
ブレイクアウトは、ファクトリーカスタムの象徴として2013年にデビューした。極めてワイドなリアタイヤとロー&ロングなプロポーション、大径フロントホイールが生む強烈な存在感は、当初からモダンカスタムシーンの注目を集めた。

単なるショーバイク風の外観に留まらず、大排気量Vツインが繰り出す加速力と、ロー&ロングフォルム特有の直進安定性で多くのファンを獲得。その後もソフテイルフレームへの移行やエンジン排気量の拡大、足まわりの改良などを経て進化を重ね、シリーズ内でも特に人気の高いモデルへと成長してきた。
今回は、そのブレイクアウトが2025年モデルで大きく進化して登場。伝統的なシルエットを守りつつ、現代の走行性能・装備を磨き上げた最新仕様を、じっくり試す機会となった。

ブレイクアウト最大の魅力は、ショーモデルのような華やかなスタイリングだ。240mmという極太のリアタイヤと21インチの大径フロントホイールが作るシルエットは、どのようなステージに置かれていてもひときわ目を引く存在感となっている。

一方で、過去モデルではこの大胆なディメンションが旋回時の癖や取り回しの重さとして現れていたのも事実。しかし2023年モデルでは、燃料タンク容量拡大やハンドル位置の見直し、サスペンションのリファインなど細部の改良が施され、実用性と操縦性が大きく向上。“見た目重視”の枠を超えた完成度を備えていた。

さらに2025年モデルでは、先行して発表されたストリートボブ、ヘリテージクラシック、ファットボーイ、ローライダーSといったソフテイル系クルーザー群がそれぞれ異なるキャラクターのエンジンセッティングを得た流れを受け、本機にはミルウォーキーエイト 117 カスタムが搭載されている。

シリーズ最上位排気量ユニットをベースにしながら、ブレイクアウトらしいロングストレートでの伸びやかさと力強い加速を強調した味付けとなっており、視覚的インパクトにふさわしいパフォーマンスを備える。
それでは、より一層パフォーマンスが向上したと言われる2025ブレイクアウトに触れ、感触を探っていこう。

今回はメディア関係者向けに開催された2025ブレイクアウト試乗会に参加したのだが、そこに並べられた新型ブレイクアウトは、パット見たところ従来モデルとの差はほとんど無いように思えた。
しかし、じっくり見てみるとヘッドライトがこれまでの楕円異形タイプからオーソドックスな正円丸形ケースに変更されているほか、メーターディスプレイはこれまで細く小型な液晶ディスプレイがライザートップに置かれていたのに対し、大きなシングルメーターがハンドルポスト上部にセットされている。些細なものではあるのだが、これらの変更により、従来の”モダンショースタイルカスタム”的なものから、どちらかといえばストリートカスタムの延長線上へと路線変更を行ったという印象を受ける。

実車に跨ってみると相変わらず必然的に両手両足を前に投げ出す恰好を強いられるワイドなライディングポジションとされており、ぐっと気が引き締められる。
エンジンを始動し走り出す。2025モデルでは新たにロード、レイン、スポーツの3種のライディングモードを選ぶことができるようになっている。まずは肩慣らしのためにベーシックな出力特性とされたロードモードで走ってみると、まずスロットルワークに対するエンジンの”ツキ”が良くなっていることがわかる。 従来モデルでは制御の関係からか低回転域で若干ギクシャク感があったのだが、それは皆無となり、いたってスムーズな加減速を得られる。
公式なアナウンスはされていないが、サスペンションもリセッティングされているようで、路面追従性が向上している上に、ステップやハンドルに入力し、車体をバンクさせてコーナーリングモーションに入った際の手ごたえがかなりニュートラルになっている。とはいえ、例のフロント超大径タイヤ、リア極太ファットタイヤの癖はもちろん残っている。

ライディングモードをスポーツモードにセットすると、キャラクターは豹変。ロードモードでも十分以上のパフォーマンスだったところに、一層輪を掛けて強大なトルクを発生させ、ライダーを振り落としにかかってくる。
新型ブレイクアウトに搭載されるエンジンはミルウォーキーエイト117カスタムで、それは新型ファットボーイと同じ仕様なのだが、全体的なディメンションの問題からか、じゃじゃ馬感は一歩上を行っているように思える。

