2009年式 スポーツスター XL1200N
ハーレーダビッドソンの年式別モデルカタログ「2009年式 スポーツスター XL1200N ナイトスター」の記事です。詳細なスペックやカラーバリエーションなど、気になるハーレーのモデル情報を掲載中!
こんにちは、パパコーポレーションの佐藤です。今回はオイルの種類についてご紹介しましょう。オイルには鉱物油や化学合成油などの製造方法の違いから、エンジンとミッション、プライマリーオイルなど、使用部分によるオイルの違いがあります。何がどう違うのか、ご存知ない方も多いでしょう。そこで今回は各種オイル種類についてご説明いたします。前回のオイル粘度と合わせてご覧いただければ、オイルの基本的な知識についてはひとまずおわかりいただけるかと思います。
まずは製造方法によるオイルの違いからお話いたします。オイルの元となっているのは、油田から採掘される原油なのは皆さんご存知でしょう。原油から精製される製品は、オイル以外にもガソリン、灯油、重油、ジェット燃料など、さまざまなものがあります。原油は複数の成分が混合されたものであり、複雑な工程を経て、各成分を個別に抽出し、オイルを含めた各製品が作られるのです。各成分の沸点が違うことを利用した「蒸留」など、複数の精製工程を経て、オイルの元となるベースオイルも作られます。オイルには鉱物油、化学合成油、そして部分合成油(半化学合成油)の3種類がありますが、この3つの違いはどれだけ手間をかけて精製を行うのか、によって変わってきます。それではそれぞれの違いについてお話しましょう。

精製工程で不純物が取り除かれたものをベースオイルとしたオイルです。複数の精製工程を経ているものの、完全に不純物が取り除かれているわけではありません。オイル成分の分子構造も一定に揃えられていないため、他のオイルに比べると汚れやすく、劣化しやすくなっています。ただし、定期的なオイルチェック、交換をしていれば何ら問題はありません。

化学合成油に使用されるベースオイルは精製に非常に手間をかけられたものです。温度変化に強く、高い性能を発揮させるため、オイルに必要な成分だけを抽出し、大きさの違う分子構造を均一化した上でベースオイルが作られます。鉱物油に比べ精製コストは高いものの、過酷な環境でも油膜が切れにくいなど、高い性能を発揮してくれるオイルです。

鉱物油と化学合成油をブレンドさせたオイルです。化学合成油の混合割合が2割以上でないと部分合成油とは呼ばれることはありません。低コストの鉱物油をベースとしながら化学合成油をブレンドさせることで、高い性能を低コストで実現できるのが魅力です。近年は品質向上が著しい部分合成油もあり、その性能は決して中途半端なものではありません。
オイルメーカーが販売するものに「シンセティック(SYNTHETIC)」と書かれたものもありますが、これは化学合成油を意味します。ちなみに、ハーレー純正オイルでは鉱物油、化学合成油、部分合成油のすべてが販売されています。純正オイルの「SYN3」は化学合成油で、「FORMULA+」は部分合成油です。この3種類のオイルの使い分けですが、これまで「ハーレーは鉱物油で充分」とされてきました。ショベルヘッド以前の旧車には「鉱物油でないとオイル漏れが発生する」とも言われています。これは旧いハーレーの場合、部品間のクリアランス(隙間)が広く、粒の細かな化学合成油はそのクリアランスの隙間を抜けてしまうことがあったためです。しかし、近年の特にツインカム88以降のモデルでは部品精度も上がり、ガスケットも密封性の高いものになっているため、化学合成油を使用しても何の問題もありません。純正で化学合成油や部分合成油が販売されているのが、その証明と言えるでしょう。オイルはエンジン内部を流れる血液のようなものです。血液次第で体調は良くも悪くもなります。真夏の猛暑でもSTOP&GOが多い日本の道路環境では、いいオイルを使用してやるとエンジンには優しいでしょう。
次にご紹介するのはエンジンオイル、ミッションオイル、プライマリーオイルの違いです。スポーツスターはミッションとプライマリーが繋がっているため、ミッションオイル・プライマリーオイルを兼ねるスポーツトランスフルードというオイルが使用されていますが、これは後ほどお話します。国産車の場合、ハーレーのようにオイルが複数分かれていることは珍しく、1つのオイルで潤滑させることが一般的です。しかし、ハーレーの場合は、腰上、プライマリー、ミッションにわかれているため、それぞれの部位にあったオイルを使用する必要があります。それでは、各部位のオイルの特徴についてご説明いたします。

