VIRGIN HARLEY |  KAMI(D-RUSH主宰)インタビュー

KAMI(D-RUSH主宰)

  • 掲載日/ 2005年05月25日【インタビュー】

ハーレーインタビューの画像

「D-RUSH」は自分の思い描く
それを実現できる「場」

今回ご紹介させていただくのは埼玉県飯能市に住む「D-RUSH Motorcycle Club」(以下、D-RUSH MC)代表 KAMIさんだ。「D-RUSH MC」は平日が休みの方たちに向けたミーティング「D-meeting」を主催している。「MC」という言葉は雑誌やインターネットでよく目にするものの、なかなか身近な存在ではないだろう。そもそも「MC」とは一体どういうものなのか。「D-RUSH MC」というクラブは、なぜイベントを主催しているのか。そこには必ずMCメンバーの熱い想いが籠められているはず、そう思いKAMIさんに時間をいただいてインタビューを行った。

Interview

「MC」に入るというのは
結婚に似ていますね

ーD-RUSH MC」は最初、「MC」ではなかったとお聞きしましたが。

KAMI●「平日に集まれる仲間で走ろう」最初はそういう始まり方で「D」は生まれました。「D」のメンバーにはサービス業の人間が多いんです。みんな平日の休みに一人で走っていた人たちがメンバーなんです。一人で走るのも楽しいですけれど、気の合う仲間と走るのも楽しいですよね。でも平日休みだと土日開催のミーティングには行けず、ショップに行っても常連さんと会う機会も少なくて。なかなか仲間を見つけるのが難しいんですよ。でも「平日にしか走れないハーレー乗りはきっと多いはず」そう思ったメンバーが声をかけて「D」が始まりました。しばらくみんなで集まっているうちに「MCにしよう」という話になりまして。たまたま私は昔から他の「MC」の人とも付き合いがあったので、「MC」とはどういうものなのか、少しは知っていましたから話は早かったです。

ーD-RUSH」とはどういう意味なのでしょうか?

KAMI●仲間と話し合って「RUSH」という言葉は使おう、と決めていました。他にどんな言葉を加えればイメージ通りになるのか、話し合った結果「D-RUSH」になったんです。「D」という言葉には「DESIRE」と「DISTANCE」という意味を込めて「D-RUSH」。「欲望(DESIRE)という名の荷物を愛車にくくり付け、仲間と一緒に道のり(DISTANCE)を駆け抜ける(RUSH)」。そんな意味が籠められています。知り合いはみんな「D」と呼んでいますが、短くしてもゴロがいいでしょう(笑)。

ー仲間と一緒に走る「ツーリングクラブ」と「MC」とはどう違うのでしょうか?

KAMI●「ツーリングクラブ」は「一緒に走ること」が重視されているのではないかと思っています。一方の「MC」は「ハーレーなど、バイクを通じて出会った仲間と精神的に一緒に過ごすこと」が重要だと思っています。極端な話、病気や怪我でバイクに乗れなくなった、ツーリングに行けなくなったとしてもそこに仲間として同じ思いを共有出来るのであれば立派なメンバーであると思います。あくまでバイクを通じてつながった「人間関係」が重要なわけです。

例えていうと「MCに入る」というのは「結婚」と似ています。「D-RUSH」(以下、「D」)があって、そこに入りたいという人がいるとします。相思相愛でみんながその人のことが好き、そこで初めてメンバーになることができます。「結婚指輪」の代わりのものが革ベストの「看板」というわけです。「一生一緒にいよう」それを誓い合える仲間が「Dの看板」を背負う資格があるんです。そこまで踏み切れる想いを持った人たちの集まり、それが「Motorcycle Club」だと私たちは考えています。男女関係にたとえた場合で「好きなんだけど憧れているだけ」「友達として好き」という人もいます。そういう人ももちろん一緒に走る大切な仲間ですよ。いつの間にか「D-FRIENDS」と呼ぶ様になっている人がたくさんいます。

ー1度入った「MC」を辞めるということはあるのですか。

KAMI●前提は「一生一緒にいよう」ですが、離婚もあり得ますよ。「看板」を背負ったからといって、本人が自分を殺して、何もかも犠牲にしてまで背負う必要はないと思っていますから。出入りが多すぎる「MC」はどうかと思いますが、あくまで人と人との関係なので「離婚」もあるでしょう。家庭や仕事での事情や、共に熱い思いを持つために「生き方」や「仲間とのあり方」についての意見の相違なども出てくることもあるでしょうし、生きていく中で今よりもっと自分に合う運命的な仲間と出会うことだってあるでしょう。それらは否定されるものではないと思います。