スポーツモードではわずか2000~3000回転程度でも牙をむき、一筋縄では太刀打ちできないような状況になるので、それを楽しむには、むしろ押さえつけるように乗るのではなく、定石に従って扱うことが重要になってくる。力を抜いてハンドルを操作し、逆ハンドル(当て舵)でコーナーリングのきっかけを生み、ステップをはじめ下半身にしっかりと加重を掛ける。狂暴でありながらもちゃんと扱えば従順に走る。この快感は新型ブレイクアウトの大きな魅力となっているのである。

一方で、より一層万人受けするように仕立てられた新型ブレイクアウトに対して、若干さみしく思える部分も私にはある。今回の試乗会では、従来モデルも用意され乗り比べることもできたのだが、メディア関係者の多くは「新型の方が全然良くて、従来モデルの粗がかえって目立って感じられる」と話していたのだが、むしろ従来モデルが持っていた荒々しさや気難しさはブレイクアウトのキャラクターだったのではないのだろうか、と思えてしまった。

ただ、新型ブレイクアウトは確実にパワーは解放され、暴力度が増している。それでありなら、扱いやすさまで向上しているのだから、間違いなく良い方向に進化を続けている。従来モデルオーナーは、買い替えか、またはそのコストを使ってカスタムをするか悩みどころとなることだろう。

2025モデルでは排気量1923ccを誇るミルウォーキーエイト117カスタムエンジンを搭載。最高出力は103馬力で、168Nmもの強大なトルクをわずか3000回転で発生させる。鼓動感やサウンドのチューニングもしっかり施されている。

美しいデザインのホイールに組み合わさるフロントタイヤのサイズは130/60B21と超大径タイプ。試乗テストを行っている際に印象が良かったのはフロントブレーキで、タッチと効きが絶妙なバランスでセッティングされている。

ブレイクアウトのアイデンティティの一つでもある2into2エキゾーストシステムは継続。マフラーに関しては日本仕様だったはずだ。歯切れのよいエキゾーストノートを奏でる。

ハンドルバーは若干ライダー方向に引き寄せられているものの、それでもライディングポジションはワイドでハンドルも遠く感じられる。しかしそれが持ち味であり、操る快感を得られる一つのポイントとなっている。

2025ブレイクアウトの顔つきを見てずっこけた方もいるかもしれない。というのも従来モデルではせっかく楕円異形ヘッドライトを採用し、カスタムライクな印象を持たせていたのに、オーソドックスな丸形ヘッドライトケースに戻したからだ。好みの問題ではあるが。

シート高は665mmと低く抑えられており、足つき性は良好である。シートに関しては従来モデルのものを踏襲しているようだ。腰の落ち着きが良く安楽なクルーズをもたらしてくれる。

ブレイクアウトの特徴である240/40R18サイズの極太リアタイヤ。年々サスペンションが改良されてきたおかげで、バンクをさせることもしやすくなった。もはや直線番長とは呼べなくなったというのが、新型ブレイクアウトの印象。

グリップやスイッチボックスも新しいタイプが採用されている。シンプルな構成なので、クルーズコントロールにしてもメーター内の表示変更にしてもやりやすい。

右手側のスイッチボックスのターンシグナルボタンと、ライディングモード切り替えスイッチが兼用となっている。操作もしやすく、気軽にモードの切替を楽しむことができる。

燃料タンク容量は18.9Lで、これは容量が増大された2023モデルから踏襲した格好となる。2025ブレイクアウトは凝ったグラフィックパターンが施されたことと、5種類のカラーバリエーションが用意されたこともトピックとなっている。

ステップはフォワードコントロール気味にセットされている。シートは低いので足つき性は良いものの、そのシートとの距離が離れているため、体格に自信が無い方は若干遠く感じるかもしれない。

メーターディスプレイも従来のカスタムライクな小型液晶から、オーソドックスな丸形メーターケースに変更された。視認性が良く、インフォメーションもしっかりと伝わってくるので改善と言えるが、見た目は従来モデルの方がクールだ。