大きくなればその分高さも増す。そうしてまたがったままハンドルに手を置くと、見た目以上にグリップ部分が下を向いたコンチバーであることに気づかされる。結果、ここ数年のスポーツスターには見られないような前屈気味のポジションとなる。XL883Rと比較してみても、ワイドながらアップハンドルでリアが16インチの同モデルとは比べるべくもない、レーシーなライディングフォームだ。

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XL1200CX ロードスターとXL883N アイアンのライディングフォームを比較してみよう。リアが18インチ化していることから、背筋を伸ばしつつシートにずっしり座り込むアイアンに対し、ロードスターのそれは前屈姿勢になっている。

そのままスロットルを捻って走り出すと、これまでのスポーツスターでは感じたことがないほど気持ちよくエンジンがよく回る。この回り方の要因は、エンジンそのもののスペックによるものか、それともインジェクションチューンによるものか……。比較するには、日本仕様のXL1200CX ロードスターに乗ってみるほかないが、どちらが要因にせよ、改めてインジェクションチューンを施してやれば他の1200モデルよりもはるかに高いパフォーマンスを発揮することは間違いない。

南フランスの港町マルセイユから、同じく地中海に面したリゾート地サントロペまで、167kmにおよぶ試乗ルートは、市街地を飛び出すともにワインディングへと突入。日本ではまず考えられないハイスピードでのライディングが始まったなかで、序盤はこのXL1200CX ロードスターにどう乗ってやればいいか、戸惑うばかりだった。というのも、尻上がりなポジションにまかせてハンドルに荷重してしまうと、ハンドルを押さえ込むような格好になり、せっかくの倒立フロントフォークに必要以上の負荷がかかって、本来持っている性能を発揮できないでいたからだ。

いろいろと探りながら乗っていて、たどり着いたのが「オートバイを操作するうえでの基本動作」だった。バイクは曲がらせるものではなく、倒し込ませることで曲がっていくもの。そのためには力づくでハンドル操作をするのではなく、ステップに荷重をかけてバイクをイン側にバンクさせ、自分が行きたい方向をハンドルで指し示してやって、シャープに走り抜ける。

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その基本的な手順にもとづいて操作してやると、それまでとはまるで別人のようなパフォーマンスを発揮するようになった。コーナー侵入前にブレーキングをしつつコースを見定め、自分のラインが決まったらそれに沿ってイン側のステップ荷重&体重移動でバイクを寝かせ、さらにハンドルをイン側に引っ張って倒し込む動きをサポートする。そしてその動きにあわせてスロットルを捻って加速、すると不必要に荷重がかからない倒立フォークは滑らかな動きを見せた。馬力のあるエンジンのパワーを最大限に発揮し、ラジアルタイヤGT502を力強くグリップさせて、その爆発力で一気に駆け抜けるーー。ダブルディスク仕様フロントブレーキのストッピングパワーは絶大だが、こちらはあくまでエマージェンシーとして使うにとどめ、なるべくフットブレーキのみでスピード調整を行おう。これもまた、倒立フォークの動きを活かすために必要なファクターだ。

すべての動作がハマったとき、今までのラバーマウント スポーツスターでは感じたことのないライディングプレジャーが全身を駆け巡った。間違いなく、歴代最高の性能を持ったスポーツスターであり、かといって上級者モデルなどではなく、むしろビギナーに基礎的なライディングの重要性を説いてくれる懐の深いマシンだ。

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ロードスターの操り方を習得していけば、中低速での走行を強いられる市街地ランでも十分活かせる。しっかりとステップを踏みつけ、シートに着座する臀部とのトライアングルで下半身とバイクを一体化させることで車体が安定する。これによってストップ&ゴーが多い市街地でもバランスを保て、2速パーシャルで流しながらクイックに操れるようになる。ニーグリップができれば言うことがないのだが、やや上目にマウントされるスポーツスタータンクを膝でホールドするのは至難の業だ。ニーグリップを可能にする社外パーツを取り入れるか、このトライアングルでバイクを操る術を身につけるかのいずれかで対応されたし。

と、かなりの高評価なXL1200CX ロードスターだが、決して他メーカーの同カテゴリーに匹敵する性能を有しているかと言われると、まだ足りない部分は確かにある。ライバルモデルと乗り比べれば、そちらの方が高いライディングパフォーマンスを示すことは想像に難くない。しかし、ロードスターは「ハーレーダビッドソンとしてのカフェレーサーなのだ」という意思を随所で示している。その最たる部位が、やはりステップなのだ。

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「カフェレーサーというのであれば、バックステップでは?」と思うところでの、従来のミッドコントロール仕様のステップ採用。これはXL883RやXL1200Rなどと同じく、その設置箇所もやや低めで、かなり外に突き出したポジションになっている。ここが長く突き出ている理由は、バイクをバンクさせた際にマフラーよりも先にステップを接地させることにある。ステップが先に接地する(バンクセンサーがガリガリと削れる)ことで、セーフティロックをかけているのだ。いわゆる「寸止め」とも言えるもので、メーカーが手がけるバイクとしての安全性の確保はもちろん、スタイルこそレーシーでありながらマシンの特性を理解した上でのポジショニングにとどめているわけだ。「スポーツスターとしてはトップクラスだが、ライバルモデルと張り合えるほどではない。あくまでハーレーとしてのライディングプレジャーをめいっぱい楽しんでほしい」というカンパニーのメッセージが感じ取れる。

