

開発チームはこのモデルを、クルーザーポートフォリオにおける「黒い羊」と呼ぶ。その由来は、サウスダコタ州スタージスに隣接する町デッドウッドだ。
1947年、400人以上のライダーがブラックヒルズの峠道をツーリングし、スピアフィッシュ、リード、そしてデッドウッドの町々を訪れたという史実に基づいている。
このツーリングイベントこそ現在のスタージス・モーターサイクル・ラリーの原点であり、80年近い時を経て、その発祥の地の名を冠したモデルが誕生したことになる。

当時、大量に払い下げられたWLAなどの軍用放出車を、帰還兵たちが自らの手で軽量化・簡素化していったことが、ボバーカスタムの源流とされる。
ハーレーダビッドソン デザイン責任者ビョルン・シュスター氏は、「終戦直後、多くの帰還兵が興奮と自由を求めてハーレーに跨った。当時、削ぎ落とされた戦時放出ハーレーの走りに匹敵する乗り物はほとんどなかった」と語る。
あの時代のカスタム精神と自己表現を、そのままデザインの核心に据えたという狙いだ。タンクに描かれたグラフィックにも、デッドウッドという土地が持つ西部劇的な視覚言語が反映されている。

ベースとなっているのはソフテイル系のヘリテージ・クラシックで、サドルバッグを取り払い、ヴィンテージ・ハードテールを思わせる後部フェンダー周りを露出させた構成だ。
パワートレイン、マフラー、ハンドルとリアフェンダーステー、フォークカバー、ヘッドランプバケットに至るまで深い黒で統一し、Vツインの造形だけを際立たせるためロッカーカバー下部とプッシュロッドチューブのみクロームを残している。

デニムブラックに塗られた5ガロンタンクに、タックロールのソロシート、着座高25.5インチという2026年モデル中でも屈指の低さも相まって、ソリッドで無骨な一台に仕上がった。
フロントは49mmデュアルベンディングバルブフォーク、ブレーキはフロント300mm/リア292mmシングルディスク、タイヤはダンロップのハーレーダビッドソン専用サイズ(前100/90B19、後150/80B16)を組む。

心臓部はミルウォーキーエイト117クラシック(1,923cc、120lb-ft/98hp)で、フラットなトルクカーブによる扱いやすさを重視したチューニングとされる。
一方で、コーナリング対応のABS・TCS・DSCS、タイヤ空気圧監視、ロード/スポーツ/レインの3ライドモードなど電子制御パッケージは最新世代のものを備え、見た目はヴィンテージ、中身はモダンという二面性を持つ一台だ。

デッドウッドは、既存プラットフォームを流用し、名前と外装だけを変えて投入するという手法自体は目新しいものではなく、海外メディアの一部からは「サドルバッグを外しただけのヘリテージ・クラシック」という辛口な評も出ている。
これを過去のモデルやサブカルチャーからインスピレーションを得た派生モデル群、いわゆる「アイコン・コレクション」的な位置付けとして捉えているのである。

実はデッドウッドに先立ち、同じくミッドイヤーの追加モデルとしてスーパーグライドがすでに発表されている。
既存資産の組み替えによって年央にも継続的に話題を投下していくという、新CEOアーティ・スターズ氏の「バック・トゥ・ザ・ブリックス」戦略が、この2台の市場投入からも見える。
米国・カナダ限定発売であり日本導入は今のところ未定だが、既存モデルの資産をどう再編集し、ブランドの求心力へとつなげていくのか、その手法を占う一台として注視する価値がある。

このデッドウッドはスタージス・モーターサイクル・ラリー会場でのハーレーダビッドソン本部アクティベーションにて本公開され、その注目度はかなり高いものだった。
なお、スーパーグライドについては、稿を改めて詳しくお伝えする予定なのでそちらも楽しみにしてほしい。