新設計のフレームにエンジンがラバーマウント化され、さらに快適に走行性を高めた2004年式スポーツスター。その登場からはや12年が経ちました。これまでは2003年式以前と、2004年式以降との比較が話題に上ることが多かったですが、2007年に全車インジェクションされてからはキャブレターとインジェクションが話題に上ることが多いようですね。2004年式以降のモデルのスポーツスターがいかに進化を遂げ、現在に至ったのか、についてお話しましょう。
スポーツスターのサイドバルブから受け継がれて来た4カムという機構はそのままに、オールマイティなシーンで快適な走行ができるようになったのが現在のスポーツスターです。以前は、ビッグツインに比べ「小回りの利く、街乗りのハーレー」と見られがちでしたが、2004年式以降はラバーマウントが採用され、長距離の快適性が向上。ツーリングバイクとしても楽しめるようになっています。
ラバーマウントが採用されたことでエンジンから伝わる不快な振動が軽減され、ミラーに伝わる振動も抑まり、高速走行中の後方の視認性も上がりました。そして、2007年モデルからはさらに新しい機構が採用されています。エンジンの燃焼効率や、始動性を大きく改善した「フューエルインジェクション」システムです。従来はキャブレターで機械的にガス調整を行っていたものが、コンピューターによって細かく制御できるようになりました。
具体的に説明すると、寒い日の朝など、これまでは始動性に悩むような環境下でもコンピューターがエンジンに最適なガスを調整し、送り込んでくれるのです。車両に跨ってから走り出すまで、面倒な手間をかけなくてもエンジンがかかります。いざ走り出せば、気持ちよくスムーズにエンジンが吹け上がる。ハーレーの楽しみはそのままに、乗り手への負担が少ないシステムが2007年モデルより実現されています。
スポーツスターに興味を持った方の一番の悩みは「883シリーズと1200シリーズ、どちらを選べばいいのか?」でしょう。883シリーズは、1957年にスポーツスターが登場したときから続く伝統的な排気量。60年近くに渡ってハーレーのラインナップにあるのが883ccという排気量なんです。「スロットルを回して楽しむ」。そう乗り味を評価する人は多いですが、伝統を引き継ぎ進化し続けている点にも注目していただきたいですね。
2004年以降のスポーツスターについては、他ファミリーほど大きな変化はありません。ただ、2007年にインジェクション化されたことによりリアフェンダーにECM(コンピューター)が搭載され、シートベースの形状が変わっています。これにより年式違いのシートが合わなくなっているので古いモデルのシートを流用しようとする場合は注意が必要です。
スポーツスターは年式が新しくなるに連れてラインナップが徐々に増えています。2004年には2モデルだったラインナップが2005年にXL883Lが、2006年にXL883R、2009年に883Nなどが登場し、大幅にラインナップが増えました。スタイルによって、選択肢がかなり増えたのは嬉しいですね。また、スポーツスターの場合、モデルによってタンク形状が違うのが特徴です。2007年までは末尾に”C”や”L”がつくモデルは大容量の17Lタンクが採用され、他モデルは12.5Lの小振りのタンクが採用されていました。
スポーツスターを購入する上で、一つ認識を改めていただきたいのは「スポーツスターはビックツインのスケールダウン版」ではありません。「本当はダイナが欲しいんだけど、金額面で考えてスポーツスターにしようかな」そういう人はよくいらっしゃいますが「そんな気持ちでスポーツスターに乗ると、きっと後悔しますよ」と言ってしまいます(笑)。
60年かけて変わらない部分を頑なに守り、進化すべきところは改善し、そうやって成長してきた伝統あるモデル、それがスポーツスターなのです。ある意味ではもっともハーレーの伝統を守り続けているモデルと言えましょう。乗り味の楽しさももちろんですが、そういった歴史的な背景も含めて私はスポーツスターが大好きで、自分でもスポーツスターに乗っています。皆さんもスポーツスターを好きになって、長く乗り続けて頂ければ嬉しいですね。