エンジンオイルは3種類のオイルの中で、もっとも多くの役割を担っています。単純に部品同士の潤滑を行うだけではなく、第一回目のコラムでご紹介した密閉(燃焼室からガスが逃げないようにする)や洗浄(スラッジやガム質を除去する)などの役割も求められているのです。また、ガスの燃焼で発生する熱にオイルがさらされるため、高温時でも安定した性能を発揮することも求められます。

ギアオイルやトランスミッションオイル、と言われることもあります。その名の通りギアを守るためのオイルです。複雑に噛み合って動くギアには強い圧がかかるため、オイル無しではミッション同士が直接摩擦し、磨耗が進んでしまいます。そのため、ミッションオイルには、ギアが噛み合って動く際に発生する衝撃を和らげる役割も求められ、添加剤の配合もエンジンオイルとは違ったものになっています。

プライマリーケースの中にはエンジンで発生した力をミッションに伝えるプライマリーチェーンという部品があり、プライマリーオイルはこのチェーン潤滑の役割を果たします。しかし、プライマリーケースの中にはクラッチ盤も収納されており、クラッチ盤がオイルで滑るようなことはあってはいけません。「チェーンは潤滑させるが、クラッチは滑らせない」という難しい役割をプライマリーオイルは果たしています。

以上がハーレーに使用されるオイルの種類とその役割です。スポーツスターの場合は、スポーツトランスフルードがプライマリーオイルとミッションオイルを兼ねています。一般のバイクの世界ではハーレーのようにミッションとプライマリーが分かれていることはなく、スポーツトランスフルードの添加剤はビックツイン用のものとは違う配合となっています。なお、しばらく前からハーレー純正オイルには「SYN3」や「FORMULA+」というオイルがラインナップされました。SYN3は主にエンジンオイルに使用されていますが、ミッション、プライマリーに使用することもできます。また、「FORMULA+」はミッションオイル、プライマリーオイル、スポーツトランスフルードのすべてを兼ねることができるオイルで、オイルの交換サイクルも従来の鉱物油より長めに設定されています。ただ、日本の道路状況はアメリカに比べ、過酷なものですから、「FORMULA+」を使用したとしても交換サイクルはもう少し早めにした方がいいでしょう。なお、ディーラーでは基本的にエンジンオイルは純正鉱物油かSYN3、ミッションやプライマリーはFORMULA+でオイル交換を行っていますが、排気量などが違うCVOモデルはすべてのオイルにSYN3を指定しています。ノーマルエンジンにチューンが施されているモデルのため、エンジンからの熱量が大きく、高温時でも油膜が切れにくい化学合成油が推奨されているのでしょう。
鉱物油~化学合成油の違いや、各部に使用されるオイルの特性についてはご理解いただけたかと思います。そこで次はもう少し踏み込んでオイルを勉強してみましょう。次回のテーマはオイルの品質について。同じ鉱物油や化学合成油なのに値段の違いがあるのはなぜなのか、それをご紹介します。同じ化学合成油でも精製方法によっては性能の差は大きく出てきます。化学合成油の一種であり、最近話題になることが多い高級オイル「エステルオイル」などもご紹介しますので、楽しみにお待ちください。

パパコーポレーション代表。クルマ・バイク好きが高じて、自らエンジンオイルに対する疑問を解決した金属表面改質剤「スーパー・ゾイル」を生み出す。エンジンを長持ちさせ、環境にも優しい性能を持つSUPER ZOILは、佐藤氏のオイルに対する深い造詣の賜物。
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38歳、2002年式FLTR所有。27歳でアメリカに渡り、メカニック専門学校MMIでハーレーを学ぶ。日本帰国後にバルコムモータースに勤務し、アメリカへのメカニック留学を経て、現在はハーレーダビッドソンバルコム杉並の店長および全店舗のサービス部長を勤める。
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今回はオイルの種類についてご紹介しましょう。オイルには鉱物油や化学合成油などの製造方法の違いから、エンジンとミッション、プライマリーオイルなど、使用部分によるオイルの違いがあります。何がどう違うのか、ご存知ない方も多いでしょう。
前回はオイルについての基本的な知識の紹介になりましたが、今回から少しずつ具体的なテーマに触れていきましょう。今回のテーマは「オイル粘度」。オイルを購入したことがある方はご存知だと思いますが、ハーレー用オイルのパッケージには「20W-50」、「80W-90」などの表記があります。
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32歳。22歳でハーレーに出会ったのをきっかけにHDディーラーに入社。メカニックとして修行を積み、2007年に独立しROOT MOTORCYCLESを立ち上げる。バイク業界と真剣に向き合うが、家庭では2児のよきパパでもある。
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