ここVIRGIN HARLEY.comを永らく愛読されている方ならご存知だろう、サイトが立ち上がってまもない頃に「CVキャブレター講座」を連載していたメンテナンス番長ことジャイアン氏のことを。彼の愛機である4速スポーツ XLH883(1989)は映画『ブラック・レイン』に登場するXLCR風スポーツスターをインスパイアした仕様にカスタムされている。
『ブラック・レイン』に登場するスポーツスターはXLCRを模しているものの、実はかなり異なるバイクでもある。「XLCRのいいところは取り入れているけど、オートバイとしてバランスがいい『ブラック・レイン』のスタイルを踏襲したかった」(ジャイアン氏)と、XLCRだとリアホイールが18インチなのだが、あえて16インチとするなど明確なイメージをもってプロデュースされているのだ。
カスタムするうえで重視するのは、ポジション。ジャイアン氏は独自の理論を説く。
「自分が思い描く“理想のスポーツスター”というのは、手足のように動かせること。そこで重要なのは、上半身の自由度と荷重のしやすさの2点ですね。ケツ下がりで乗ると操作しづらくなるので、少し前屈気味のポジションになるよう調整したんです」
ノーマルシートよりも10センチほど高い座面にしつつも、実際に乗ってみるとニュートラルなライディングフォームになるよう組まれている。スポーツスター本来の味付けはそのままに、オーナーの好みが存分に注入されたカスタムスポーツの好例とも言える一台なのだ。
「何もしてくれないバイクだから、しっかり操作してやればダイレクトに応えてくれる。それがスポーツスターの面白さ」というジャイアン氏。“日本のエッセンスが取り入れられたことで味わい深さを増した”という点で言えば、松田優作や高倉健が躍動した『ブラック・レイン』に通ずるところを感じずにはいられない。