VIRGIN HARLEY |  第1回 基本的な役割と構造サスペンション徹底解析

第1回 基本的な役割と構造

  • 掲載日/ 2010年02月24日【サスペンション徹底解析】
  • 講師/ウノパーウノ 我妻 修

サスペンション講座の画像

モーターサイクルを支えるパーツとしては、タイヤと並ぶほどの高い重要性を持つサスペンション。皆さんが愛車で走られる際がそうですが、日常的に走る路面状況も場所や環境、また天候等でまったく異なってきます。モーターサイクルが走行する上で重要なのは、「いかなる路面状況においても、そこで生じる衝撃を緩和し、車体(タイヤ)と路面の接地状態をより良くできるか」という点で、サスペンションは車体およびライダーに伝わる衝撃を和らげる意味で言えば、タイヤ以上の性能が求められるのです。

ですがその構造の複雑さもあり、サスペンションに対する理解は決して高いものとは言えません。とりわけ独特の鼓動感を楽しむハーレーとなると、走行中の衝撃がその鼓動に混じってしまい、すでにサスの限界が来ているにもかかわらず「(ハーレーのサスって)こういうものかな」と流されているケースを見受けます。

ここではサスペンションの基本的な構造と役割、そしてカンタンにできるサスペンションチェック方法をご紹介していきたいと思います。

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【01】サスペンションの役割

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サスペンションをカンタンに解説すると、車体とタイヤを結びつける部品の総称で、「タイヤを常に路面に追従させて接地性を確保し、振動や衝撃を抑えて乗り心地を良くする」ということになります。そして補足になりますが、車体の余分な動きを抑えて運動性能を向上させたり、車両の印象を決定付ける重要な役割を担っているのです。

特にモーターサイクルの場合、大きく分けてフロントフォークとリアショックアブソーバー(以下リアショック)に分類されます。ここのコラムでは、主にリアショックに重点を置いて解説を進めていきたいと思います。

図:路面状況は場所によってさまざま。あらゆる状況においてもその衝撃を吸収できているか否かが、サスペンションの性能を指し示すことになります。

【02】サスペンションの構造

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前述のとおり、フロントフォークとリアショックを総称して「サスペンション」とまとめており、それぞれ「フロントサス」、「リアサス」と呼びます。厳密に言うと、これらに関わるリンクやスイングアームの2つを含んでサスペンションということになるのです。これらの構造部品はそれぞれ役割を持っており、また個々の部品が影響し合って性能が確保されます。つまり、すべての部品が集まって、初めてサスペンションとしての機能を発揮することができるのです。

図:このような構造からサスペンションは成り立っています。リザーバータンク付きとなるとさらに構造が変わってくるのですが、これについてはまた後日。
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車種やライダーによってサスにかかる負荷や作用するパワーは変わってきます。調整可能なサスで自分好みの乗り味にするのも楽しみのひとつ。

【03】サスペンションの基礎用語

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プリロードとは

プリロードとは、いわゆる『初期荷重』のことで、バイクの車重やライダーの体重への反発力を指します。オーリンズのサスペンションはプリロードのアジャスタ部分を調整することが可能でして、例えばタンデム走行をする際にはアジャスタの部分を調整することで、より大きな反発力を得られるのです。

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伸び側とは

これはサスペンションのスプリングがショックを吸収した後、再び伸びようとする際に働く力のことで、端的に言えば「リバウンド」です。オーリンズのリアショックだと、Type S36Eには調整ダイヤルが付いていないのですが、例えば別体式リザーバータンクを備えたリアショック「S36PR1C1LB」の減衰ダイヤルをひねることで、スプリングが伸びる速度を調整できるのです。

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圧側とは

伸び側の対極となる力の作用で、スプリングが沈み込もうとする力を指し、「コンプレッション」と呼ばれます。これは、車体が駆動する力を適切に路面に伝える「トラクション」と密接に関係するもので、ここの調整が路面へのトラクション効果を左右します。これも「S36PR1C1LB」には減衰ダイヤルが標準装備されています。

自分でできる!サスペンションチェック法

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ダンパーロッドにタイラップを付ける

ホームセンターなどで入手可能なタイラップをサスペンションのダンパーロッド部分に取り付けます。巻き終えたら、タイラップの位置をロッドの最上部に設置します。
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バイクにまたがって足を浮かせよう

車体に座り、ハンドルに手を置いてパっと両足を浮かせます。これにより、一瞬ですが車体とサスペンションにライダー1人分の荷重がかかり、その分だけ沈み込むのです。
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タイラップの沈み込みでサスの状態をチェック!

オーリンズS36Eの場合、タイラップ部分の沈み込みが25ミリから35ミリあれば十分でしょう。もしそれ以下の数値ならば、サスの交換を検討した方がいいと思われます。
※ 車種によってはダンパーロッドが表に見えないよう覆われているタイプがあります。気になる方は、最寄りのディーラーやショップに聞いてみてください。

サスでの楽しみ方は千差万別。好みに合ったメーカー選びの手助けに

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まずは自分の好みを知って、それからサス選びを!

サスペンションの状態というのは、よほど日常的に気にかけていない限り気づくものではありません。特にハーレーとなると、「これも乗り味なのかな」と劣化に気づかないまま乗り続ける方も少なくないようです。確かにハーレー特有の鼓動やトルクを考えると、繊細さが求められるサスペンションとの相性は良くないのかもしれません。しかし近年のハーレーは以前と比べると、その個性を残しつつも乗り味を追求した高い機能を兼ね備えており、よりモーターサイクルらしくなっています。だからこそ、サスペンションを調整することで乗り味を向上させることができるのです。

中には「ローダウンさせたい」という目的の方もいらっしゃると思いますし、オーリンズ以外のサスペンションが向いていることがあります。ただ、オーリンズのS36Eでもローダウンと走破性の両立は可能ですので、ぜひ参考にしてください。カスタムと合わせて乗り味もより良くしたいと思われている方は、ぜひこのコラムで得た知識を元に、自身の好みに合うメーカーのサスを探して欲しいと思います。

プロフィール
ウノパーウノ 尾山台店 店長
我妻 修

若い頃からさまざまなバイクを乗り継いできた、根っからのバイク好き。現在はスウェーデンのサスペンション『オーリンズ』のアジア・ディストリビューションである『カロッツェリアジャパン』の社員として、同社が運営するオーリンズ・サスの販売店『ウノパーウノ』尾山台店の店長を務める。

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