VIRGIN HARLEY |  USA運転免許事情芦田 剛史のUSAディーラー・トレーニングダイアリー

USA運転免許事情

  • 掲載日/ 2007年02月09日【芦田 剛史のUSAディーラー・トレーニングダイアリー】
  • 執筆/芦田 剛史
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本場ディーラーでハーレーを学ぶ USA Training Diarys 第10回

意外と知られていない
アメリカ運転免許事情

こんにちは、メカニック芦田です。
年が明け、あっという間に2月に突入してしまいましたね。私のアメリカでの研修も折り返し地点を過ぎて、以前より時が過ぎるのが早くなってきたように感じます。今更という感じになってしまいますが、これまでの1年4ヶ月がどれほど尊く、貴重な時間であったかを思い知らされています。掛け替えの無い沢山の人達との出会いと別れ、気持ちの触れ合いを重ねてきたから、このような思いを抱くのでしょう。ですから、これからの残りの時間「あの時、ああしておけば良かったなぁ」と研修が終わってから後悔しないよう、肩の力を抜きつつ全力で走り続けようと思います。限られた時間と対話するよう、丁寧に記憶に刷り込むよう、この国を発つ日まで。

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前置きと関係ないのですが、今月は「アメリカの運転免許事情」について書いてみたいと思います。私がバイクの免許を取ったのは今から11年前です、思えば随分経ちました。私の場合は免許を取る前から車やバイクに馴染みがあって、構造的にも機能的にも抵抗がなく、すんなり取れた記憶があります。16歳当時、運転免許は持ってませんでしたが、整備士資格は既に持っていたという妙な境遇にありました。16歳で既に(敷地内ですが)大型トラックを運転したこともあります(笑)。自慢になってしまいますが、運転免許取得に緊張も一切無く、車もバイクも教習所ではミスったことも無く、全ての項目を一発でクリアしています。しかし、そんな私もアメリカでの免許取得だけは少々びびってしまいました。

ペーパーテストは英語のみ
車なら日本語で受けられるのに…

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まず、アメリカのバイクの運転免許について解説したいと思います。アメリカでの“車”の免許取得に関しては多くのサイトで解説されていますが、バイクの免許解説は結構貴重かも(?)です! アメリカで運転免許を申請できる年齢は車、バイク共に一般的には16歳から。ただ、以前にもご紹介したように、アメリカは連邦制のため州ごとに州法が敷かれていますので、事情が異なる場合が多々あります。車に関して言えば16歳という年齢制限は日本に比べて緩いのですが、これはアメリカの地理的事情によるものでしょう。開発が進んでいる街では、スクールバスや日本で言う市バスが運行していますし、通勤通学にそれほど不便は無いのですが、都市部を離れると状況は一変します。何も無い所にポツンとある田舎町ともなると、学校や会社に行くまでに50マイル(約80km)走らなければならないという環境もざらにあります。私の同僚メカニックは、なんと毎日片道60マイル(約100km)通勤しているんですよ! 以前一度遊びに行きましたが、「地の果てに住んでるのか、この人?」と思ってしまいました(失礼な奴だ!)。こういったことも考慮し、アメリカ生活の要とも言える移動の手段をできるだけ取得しやすいよう、年齢制限は日本よりも若く設定されているようです。

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さて、免許の取得方法についてですが、アメリカにも教習所はあります。技術的に不安のある方は教習所で練習してから試験に臨むことが多いようですね。アメリカの教習所では AZSS 渡辺さん曰く 「Buell ブラスト(日本未発売の単気筒500ccのBuel)」を教習車として使っているのではないか? とのことです。そんなこともあるからでしょうか、今のショップではガタガタになったブラストをしょっちゅう修理しています。私の場合、教習所には行かず(貧乏なので)一発試験でこちらでの免許を取りました。カルフォルニアで取得したので、その他の州にのことは分かりませんが、免許の申請も以前説明させて頂きました“DMV(日本でいう「陸運局」です)”で申請、ペーパー試験、実技試験を行います。DMVは平日でも結構混雑しており、申請は結構待たされました。実はこのバイクのペーパーテスト、車の免許が無いと申請できなかった記憶があります。しかも3度落ちると、申請代金を払い直しということに。貧乏人の私には死活問題で、緊張してしまいました。申請を終えるとペーパー試験の受験です。ペーパー試験は25問あり、記憶が定かではありませんが、3問以上間違えると失格だったような気がします。車の免許の場合、カリフォルニア州でのペーパー試験では日本語のテストの選択ができますが、バイクの場合は英語のみ(これに泣かされました)! 根性と僅かの勉強でなんとかペーパーテストをクリアすると仮免許がもらえます。この仮免許を取得してから一定期間の間公道で走行練習し、その後実技試験を受験することになります。私の場合は、仮免許取得2日後には実技試験を申請しました。何故かというと、ちょっぴり自信があったからです(また自慢かよっ・笑)。しかし、この判断が当日の私をパニックに陥れることになろうとは…。