ー1人の人が複数の「MC」に所属するのはあるのでしょうか。

KAMI●個人的には「2枚看板」はないと思っています。1人の人が複数の人と結婚するようなものですから。過去にはそういう人とも会ったことはありますが「仲がいいから共通の物を持とうね」そんな感覚で「看板」を背負っているんでしょう。そこには私たちの言う「精神的なつながり」とは別の価値観があるのではないかと思います。人数に大小はあれ、沢山の「MC」がある中で、基本的には自分たちが納得してやっているのであれば他人がとやかく言うものではない、と思いますけれど。ただ、私たちのクラブはそれぞれ仕事が違い、収入も違い、家庭環境も違う中、ベースとなる各自の生活を大切にした上での「D-RUSH」ですから。最低限の決まり事はありますが、その中で「D-RUSH」の中での自分の立ち位置というものをしっかり認識して「D-RUSH」の為に、メンバーの為に何ができるかをそれぞれが考えています。その上で精神的な部分でも一緒にいましょう、そういう「つながり」を大事にしています。

ーメンバーの方はハーレーに乗っている人に限定しているのでしょうか。

KAMI●今の18人のメンバーは全員ハーレー乗りですね。できればハーレーに乗っている人がいいな、と思います(笑)。でも「初めからハーレーでなくてもいいかな」とは思っていますよ。今は買えないけれども「いつかはハーレー」と考えている人もいるでしょうからね。あくまでハーレーの「自由」、「ワイルドさ」、「力強さ」、そこに惹かれている人でしたら「D」のメンバーと通じ合う部分がありますからね。

ーD-RUSH」のメンバーになるのには規定はあるのでしょうか。

KAMI●既存メンバーの一人以上の推薦とメンバー全員の承認の後「PROSPECT(見習い)」という期間を設けています。ただ、それはアメリカの真似をして設けているだけであって、必ず「PROSPECT」を経て承認されるわけではありません。長くメンバーと一緒にいて、既にお互いを良く理解している人が「『D』に入りたい」と言ってくれば「PROSPECT」期間を設けないでメンバーとなる場合もあります。あくまで私たちにとって「PROSPECT」は「お互いをよく知るための準備期間」ですから。一定期間を一緒に過ごし、メンバー全員が「新しいメンバー」として認めた上で「D」に入ることができます。本人も「上っ面のカッコよさや憧れ」ではなく、一歩中に入って「D」を見て、「D」の考え方や活動を十分理解した上で「一緒にいたい」と思ってくれてお互い納得した上で仲間になるんですよ。

ー他の「MC」だと恋愛関係が混ざって揉めてしまうところもあります。「D-RUSH」には女性のメンバーの方はいらっしゃいますか?

KAMI●いませんね。実はメンバー内でもその話題はたまにでます(笑)。「D」とよく一緒に走る「D-FRIENDS」には男性もいれば女性もいます。「MC」では「気持ちの部分でのつながり」を重視しているわけですから、本来は老若男女は関係ないはずですよね。実際に「『D』に入りたい」という女性もいます。でも、実際の男と女ですから恋愛関係が起きることは十分考えられますし、他の「MC」に所属する彼が出来たら、場合によってはそちらとのつながりを重視しなければならなくなる事もあるでしょう。別にメンバー同士で恋愛があっても個人の問題ですからいいんですが、それがうまく行かなくなってしまった時は大変になりますよ・・・。結局どちらかが辞めることになってしまったりね。「一生続く、仲間同士の精神的なつながり」を大事にしている「MC」でメンバーの人間関係が崩れてしまう恐れがあるのと、やっぱりむさ苦しい「野郎だけの集まり」の方が男の世界って感じでカッコいいかなって言うのもあります。ですから女性をメンバーとしては受け入れていません。ただ「D-FRIENDS」としては大歓迎ですよ!

ハーレーを通じて「仲間」を見つけられる
仲間とハーレーを楽しめる

ー「D-RUSH」の主な活動とはどのようなものでしょうか。

KAMI●毎月1回の定例ミーティングとツーリングですね。定例ツーリングはオープンにしていまして、メンバーでなくても誰でも参加できるようにしています。オープンツーリングはハーレーが多いですが、BMWや国産のバイクも参加していますよ。多いときには50台近くになったことがありますね(笑)。他には毎年11月の平日に行われる2日間のキャンプミーティング「D-meeting」の開催です。

ー「MC」をまとめる、それだけでも大変なはずなのになぜ「オープンツーリング」や「D-meeting」のようなオープンなイベントを主催されているのでしょうか。

KAMI●「D」ができて、それまで一人で走っていたメンバーは仲間ができ、仲間と走る楽しみを知りました。でも、以前の自分たちと同じような「仲間と一緒に走りたくても仲間を見つけられない」そんな人はまだまだ多いはずです。土日が休みの人は自分で動けば、イベントなどを初めとして仲間を見つけられる環境は多いでしょう。でも、これだけハーレー乗りが増えているのに、つい最近までは平日が休みの人には「場」がなかったんですよ。ですから平日開催の「オープンツーリング」やキャンプミーティングの「D-meeting」という「場」を用意して、ハーレーを通じて「仲間」を見つけられる機会を提供してあげたい。