しかしながら同モデルのオーナーとなれば、身体に馴染んでくるうちに物足りなさも覚えてこよう。なぜならば、もう一段階上のパフォーマンスを秘めていることを随所で感じさせてくるバイクだからだ。とすると、「ステップは短めに……いや、バックステップ?」、「とすると、地面で擦らないようにマフラーはアップタイプを?」、「自由に体重移動できるシートに換えてみたい」、「何より、259kgという車重を少しでも軽くしたい」と、自分の身体や走り方に合わせたカスタムイメージがどんどん沸き上がってくる。「自分だけの特別な一台を手に入れるためのブラックキャンバス」というハーレーダビッドソンのダークカスタムというテーマにおける基本コンセプトが、頭をよぎった。

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スポーツスターとしての性能は随一。XL1200X フォーティーエイトやXL1200V セブンティーツーよりも高価なモデルだが、そのキャラクターとパフォーマンスを体感すれば、誰もが納得する価格設定だろう。彼の意図するところを汲み取れないとそっぽを向かれてしまうが、走りながら語り合い、そして理解したうえで正しい操作を入力してやると、期待以上のパフォーマンスで応えてくれる。ひと昔前のじゃじゃ馬バイクのようであり、操りきれれば高性能バイクでは得られないライディングプレジャーを存分に堪能させてくれる。実にハーレーダビッドソンらしいスポーツバイクだと評したい。

XL1200CX ロードスターの詳細写真

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排気量1,201cc / 空冷4ストロークV型2気筒OHV2バルブエンジン『エボリューション』。このロードスターのみ、フォーティーエイトやセブンティーツーとは異なるハイパフォーマンスセッティングとなっている。グレーのパウダーコートが施されたエアクリーナーは、かつてラインナップされたXL1200N ナイトスターを彷彿させる。
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基本構造はVロッドのそれと同じだというプレミアムライド・カートリッジ式 43mm倒立フロントフォーク。トリプルツリー、フロントフェンダーとも専用設計に。ナローなスポーツスターのイメージを払拭するマッシブなスタイルが印象的だ。
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真横から見ると両サイドが下向きになっているコンチ型のローライズハンドルバー。インチ仕様ながら、グリップは2016年以降標準となっている細身のタイプに。
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ハーレー純正P&Aにラインナップされるデジタルメーターを土台とするロードスター専用のメーター。フォーティーエイトと同タイプのライザーを採用していることから、その向きはフラットでかなり見づらい。カフェレーサーを謳うなら、メーターはライダーに対して向いていて欲しいところ。社外パーツメーカーの開発に期待したい。
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XL883N アイアンと同じくスポーツスターの代名詞たる容量12.5リットルのフューエルタンク。
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カラーリングはビビッドブラック(左上/154万円)、ベロシティレッドサングロ(右上/156万2,000円)、ブラックデニム(左下/156万2,000円)、ビレットシルバー / ビビッドブラック(右下/158万4000円)の4色が用意されている。
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カフェレーサーらしいガンファイター型のツーアップシート。着座位置が固定されてしまうタイプなので、オーナーの体格によっては体重移動のしやすいシートに交換するのもテだろう。
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歴代スポーツスターのなかで、もっともショート化された新ボブフェンダー。ラインこそスポーツスターらしく丸みを帯びているが、水平に突き出たナンバーマウントのデザインからレーシーな雰囲気を持つように。
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ウインカー一体型テールランプを採用、そしてステーは新型に。これによって、これまで標準装備だったストラットフェンダーカバーが取り外され、軽量化&ネイキッド感が高まった。
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XL883RやXL1200Rと同じく、長く突き出たミッドコントロールステップ。その長さは、マフラーが地面に接地する前に警告を発するという、必要にして十分なバンク角を確保することを意味している。
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フロントは2ピース型のダブルディスク仕様に。そのストッピングパワーは申し分なく、標準装備されるABS機能も実に動きが滑らかなので、急なブレーキングを要するときでも無断のない制動力でライダーを守ってくれるだろう。
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EURO4対応型となった専用設計のショットガンマフラー。十分すぎるほどエンジン性能を引き出せてはいるが、さらに高いパフォーマンスを引き出せる可能性も感じさせる、悩ましい部位でもある。
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そのEURO4対応によって、これまで標準装備とされてきた倍近い重量の日本仕様スプロケットが、このU.S.型スプロケットで上陸することに。リアエンドのビジュアルを決定づける重要な部位だけに、新オーナーにとっては朗報?
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2016年モデルのスポーツスター全車種に標準装備されることになったプレミアムライド・エマルジョンサスペンション。オプション扱いだった340mm仕様がロードスターの走りを支える。
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1970年代以来の復活となる18インチ リアホイール。タイヤはダンロップのラジアルタイヤGT502が採用された。クラシックレーサーとしてのビジュアルはもちろん、ホイールとタイヤが抜群の相性を発揮して高い走行性能を支える。

こんな方にオススメ

スポーツスターのさらなる可能性に触れたい
ライディングの喜びを求めるジャンキーにぜひ

事前に見たスタイルと装備内容から、試乗する前までこのXL1200CX ロードスターを上級者向けモデルだと思っていた。しかし実際に乗ってみれば、バイクの基本動作を思い起こさせてくれるビギナー向けモデルでもあることを見せつけてくれた。現在、XL883N アイアンやXL1200X フォーティーエイト、ほかラバーマウント スポーツスターに乗るオーナーがこのロードスターに乗れば、「スポーツスターってこんなに面白く乗れるんだ!」と再発見できるだろう。それぐらい、オートバイを操る楽しさや喜びを呼び覚ましてくれるマシンとして仕上げられているのだ。噛めば噛むほどに味わい深くなる……なんとも奥深いロードスターにひとたび乗れば、きっとその虜となるに違いない。

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