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XL883L スポーツスター883ローの画像

XL883L(2008)

51年の伝統を持つ
ハーレーのスポーツモデル

スポーツスターの元祖モデルは、まだ国産メーカーが産声を上げたばかりの頃に生まれた。アメリカに進出してきた英国車に対抗しハーレーが開発したスポーツモデルだ。登場以来、空冷OHV Vツインのスタイルを崩さず進化を進められてきた。スポーツスターは1957年に登場して以来、細かな変更はあったものの、エンジンのモデルチェンジは3度しか行われていない。数年に1度モデルチェンジが行われるのも珍しくないバイク業界で、1つのエンジンの寿命がこれほど長いのは珍しい。2008年のスポーツスターはどこか変わり、どこが変わっていないのか。「XL883L」に試乗し、その魅力を探ってみた。

XL883L スポーツスター883ローの特徴

XL883L スポーツスター883ローの画像

シンプルな装備&
クラシカルなデザイン

現在のスポーツスターは2004年にエンジンのモデルチェンジが行われた3代目。かつての、エンジンの振動がハンドルなどに直接伝わってきたモデルと比べると、エンジンをゴムで挟み込んでマウントするタイプの現行モデルは快適性が大いに向上している。もちろん振動が消えたと言っても、ビリビリとした不快な振動がなくなっているだけで“ハーレーらしい”バイブレーションは健在。ハーレーの場合、エンジンはただ快適性を追求すればいいわけではなく、不規則に震えるVツインエンジンの鼓動が乗り手の感性を刺激しなければならない。現行のスポーツスターのエンジンはその要求をしっかりと満たしてくれているのだ。スタイル面は至ってシンプル、余計なモノは何一つ付いてない。

フロント19インチ、リア16インチのホイールサイズはハーレー特有のモノ。他メーカーネイキッドモデルとは違う独特の操作感はこのホイールサイズに負うところが大きい。至れり尽くせりのバイクに馴染んできた方には驚きかもしれないが、タコメーターはなく、風防もタンデムシートも装備されていない。しかし、ハーレーの世界でこれは不思議なことではない。必要なモノがあれば、後から取り付ければいいからだ。カスタムパーツのカタログが電話帳ほどの厚みがあるこの世界では、自分好みにどうとでもカスタムできる。

XL883Lの“L”は車高の低さを意味する。当然ながら他の883シリーズと比べると、装備されているパーツは小柄な人でも不安なく楽しめる装備となっている。前後サスペンションはスタンダードモデルより短い。ハンドルポジションもいわゆる“プルバック”タイプで、体に近いところにグリップが来るようになっている。大柄な人だと窮屈なポジションに感じるかもしれないが、女性や体の小さい方にはこれほどポジションがマッチするバイクは少ないのではないか。また、フットポジションも“スポーツモデル”とは思えないほどゆったりとしている。他メーカーのモデルに乗っていた方ならば、フットポジションが恐ろしく前に感じるだろう。しかし、これはハーレーの世界では“ミッドポジション”で、さらにポジションが前にあるモデルも珍しくない。やや足を前に投げ出すポジションながら足の踏ん張りは充分で、スポーツ走行にはこのポジションでまったく問題はない。

XL883L スポーツスター883ローの試乗インプレッション

XL883L スポーツスター883ローの画像

決して高性能ではない
でも、なぜか楽しいのだ

スポーツスターは私にとって特別なモデルだ。10年以上前の1,200ccモデルに長年乗っており、走行距離は10万kmを突破している。バイクの面白さ、カッコよさとは何なのか、はスポーツスターから学び、その後バイクに深く関わるきっかけになった。それだけ思い入れの深いスポーツスターの試乗となると、楽しみでないわけがない。躍る心を鎮めながら、冷静に試乗を行うとしよう。XL883Lは小柄で体重の軽い人にもっともマッチするモデルだ。それだけに大柄で規格外の体重の私には正直言って合っていない。それは跨っただけで一目瞭然。まず足つき性が良すぎる。身長178cmの私だと、ひざを曲げた上体で両足がベッタリと地面につく。身長150cm代の人でも、信号待ちなどで不安なく停車できるのではないだろうか。それでも足つき性が不安な人はハンドル、シート、サスペンションを交換すれば、さらにオーナーにあったポジションに変更することができる。この辺りのカスタムはハーレーでは何ら珍しくないことだ。車両重量は260kgと重いものの、数字ほどの重量は感じないはず。ポジションや重量については何ら心配することはない。スタイルが気に入れば、それ以外の点についてはどうとでもなるのがスポーツスターだ。

ハーレーのラインナップの中では排気量はもっとも小さい883cc。出力は公表されていないが、恐らく400ccのネイキッドモデルと同じくらいの出力しかないはず。ハーレーにモリモリとしたトルクを求める人は「あれ? こんな程度?」と思ってしまうかもしれない。しかし883ccエンジンの魅力はハーレーのビックツインモデルとは違う。スロットルを回しきり、エンジンの持てる力をフルに使い切って走るのが、このエンジンの魅力なのだ。最近のバイクで大排気量のエンジンならば、そのすべての力を公道で使いきれるモノはまずない。そんな状況だからこそ883ccエンジンの魅力が注目されているのかも。

2008年モデルから価格が下がりさらに手に入れやすくなったが、ただのエントリーモデルと一言で片付けられない魅力がある。このエンジンにこだわり10年以上乗り続けている人もいれば、大排気量のハーレーのビックツインからわざわざ乗り換える人もいる。“スポーツ”の名を冠しながら、現行のスポーツモデルほど乗り手をカバーする至れり尽くせりな機能はない。ただし、しっかりとしたライディングを知り、正確な操作を行ってやることで、スポーツスターのライディングは大きく変わる。乗り手の技量とマシンのポテンシャルを使い切って走るのが、スポーツスター提案する“スポーツ”なのだ。重い部品をふんだんに使用し、ブレーキは必要充分な効きしかない、出力も公道で走るには過不足ない程度、それでも何故か楽しいのだ。

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