仲間とハーレーを楽しめる機会を用意してあげたくて。だから「D」で企画しました。以前の自分たちと同じ環境だった人が楽しみにしてくれる。その為に遠くからバイクで走ってきてくれる。メンバーにはその喜びを肌で感じて欲しいんです。「D」があったから出会いが広がった、そういう人が少しずつ増えてきています。「D」の提供する「場」を必要としている人は多いんだ、とつくづく実感しています。だから自分たちでやっていける限り「オープンツーリング」も「D-meeting」も続けていきますよ。「D-RUSH」はそういう想いを共有した仲間の集まりなんです。

ー大規模なミーティングを主催する側の方は、運営が忙しくてミーティングに参加できないのでは?

KAMI●スタッフにも楽しみはありますよ。むしろスタッフならではの醍醐味があります。たとえばゲートでの車両の誘導の役割を担うスタッフ。「会場内に入れない」そういう見方をすると楽しくないかもしれません。けれど「来場者を最初に出迎え、最後に送り出してあげる」役割だと考えると、これほど重要な役割はないですよね。参加者全員と出会えるわけですから。しかもミーティングの最初と最後の印象を左右する「顔」です。だから、ゲートスタッフには「常に笑顔を持って接して欲しい」と口酸っぱく話をしています。来場者に「こんにちは!」「気をつけて!」と言ってあげられ、来場者から「ありがとう!」と言ってもらえる大事なポジションです。ミーティングはどこにいてもその名の通り「MEET」したい「人と出会いたい」という気持ちがあれば楽しめます。お酒を飲んでいても、車両の誘導をしていても、何をしていても「MEET」したいという気持ちを持って来場者もスタッフも楽しんで欲しいですね。それこそが「ミーティング」の醍醐味です。

ーハーレーを通じた「平日が休みの人たち」の出会い、全国に広げたいですね。

KAMI●全国の人たちに「D」の用意する「場」を楽しんでもらいたいのですが、サービス業の人間はなかなか長い休みが取れません。ですから、どうしても関東に近い人にしか自分たちの「場」を提供できていません。ただ「D」だけが「場」を提供しているわけではありませんからね。まだまだ平日に開催されるイベントは少ないですけれど、全国で徐々に増えつつあります。スポンサーがついていない自分たちのような個人でミーティングを主催していくのは大変です。いつかは金銭面や安全面などから限界が来るのかもしれません。ただ「D」が今のスタイルで平日ミーティングを主催しているのを見て「自分たちでもできるかも」と思って全国各地で同じような平日ミーティングが増えてくれたら、これほど嬉しいことはありません。

ーKAMIさんがそれだけ「D-RUSH」に情熱を注ぐことができる、その源とはなんなのでしょう。

KAMI●「D」は自分の思い描くことを実現できる「場」なんですよ。ハーレーが好きで乗ってきて、これだけのめり込んでしまって(笑)。その自分の足跡が残せる場が「D」なんですよ。生きてきた証といってもいいでしょう。自分がやってきたこと、話したことが自分と違う人生を歩んでいる誰かの記憶に残ってくれたとしたら嬉しいですよね。「D」の提供する「場」の規模は年々大きくなっていますが「まだまだやれる」と思いますし、それを認めてくれている家庭、自分の考え方を理解してくれているメンバーや「D-FRIENDS」を初めとした協力者の方がいます。それだけの環境に恵まれている自分は本当に幸せですよ。

プロフィール
KAMI
42歳。平日が休みのメンバーが集う「D-RUSU MC」を主宰。平日に開催されるキャンプミーティング「D-meeting」など「MC」の枠を越えハーレーの楽しみを提供するビッグMCである。「D-RUSH」が実践してきた平日のハーレー乗りの輪は今全国に広がろうとしている。

Interviewer Column

個人的な話で恐縮だが、私もスポーツスターの大規模なイベントを手伝い、ゲート係をしたことがある。来場者を迎え、見送る、それだけの役割だったがそこから得た感動は大きかった。KAMIさんの言うようにこちらが笑顔で迎えれば、来場者からその何倍もの笑顔をもらえることがあった。仕事としてではなくボランティアでイベントを手伝うスタッフの方はそんな感動が味わえる。スタッフの方はそんな感動が次の原動力になっている。皆さんがどこかのイベントに行った際はぜひ「MEET」する気持ちを持ってスタッフに声をかけてみて欲しい。それもまたミーティングの感動の1ページになるはずだから。(ターミー)

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