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実技試験はパイロン間をジグザグ運転して、サークルの中を何周か回るというものだったのですが、このパイロンの間隔がやたらと狭い! しかもパイロンの横の白線をはみ出してはいけないんだとか。サークルもやたら小さいぞ! 「おお…う、これをやるの!?」と思っている私に、超早口の試験官が僕の顔を見もせずに、試験の説明を始めました。この人の英語、早すぎて何を言ってるのかわかりません! 「落ちたら絶対皆に『え!芦田さんってバイク屋さんなんですよねぇ、なのに!?』って笑われる…」という不安との葛藤の中、無我夢中で適当に翻訳した試験内容を元に走行開始。エンストしたら試験中止、足を着いたら試験中止、パイロンに当ったら試験中止です。「Oh! 神様。これから道端でお金拾ったら交番に届けるから、通してね!」と心で祈りながら何とか死に物狂いで実技試験を突破! 終わってみれば満点で通過していました(笑)。私の後にテストしていた人は、スーパースポーツのバイクでチャレンジ(アメリカでの実技試験は本人が車両を持込んで試験を受けます)していましたが、2個目のパイロンで足を着いていました。流石のスーパーマシンも、実技試験には向きませんね。

日本とアメリカのバイク観
それはまったく違うものかも

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日本ではだいたい18~20歳を境に、それまでバイクに乗っていた若者が車の免許取得と期を合わせてバイクを卒業していくことが多いですね。この理由として、車はやはり快適で、寒さ暑さを凌げ、好きな人とのデート中の楽しい会話も途切れること無く続けられることが挙げられるでしょうか。こんな理由で「いやぁ、もうバイクはちょっとねぇ…」と若くしてバイクを降りられた方も多いでしょう。バイクに乗るということは、ある意味孤独との戦い(大袈裟!)であり、寒さ、暑さとの戦いかと。私の場合は、給料の全てをつぎ込んで、18歳当時は車1台にバイク3台を所有していました。孤高のバイク乗りを気取りつつも、ちゃっかり車のメリットも享受していたわけです(笑)。確かに、周りが皆カッコいい車に乗って綺麗な女の子を助手席に乗せて現れたりなんかすると、バイクの唸る排気音も、負け犬の何とやら状態に感じたように思えます。まぁ実際は本人の気持ち一つで、全然そんなこと無いんですが。対して「アメリカの若者はどうなのよ?」というところですが…。個人個人でよく似たような状況はあるものの、こちらバイク事情は年齢によって左右されるということはあまり顕著ではないようです。カルフォルニア、アリゾナを体験した私の私見であり、ここでもやはり州ごとの違いが出てくるかもしれません。この2州に限れば、日本との気候の違い、土地の広さ、ライダーの性別など、さまざまな視点から見てもバイクを卒業するきっかけ、もしくは理由が見当たらりません。

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私の住んでいるアリゾナは、気候面から見ても日本に比べると大変恵まれており「バイクに乗らずに何に乗る!」と言わんばかりの晴天がライダーを誘います。雨も日本に比べて圧倒的に少なく、梅雨と呼べる程の雨期は皆無です。湿度も低く、ヘルメットを被っていて蒸れるということもありません。ただ、東海岸や北部アメリカともなると気候はがらりと変わり、下手すれば日本よりバイクの使用環境が遥かに厳しい条件下の土地もあるので、そちらでのバイク事情はまた別のモノがあるでしょう。土地の広さに関して書きますと、日本ではバイクを1台買うだけで「どこに停めるか」を考えなければならないことが多々あります。 しかしこちらでは、個人差はありますがアメリカの一戸建てには巨大な庭があったりガレージがあったりと、車を保有しているからバイクの置き場所に困る…ということはまずありません。仮にガレージを持っていなかったとしても、安いレンタルガレージは数え切れない程あります。日本での定番の問題、「買って何処にしまえばいいんだ?」という問題は、こちらでは話題にのぼることもありません。そして、日本のバイク卒業時期(勝手に時期作ってどうすんだ!?)の最大の敵「彼女とのデート」、についても問題がない国なのです! 実はアメリカでは、女性ライダーの数が日本の比ではありません。男勝りな彼女たちはFLHTCU(ウルトラクラシック)に当たり前のように跨り、颯爽と走っています。アメリカで「バイクに乗る」ということは随分前から(初めから?)男性だけの物ではなかったのでは? と感じています。こうした女性のバイク好きな環境があれば、女性と一緒に走ることも珍しくはありません。エスコートされる女性陣から「え~!バイクなんてやだ~!」なんて言われることも少ないのではないのでしょうか(嫌がられても責任は取りませんが…)(笑)。

以上、今回は私の個人的な妄想話のような内容になってしまいました。こういった楽しい話題は書いていても楽しいですね、ハハ。今回の話を要約すると、バイク、乗り物全般に対するアメリカ人の意識は、日本人のそれとは全く異質なのではないかということです。日本では100%趣味とされるハーレーも、アメリカでは日常の移動手段です。電車も地下鉄も無い所では、バイクや車などの移動手段が無いということは、生活が出来ないということになるのです。サンフランシスコやニューヨークでは地下鉄や路面電車が発達していますが、そういった大都市は広いアメリカから見ると一部の恵まれた環境です。公共の交通手段が無いところがほとんどのアメリカで「バイクを卒業するかどうか」などは話題にのぼるまでもない話なのです。歳を取り、バイクの乗るのを危ないと感じればタイヤを1つ増やしてサイドカーやトライクに挑戦という定番もあります。こちらのライダーは死ぬまでバイクを卒業はすることは無さそうですね、アメリカ恐るべし。

それでは次回をお楽しみに!

プロフィール
芦田 剛史

26歳。幼少からバイクと車に興味を持ち、メカニックになることを誓う。高校中退後、四輪メカニックとして4年の経験を積み、ハーレー界に飛び込む。「HD姫路」に6年間勤務、経験と技術を積み重ねたのち「思うところがあり」渡米を決意。現在はラスベガスHDに勤務。(※プロフィールは記事掲載時点の内容です)

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